【映画】レザボア・ドッグス~軽妙洒脱な音楽と凄惨な銃撃戦のアンバランスなバランス | 鶏のブログ

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【監督】クエンティン・タランティーノ

【原題】Reservoir Dogs

【制作国】アメリカ

【上映時間】100分

【配給】鈴正、フラッグ

【出演】ハーベイ・カイテル(Mr.ホワイト)

    ティム・ロス(Mr.オレンジ)

    クリス・ペン(エディ)

    ローレンス・ティアニー(ジョー)

【公式サイト】
1991年に制作されたクエンティン・タランティーノ監督のデビュー作が、デジタルリマスター版で上映されるというので観に行って来ました。強盗団のボス・ジョーとその息子・エディが、6人のプロ強盗を集めて宝石店を襲ったものの、情報が警察に漏れていたらしく、強盗団は窮地に追い詰められていくというお話でした。
本作の面白さは、銃撃戦や”警察の犬”が誰であるのかという謎解きにもありましたが、冒頭のレストランのシーンで繰り広げられる、強盗団たちの卑猥で差別的で文字通りクソッタレな会話に代表される、登場人物たちのセリフ廻しにあったように思います。ドンパチにより直ぐに人が撃たれるシーンが連続しますが、そうした実弾のやり取りよりも、セリフのやり取りの方が刺激的に感じられたというところです。
また、最終的に”警察の犬”だった強盗団の一員が、自分を最後まで庇った別の一員に自らの正体を明かし「すまない」と謝るシーンは、凄く日本的な感じがして、それまでの凄惨なシーンや下卑た会話などが吹っ飛んでしまい、実に感動的な気分に浸ることが出来ました。それぞれ注目するところは違うかも知れませんが、やはりクエンティン・タランティーノの名を世界に知らしめた作品だけのことはあると感じました。
 
ただ一点疑問もあって、感動の謝罪シーンの直前、ボス・ジョー、その息子・エディ、強盗団の一員であるMr.ホワイトが、それぞれ銃を向けるシーンがあります。パンフレットによると、これは”メキシカン・スタンドオフ”と呼ばれる状態で、邦訳すれば”三すくみ”というところでしょうか。この結果、3人とも撃たれてしまう訳ですが、状況的にはジョーとエディの親子2人とMr.ホワイトが対立する構造であり、3人が同時に撃たれる訳はないと思われました。実際ジョーは生きてはいるが絶命寸前のMr.オレンジを狙い、Mr.ホワイトはそのジョーを狙い、エディはMr.ホワイトを狙っています。3人が同時に発射したとして、ジョーとMr.ホワイトは撃たれますが、エディは無傷のはず。ところが実際はエディも撃たれて倒れます。3人のほかに現場にいるのは瀕死のMr.オレンジですが、彼の拳銃はそれ以前にMr.ブロンドを撃ったことで弾切れになったように思われ、かつ大量出血が進んでとても銃撃できる状態ではないように思われるのですが、現場には彼以外にいない以上、Mr.オレンジがエディを撃ったのでしょう。一瞬のことで見逃した可能性が大きいので、少なくともこのシーンだけはもう一度観てみたいと感じたところです。
因みにこのシーン、発表後しばらくして香港映画の「友は風の彼方に」のパクリではないかという指摘を受けたそうだけど、タランティーノ本人は「続・夕陽のガンマン」のオマージュだと言って憚らなかったそうだ。
 
あとセリフ以外にも印象的だったのが音楽。レストランでの強烈な会話のシーンの後、強盗に出陣するシーンに掛かるのが「リトル・グリーン・バック」。どこかで聞いたことがある曲だなと思ったら、サントリーのウイスキーのコマーシャルソングとしても使われてました(笑)それ以外にも、1970年代を中心としたサウンドトラックは、いずれも銃撃戦や下品な会話には似つかわしくない明るく軽妙洒脱な曲調の曲ばかり。こうした曲と似つかわしくない凄惨な銃撃戦シーンというアンバランスを、見事にバランスさせていたことも、タランティーノの名を高からしめた一因だと確信しました。
 
最後に「レザボア・ドッグス」という題名について。”警察の犬”が誰であるかがテーマの一つであることから、”ドッグ”というのはそのことなのかと思いましたが、英語の”dog”には、そもそも日本語の”犬”にあるような”スパイ”とか”回し者”と言った意味合いはないようでした。敢えて言うなら”poodle”(プードル)とか”lapdog”(ラップドッグ=イギリス原産の愛玩用の小型犬だそうです)には、”人の言いなりになる人”という意味があるそうですが、本作の登場人物とは正反対の人物像という感じです。そもそも題名は”ドッグス”と複数形になっているので、1人だけ紛れ込んでいると思われる”警察の犬”を現した言葉ではないものと思われます。むしろ、何にでも噛みつく”狂犬”を意味したものと考えると、しっくりと来る気がするところです。
また”レザボア”とはどんな意味なのか?辞書を調べると、”reservoir”とは①タンク、②貯水池、③蓄積と言った意味を持つ単語らしいです。となると、「レザボア・ドッグス」を直訳すると”何かを貯めた犬たち”みたいなことになりますが、さっぱり訳が分かりません。ネットで調べても諸説あるようで、こうやって観た者に色々と推理させることが、タランティーノ監督の主眼だったんじゃないかと捉えることにしたところです。 
 
そんな訳で、”メキシカン・スタンドオフ”に関する若干の疑問も残りつつも、セリフや音楽、そして迫真の銃撃戦と、色々と楽しめる要素が満載だった本作の評価は、★4とします。
 

総合評価:★★★★

詳細評価:

物語:★★★★
配役:★★★★
演出:★★★★
映像:★★★★
音楽:★★★★★