【映画】ヤクザと家族 The Family~「家族」を考えさせてくれる良作 | 鶏のブログ

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「The Family」という副題の通り、ヤクザというフィルターを通して家族、そして人間というものを考えさせてくれる良作でした。

 

普通の意味で家族と言えば、血縁関係がある親や兄弟や子供ということになりますが、こちらの家族は自分には選択権がありません。せいぜい配偶者を選ぶことが出来るくらいでしょう。 一方でヤクザというのは、自分で組織に入ることが選択できるものですが、その関係性の濃さから、疑似家族と言える存在かと思います。

 

綾野剛演じる主人公は、薬物で失った本当の父親を否定しつつも、薬物に対して拒絶反応を示すなど、父親を強く意識していることは間違いありません。 一方で、舘ひろし演じる疑似家族の中の父親である組長に対しては、忠誠や恩義と言ったヤクザ的な心情とともに、本当の父子関係のような家族の情も持ち合わせています。そして、父親のようになりたいという心情がにじみ出ています。

 

最終的には、組を離脱しながらも、元ヤクザというレッテルのために社会から完全に阻害され、悲劇に繋がっていく訳ですが、それが実は主人公にとっては救いだったのではないかと思えるのが、この作品の一番の見どころかと感じました。

 

話を家族に戻すと、ここ最近は家族の絆というか、頸木というものが薄れ、個人の自由が重視される世の中ですが、社会的な動物である人間にとって、個人だけで生きて行くのは非常に難しいのも事実です。

その結果、家族の頸木が薄れたからこそ、逆に何らかの疑似家族たる集団に帰属して、その中で生きて行くことで精神の平衡を得ることが増えているのではないかと思います。それが人間というものの性であり、血縁関係のある家族からも、疑似家族からも見放されて人間は、生きて行くことが非常に難しいという、ある意味当たり前のことを再度認識させられた作品でした。

 

あと、兄弟杯を交わす場面など、作品の序盤では昔のヤクザ映画的な雰囲気を醸し出しつつ、時代の変遷に従ってヤクザ映画の色が無くなっていくというのは、実に良い演出だったと思います。

 

評価:★★★★★