【映画】バービー~マーゴット・ロビーの凄さを実感 | 鶏のブログ

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観た映画、読んだ本などについてのメモです。
”ネタバレ”を含みがちなので、その点ご容赦下さいませ。

【監督】グレタ・ガーウィグ

【原題】Barbie

【製作国】アメリカ

【上映時間】114分

【出演】マーゴット・ロビー(バービー)

    ライアン・ゴズリング(ケン)

    アメリカ・フェレーラ(グロリア)

【公式サイト】

 

8月11日に日本公開となった「バービー」ですが、7月初旬から”場外乱闘”が始まっていました。まずは作中に中国とベトナムの間で揉めている南シナ海の領土問題に関して、中国側の主張を受け入れた映像があるということでベトナムで上映中止になったという報道がありました。

さらに7月下旬になり、騒ぎが日本にも飛び火。一足先に7月21日に全米で公開された「バービー(Barbie)」ですが、本作と同日に公開となった「Oppenheimer(オッペンハイマー)」と本作のタイトルを組み合わせた「Barbenheimer(バーベンハイマー)」という造語が生まれたとか。「オッペンハイマー」は、言わずと知れた原爆の生みの親。その伝記映画である同作とバービーの姿を合成させた画像がSNSで流行に。原爆投下シーンとバービーをコラボさせた画像が沢山作られただけならファンが勝手にやったことですが、ワーナー・ブラザースのX(旧Twitter)担当者が、こうしたツイートに「いいね」をしたことで炎上。これに対して日本の「バービー」公式Xは謝罪を表明し、いろんなメディアが取り上げる事態になりました。最終的にはアメリカのワーナー・ブラザース本社も謝罪ということで、公開前に実に多くの話題を提供した作品でした。

 

さてようやく映画の内容に入りますが、そもそも私は男の子でしたので、バービー人形で遊んだ経験もなければ、バービーの世界に出て来る男性キャラクターがケンだというのも初めて知りました。そんな私でも、映画として楽しめたので、万人向けの作品だったということでしょう。また観る前から、単なる人形の実写映画ではなく、バービーの世界と現実の人間社会の対比を描いた作品だと聞いていたので、どのような描き方をしているのか楽しみにしていたのですが、その辺りはまあ想像通りだったかなというのが素直な感想でした。

ただその描き方の手法は特筆すべきでした。言わば女の楽園であるバービーランドから、男性中心の現実世界との対比を行うにあたり、バービー人形のメーカーであるマテル社の男性中心の経営陣をモデルにしたところは、実に上手い創りだったと思います。さらにはバービーの生みの親であるルース・ハンドラーも登場。彼女が会社経営上不正を行ったことにも触れるなど、マテル社のユーモアセンスと懐の深さに敬意を表すべきところだと感じました。(実際は不正な財務報告をしたり、証券取引法違反で罰金を科せられたようですが、映画では「国税に捕まった」と言ってました。)

 

俳優陣に関しては、何と言っても主演のマーゴット・ロビーの演技と美しさに圧倒されました。バービーだから綺麗なのはさもありなんですが、人形であることの無機質感、さらには人間世界に触れることでウェットな雰囲気を醸し出していたのは、メイクとか照明の影響もあるでしょうが見事でした。世界興行収入が12億ドルに達したことから、彼女の出演料とボーナスの総額がハリウッド最高水準の5千万ドルに達したという報道もありましたが、それに相応しい活躍だったんじゃないかと思います。

 

そんな訳で、評価は★4とします。

 

総合評価:★★★★

詳細評価:

物語:★★★★
配役:★★★★★
演出:★★★★
映像:★★★★
音楽:★★★★
 

 

左側のバービーの世界が描いた世界地図が、中国の主張する九段線を受け入れていると話題になった訳ですが、右側の実際の九段線の地図を見ても、その指摘が正しいのかさっぱり分からないというのが正直なところです。

 

 

 

バーベンハイマーの合成画像に「いいね」をしたワーナー・ブラザース公式Xは、軽率の誹りは免れないかと思います。

ただアメリカ社会において、原爆投下を肯定的に捉えている人が大勢いることとか、ワーナー・ブラザースが日本市場に重きを置いていないことは再確認されました。

原爆投下に関しては、そういう国と同盟を締結し、原爆を落とした軍隊を日本国内に駐留させ、「日米は一体だ」と言って同盟関係を深化させている政権を大勢の日本人が支持していることを考えると、今回の「いいね」に単純に怒るのも軽率なんじゃないかとすら思うところです。

ワーナー・ブラザースの日本市場軽視に関しても、例えばあのトヨタ自動車ですらも、日本市場向けに作っていたクラウンを海外市場向けにしてこれまでのコンセプトを捨ててしまうなど、日本市場を軽視する傾向が顕在化しています。人口が減り、経済規模もほぼ横ばいの日本市場を、グローバル企業が軽んじるのは当然と言えば当然なんでしょう。だからと言って宣伝担当が原爆投下を肯定するような真似をするのは不味いでしょう。

ただバーベンハイマー画像に「いいね」をしたのはあくまで宣伝担当であり、この騒動は本作の内容とは関係ない場外乱闘に位置付けあれるものと思います。監督や出演者はじめ製作者達は無関係であり、映画の評価はあくまでリング内の戦いで行うべきであることは同時に認識すべきではないかと考えます。