【映画】彼らは生きていた~タイムマシンに乗って戦地に行く体験 | 鶏のブログ

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1世紀あまり前の第1次世界大戦の映像がカラー化されたと言うので、取るものもとりあえず見に行ってきました。

渋谷にあるシアター・イメージフォーラムという80人くらい収容できる小劇場での上映でしたが、平日にも関わらず毎回満員の模様。当日券を買えずに帰る人もいたくらいでした。それだけ注目度が高い映画ということなのでしょう。

 

期待に溢れた状態で映画は始まりましたが、プロローグから暫くの間は、モノクロ映像が続きます。カラー映像が見たくて来たのに、何を焦らせてるんだと思っていましたが、これには理由があることが後に分かります。 第1次大戦の概況説明や、若き兵士たちが勇んで軍隊に入り、戦地に赴くあたりまでのシーンが終わり、実際に彼らが戦地に行った時から、待望のカラー映像に切り替わります。

 

普通昔の映像は、モノクロであると同時に速度が一定でないなど、見ていてしっくり来るものではなく、現実味も薄い感じがするのですが、それらのフィルムをカラー化し、さらには速度も一定にすることで、実にリアルな1世紀前の情景が再現され、まさに感動モノでした。ただ当時はトーキー映画の時代でもあり、音声が同時録音されていなかったのですが、ここに出征した兵士たちの証言を録音した音声を、場面に合わせて当て込んでいき、最初から意図して制作された映画のように仕上げたのは見事としか言いようがありません。

 

そして長きに渡った戦争が終わり、生き残った兵士たちが故郷に帰る場面になると、映像も再度モノクロに切り替わります。全編をカラーにすることも勿論出来たのでしょうが、敢えてプロローグとエピローグをモノクロにすることで、戦地でのカラー映像を一層浮き立たせる効果を狙ったのでしょう。そして、タイムマシンに乗って戦争の疑似体験をした観客たちを、現実の世界に引き戻すという役割をも担わせたのでしょう。いずれにしても、唸らせる演出でした。

 

最後に映画のテーマである「戦争」についてですが、こうした戦地における凄惨なシーンを見ると、当然厭戦気分になるというか、反戦思想にどっぷりと浸かる方もいるかと思います。当然のことながら、戦争は最大限回避すべきだけれども、奴隷となるか戦うのかという選択肢しか残されていないのならば、戦うという選択をするのが誇りある人間ではないかと思います。

勿論この映画でも見たように、戦争は想像を絶する凄惨で絶望的で残酷なものなのなのでしょうが、戦わずして奴隷になるよりはマシなのではないかと、夢想したところです。

 

評価:★★★★★