2022年10月16日(日) 阪神競馬場11Rで行われた
第27回秋華賞GⅠ(2000m・芝・右)
(16頭立て)(芝:良)
1着スタニングローズ 坂井瑠星騎手
2着ナミュール 横山武史騎手
3着スターズオンアース クリストフ・ルメール騎手
4着メモリーレゾン 古川吉洋騎手
5着アートハウス 川田将雅騎手
7着サウンドビバーチェ 岩田望来
10着ライラック ミルコ・デムーロ
上記の結果となりました。
上位5着までと、レース前に応援&注目していた馬たちの結果を載せておきます。
3冠達成は出来なかった…ほんの少しが、ほんの少しでした(後述します)。
とにかく、「あ~~悔しかった。3冠達成を観たかったです。」
それが、先ず飛び出た気持ち。
スターズオンアースは、私にとっては大好きなドゥラメンテの娘で、最愛のアドマイヤグルーヴの孫娘、そして何より欲目を差し引いても、実際にリーチをかけており“3冠達成にふさわしい実力”や“輝く才能”を存分に示してきていたので、余計に悔しく感じました。
周知の如く、スタートや序盤が返す返すも勿体なかったですね。
最初“ほんの少し”立ち遅れたために、3冠がほんの少し遠くなった感じです。
悔しいですが、『3冠』というものがいかに難しいものなのか。
更に、この秋華賞GⅠそのものに興味を掻き立てられる、奥深い内容でもあったと噛み締めています。
天気は晴れて、秋華賞GⅠに相応しい雰囲気に。
パドックで出走馬の皆さん、仕上げて来ていましたね。
出走前(本馬場入場)も、全てが順調と言えたら良かったのですが…サウンドビバーチェが放馬してしまいました。
実はこの子、オークスGⅠの時も同じアクシデントがあったのですが、GⅠの大舞台で1度ならず2度までも…関係者の人たちは一体どうしたのでしょう…観ているこちらもヤキモキしました。
前回は競走除外となりましたが、今回はその時とは違って“出走可能”という事でゲートに入る準備に移りました。
先に結論ですが、このようなアクシデントで事前に走ってしまったにもかかわらず、上記の通り7着だったので、やっぱりこの子には体力も脚(才能)もあります。
私的には今後も期待するつもりです。
気を取り直して…少し時間は経ち、各馬準備でゲートイン。
一斉にスタート。
しかし、スターズオンアースはややダッシュがつかず。
スタートで出遅れたと言われればそうなのですが、私的には、そこまでひどい出遅れとも思えませんでした。むしろ、そこから思ったポジションを取れなかった事の方がマイナスになった気がするのです。
枠順も影響があったかも。レース前に、「実力馬が真ん中枠に揃い過ぎた」と言いましたが、序盤での位置取り争いがすべてのような状況になりました。
恐らく考えていた事は皆同じで、我先にと位置取り争いに。
スタニングローズがヨレて飛び出してしまい、ナミュールもあおりを食って、おっと、という感じで。
アートハウスもかなりヨレ気味でした。
これは決して、誰かを悪く言うような意味ではありません(念のため)、あくまでも起きた事実として。
それで、ちょっとゴチャっとして、そのただ中にいたスターズオンアースは、結果的に挟まれる形になり、行き脚がつかず14番手に。
ほとんど同じ位置(枠)に、脚の速い=実力馬たちが集まると、こういうケースも起きたりするようです。
さて、スターズオンアースは道中もずっと同じような位置でした。
恐らくですが、馬順を上げていけなかったのかな…とも思いました。
このレース、特に奇をてらう馬もおらず、序盤で決まったポジションのまま大体が固まってしまい、そのまま素直に進んで行きました。
素直に流れると予測していましたが、素直過ぎるぐらいのレースの流れだったのです。
ペースも前半59秒7と、基本はミドルペースで、実質はややスロー的な展開を感じた。
後方からの競馬になった馬たちには、正直、とりつくしまもない雰囲気。
そして運命の第4コーナーでも、まだ後方にいたスターズオンアース。
…実は、ここから彼女の最大の見せ場があったのです。
なんと最後の直線に入ろうとした時、彼女とルメール騎手は内側に進路を!
終盤では、結論的によーいドン(速さ比べ)となり、最後の直線で先に抜け出し、エンジンが最大になった子の勝ちとなったのです。
実際、優勝馬スタニングローズは、まさしく最善のタイミングで抜け出し、仕掛けていたのです。スタニングローズの正直さと、坂井瑠星騎手の絶妙な判断が生んだタイミングだったのです。
ナミュールも加速に加速を加えている状態。アートハウスもすでに仕掛けていて…。
そうそう、スターズオンアースの後ろにいたライラックも仕掛けていたのですが、外側に持ち出して(これはデムーロ騎手がライラックの得意な形に持ち込もうとした判断でしょう)いたのですが、いかんせん外からではロスが大きすぎました。末脚は33秒9と素晴らしいものだったのですが…ライラックもこれからに期待ですね。
そんなやり取りのタイミングで、しかも、内側に他の馬も込み合っている中へ突っ込んだスターズオンアース!
まるで映画やアニメのカーチェイスか何かのような様相で、馬同士の狭い隙間を縫って進み、ライバルたちを次々に追い抜き、更に抜けて、あっという間に先頭を脅かす距離まで詰めた!
信じられない速さでした!!
そして、無情でしたが、そこがゴールでした…。
スタニングローズはライバルたちの追撃を振り切り、1/2馬身差つけてゴール。
ナミュールも、一瞬スターズオンアースに追い抜かれたかのようでしたが、ハナ差凌いで2着。
スターズオンアースは、先述の通り“そこがゴール”で、3着。
そこから2馬身遅れて、メモリーレゾン(なんと13番人気)が4着に。
アートハウスは、早めから勝負で加速をつけていましたが、最後の上り坂で一杯一杯になった様子で5着でした。
そして、馬たちが次々にゴールへドドッと流れ込む…という結果でした。
改めて、速さに速さを凝縮したかのような秋華賞GⅠだったと思います。
スターズオンアースは、確かに3冠達成できませんでしたが、最後の直線の狭い隙間で前の馬たちを避けながら、上がり(最後の600m)33秒5というメンバー最速の、しかもトンデモなタイムを叩き出しているのです。
4コーナーですら後ろから数える状況で、ゴチャゴチャした隙間を縫って上がってきたわけですから、震えが来るほど凄まじい速さ…父馬ドゥラメンテの生まれ変わりだろうかと思うぐらいでした。
ドゥラメンテも、かつて“戦慄の2冠馬”と呼ばれたほど、劇的な末脚を繰り出しました。
そして、鞍上のルメール騎手も、スターズオンアースを走らせていたというより、一心同体で走っていたような感じです。
4コーナーに差し掛かる段階での様子、恐らく外に持ち出していたのでは間に合わなかった気がします。末脚の鋭さは凄まじいものの、外に出す行動だけで遅れをとったはず。
その時ライバルたちは、すでにエンジンをかけていた状況でした。
ならば、スターズオンアースの馬混みでも怯まない強さや器用さ、そして柔軟性を信じた上での決断だったのだろうと思いました。
そういう意味で、ルメール騎手は最大の修正をしたのでしょう。
これらもすべて、騎手の“馬に対する理解や信頼の深さ”が、実際の力に関わってくるんだ…と。今回特にそういう感覚を持ちました。
騎手の馬に対する理解や信頼という意味では、もちろん秋華賞馬に輝いたスタニングローズの相棒・坂井瑠星騎手も同じ。
スタニングローズという子は、きっと正直で真っ直ぐな気性なのでしょう。これまでの安定的な成績もそれを物語っています。
そこへ、若武者・坂井瑠星騎手の絶妙な判断が加わって、強さももちろん、手堅いレースができたのだと思いました。
人馬共にGⅠ初制覇です。
坂井瑠星騎手は、海外競馬にも積極的で、常に研鑽を積んでいます。世界のトップジョッキーたちと競いつつ、その技術も吸収しているのでしょう。
先日、中日スポーツの「ぱかぱか日和」(←公式サイトへ)で読みましたが、武豊騎手にも褒められた事もあったとか。「フォームがすごく綺麗だ(一部抜粋)」と。
それで、あくまでも憶測ですが、きっと坂井騎手は、武騎手からもヒントを貰う部分があったのではないかしら。
そして、この直前のフランス遠征の時も、相棒エントシャイデンと共に、フォレ賞GⅠ(パリロンシャン競馬場・芝1400m)で3着に好走し、日本馬の意地を見せてくれました。
実は、エントシャイデン以外の日本馬たちは、凱旋門賞出走組も含め、力の要る馬場に泣かされてしまって。
純粋な力負けではなかった部分も多く、救いが無くて…しかし、エントシャイデンの適性と、坂井瑠星騎手のナイスな騎乗で、一矢報いた形になったのです。私も心の中でそっと「ありがとう」と思ったものです。
坂井騎手は、きっと、積み重ねたそれらの経験が活きたのでしょうね。
今回、3冠達成が観たかった私としては、(その瞬間こそ)悔しかったものの、スタニングローズ&坂井騎手の隙も無ければ無駄も存在しないレースっぷりには、心底感服しました。
おめでとうございます!
スターズオンアースは、残念ではありましたが、次の大きな舞台に向けて英気を養ってもらいたいです。
なんやかや言っても、今回、骨折明けのぶっつけ本番でしたし、すごく頑張ったので、今はどうか無理せず過ごしてほしい。
これからも彼女の光り輝くような走りをたくさん観たいのです。
今回見せてくれたあの末脚に、未来も観えたような気がしました。
そして彼女は、なんと、まだ3歳馬の女の子なのです。将来どこまで成長するのか…。
いつも、競馬はドラマチックだ…と。
第27回秋華賞GⅠの感想でした。