・・・・連続・私小説・三姉妹のFX・・・・・

海は僕の部屋の小さなベランダに布団を干し終えた後、キッチンを片付け始めた。 

僕の住いは2LDKのそれはそれは年季の入ったマンションである。 僕の住いはちょっと面白くて、弟の健一郎と住んでいるのだが、部屋を全く弟と区別のできる作りになっている。つまり、入り口は同じだが弟の部屋とは完全に切り離されていて、リビングとキッチン、トイレとお風呂(脱衣所)が共同で使える形になっており、玄関の呼び鈴も別になっている。今風に言えば、完全なミングルタイプになるのであるが、大家さんに聞いたところによると、長い間、とある企業の女性用の独身寮になっていたのだが、その企業が自社寮を建築してしまい、ファミリータイプにリフォームしようとしたが、コスト的な問題で、最上階のこの部屋だけがリフォームが出来ずにそのまま残ってしまったとのことである。部屋の形状や使い勝手もあまり便利にできていないので、立地条件は良くても一旦空き部屋になると次の入居者が入りにくいため、僕らの兄弟が2人で住むには、リーズナブルな掘り出し物の物件なのである。

「健ちゃんは?」との海の声が聞こえてきたので、キッチンに移動すると、弟が洗わずに置いていった汚れたコップを洗っていた。

「たぶん出かけた。 静かだし、ブーツないだろ。 最近、休みは必ずいないな。 この前は、鍋食べて俺が遅かったけど、貰ったケーキを持っていったら、もう寝てた。 でも、次の日ケーキは食べてたなぁ。」

「ふーん、顔、合わせないの?」

「いや、昨日の晩は帰る時間が同じだったから、一緒に飯食ったよ。 コンビニの弁当だけど。 そんで洗濯を一緒にして、屋上に干した…で、思い出した。 洗濯物入れてくる。」僕がサンダルを履いて屋上から洗濯物を取り込んで部屋にもどると、海は掃除機をかけていた。 僕は、弟の洗濯物を籠にわけて弟の部屋の前に行くと、後ろから海が、「何で部屋に入んないの?」と聞いてくる。 「まあ、男同士のルールで、お互いが居ない時は勝手に部屋に入らないことにしてる。鍵もかけることできるけど、そこまでは必要ないと思うし。」と答えると、「ふーん、じゃあ、健ちゃんのお部屋の掃除はやめとくね。」と、リビングに掃除機をかけ始めた。

海は、掃除が一通り終わると、ちょっと休憩と称し、持参したティーバッグで紅茶を入れ、「ねえ、調べたの? FX。 どんなだったの?」と聞いてきた。

僕は、「 FXは、少額の資金からできる取引で、ハイリスク・ハイリターンなんだろ。 そんで、ワタナベさんて呼ばれてんだろ、FXやる人って。」と答えると。

ブーッと、紅茶を吹き出した海が、「はははっ。 うん、あってる。 あってるけど、ワタナベさんじゃなくて、「ミセス・ワタナベ」ね。 ワタナベさん、いっぱいいるよね。」と、愛嬌のある満面の笑顔で笑ってくれた。

・・・続く。。。・・・