超高齢化社会が到来し、そのために社会保険財政が逼迫していると言われて久しいところですが、本作「PLAN75」は、これを解決するために75歳になったら自ら死を選択する権利(?)を得られる法律が施行された近未来を描いていました。
主役は倍賞千恵子。言わずと知れた大女優が、老いさらばえた独居老人である角谷ミチを演じており、それを観るだけでも目を見開かされる作品でした。やはり倍賞千恵子と言えば、「男はつらいよ」のさくら役の残像があるので、あの笑いの絶えない「とら屋」で働いていた姿と比較すると、団地の一室で家族もなく一人寂しく暮らすミチの姿は、何ともやるせない気持ちにさせられました。
この映画の主題である老人による死の選択というのは、昔から姥捨て山の話があるように、何も現代に特有の問題ではないと言えると思います。ただ、死をビジネス化し、PLAN75の遂行に民間業者が参入していることや、産廃業者が遺体の処理を請け負い、そこで外国人労働者が働いているところなどは、実に現代的なところであり、この部分が作者が最も伝えたかったところなのではないかと感じたところでした。
映画の話題から話が逸れますが、つい先日も、たかまつなな氏というお笑いタレントが、橋下徹氏が司会を務めるABEMAテレビの番組で、余命に従って投票権が逓減していく「余命投票制度」というのを提唱したということ記事が出ていました。ネット上を中心に賛否が分かれているようですが、こうした話を聞くと、決して本作が絵空事ではなく、すぐそこに迫った話であると思わざるを得ません。
そういう意味で、一層高齢者バッシングが強まって行くであろうそう遠くない将来高齢者となる身としては、実に身につまされる作品でした。
評価:★★★★
参考までに、たかまつなな氏の関連のツイートを載せておきます。
“シルバー民主主義”の打破のために、余命投票制度を提案しました。シルバー民主主義を解決するためには、さまざまな方法があります。ぜひどうすればいいか、議論になればと願っています。
— たかまつなな/笑下村塾 代表 (@nanatakamatsu) June 19, 2022
【橋下徹さんの番組の対談内容が記事になりました】https://t.co/wXKvrxPjkj@hashimoto_lo