・・・・・連続・私小説・三姉妹のFX・・・・・⑧
宴も終盤に差し掛かった頃、陸の周りにはビール缶が7・8本転がっている。既に出来上がっている状態なので、海が陸を寝室に連れて行き、片づけを始めた。僕も片づけを手伝いながら、「エフ・エックスってどういうの?」と聞くと、今度の休みに資料を持っていくからとのことだったので、それまでにネットで見とくと返事をした。
片づけをしながら改めて部屋の中を見てみると、サイドボードの上には、三人の姉妹の写真が飾ってあり、それぞれのスナップ写真があった。 陸のスナップ写真は、例の彼氏さんであり、海の写真をみると僕と遊園地に行ったときの写真だった。空は成人式の時の写真で、僕の弟と近所の同級生と三人で並んだ写真だった。その写真たての横にもスナップがあったので、よくよく見ると海と知らない男が楽しくソフトクリームを食べながら、楽しそうだった。
「なあ、この写真の人誰? すごく男前だね。」と僕が尋ねると、海がキッチンから走ってきて写真を隠した。「何で?」という僕の後ろから、空が「それねぇ。たぶん海ネェの元彼だと思うよ。」と声がした。
ちょっと考えてみれば道理である。別に僕は海と付き合っているわけでもなく、年に数回は、遊びに行ったり、食事に行ったり、飲みに行ったりする『幼馴染み』な訳だし、僕も学生の頃には彼女がいたわけだし、海に彼氏がいたとしても何にも不思議なことではない。海は、ちょっと怒った顔をしてポンと空の頭を叩いて、「もう別れたし、大丈夫。空も余計なこと言わないで。」と言い、「前に話したことあったでしょ、ほらプレゼントにネクタイはどうかって聞いたことあったでしょ。その人・・・。」と僕に向かって答えた。
「別に、隠さなくていいじゃん。 そっか、彼しか、ふーん。」と言う言葉に被せるくらいの勢いで、「彼ね、ものすごいマザコンだったの。遊園地に行ったんだけど、ほら一緒に行ったあの遊園地、お弁当を作って行ったらね、『ママ以外のお弁当は食べられない。』って言われて、そこからギクシャクして、付き合ったって言っても、、、それだけよ。」と海が答えた。
そう言えば、確かにネクタイの相談受けたっけ、海に聞かれた時にイブ・サンローランのクラシカルなタイプが僕は好きだって答えた様な気がする。そう言えば、男の人は、お母さんの料理ってどれくらい好きかって聞かれて、口に合うだけで好きかどうかは別だって答えた気がする。そう言えば、海は夜中に電話してきて、「声が聞きたかった、寝てたとこ、ゴメン」、って言ってたっけ、あれって泣いていたんだ、と思い出した。 思い出したとたん、海が僕に話したかったことを僕が聞いてやれてなかったと、自分が情けなく思えてきた。 海につらいおもいさせてるなぁ、と思うことが余計に恥ずかしくなった。
海は、考え込んで下を向いた僕の肩に手を置いて、「また遊びに行って写真とろう。」とやさしく微笑んでくれた。
・・・続く。。。・・・