鶏のブログ

鶏のブログ

観た映画、読んだ本などについてのメモです。
”ネタバレ”を含みがちなので、その点ご容赦下さいませ。

【監督】阪元裕吾

【制作国】日本

【上映時間】112分

【配給】渋谷プロダクション

【出演】髙石あかり(杉本ちさと)

    伊澤彩織(深川まひろ)

    前田敦子(入鹿みなみ)

    池松壮亮(冬村かえで)

【公式サイト】

 

本作でシリーズ3作目となるという「ベイビーわるきゅーれ」ですが、初めて観に行ってきました。女子高生の殺し屋コンビのお話というくらいしか知らずに観に行った訳ですが、既に卒業して二十歳になんなんとしていました💦

そんな予備知識ゼロの私でしたが、ちさと(髙石あかり)とまひろ(伊澤彩織)の2人の主人公はもとより、今回の敵役だった冬村かえで(池松壮亮)が非常に魅力的で、非常に面白い作品でした。また、”殺し屋稼業”という非日常に身を置きながら、行動原理は普通の若い女子というギャップが面白く、また残虐シーンもありながら基本コメディ路線を走っていることなど、本作がシリーズ化されて3作目を迎えた理由を垣間見ることが出来ました。

 

そんな中で特に評価したいのは、まひろ役の伊澤彩織とかえで役の池松壮亮の御二方。2人の戦闘シーンは2回ありましたが、銃撃戦はそこそこにした後の闘いはまさに総合格闘技さながら。片や伊澤彩織は首がぶっとくて見るからに只者じゃない感が半端じゃなく、ご経歴を見たらそれもそのはずで元々スタントをやられていたとか。対する池松壮亮も、二の腕のパンプアップを見ると相当仕上げてきた感じで、両者の本作に掛ける意気込みがヒシヒシと伝わって来ました。

御二方以外でも、ちさととまひろの先輩殺し屋役・入鹿みなみを演じた前田敦子の嫌な女っぷりも様になっており、中々いい味を出していました。

 

そんな訳で、シリーズ初見の本作でしたが、望外の面白さを味わうことが出来たので、評価は★4とします。

 
総合評価:★★★★

詳細評価:

物語:★★★★
配役:★★★★★
演出:★★★★
映像:★★★
音楽:★★★★

 

 

 

【監督】黒沢清

【制作国】日本

【上映時間】123分

【配給】東京テアトル、日活

【出演】菅田将暉(吉井良介)

    古川琴音(秋子)

    奥平大兼(佐野)

    窪田正孝(村岡)

【公式サイト】

 

蛇の道」、「Chime」に続く2024年黒沢清監督三部作(?)の掉尾を飾る作品でした。4か月で3回目ということで、短期間に立て続けに黒沢ワールドに浸ったせいか、理不尽系の物語にも慣れて来て、本作では物語世界そのものを楽しむことが出来ました。「Chime」でもそうでしたが、序盤は普通の世界なのに、ハッキリとした理由が分からないままに徐々に歯車の回転がおかしくなって行き、やがて地獄行きになるという展開に快感すら覚えました。

 

また本作の見所は、菅田将暉をはじめとする俳優陣。古川琴音や窪田正孝、岡山天音、「Chime」では主演を務めた吉岡睦雄、さらには松重豊をチョイ役に使う贅沢な布陣で、彼らの絶妙な演技が本作の浮世離れしたとも言えるストーリーにリアリティを与えているところが流石でした。

そしてそんな俳優陣の中で最も印象に残ったのは、菅田将暉を抑えて古川琴音でした。菅田将暉演じる主人公・吉井の恋人役でしたが、最後に吉井に見せた般若の如き表情は、悪夢に出て来るレベル。俳優だからシナリオ通りに何でも演ずるのは当然と言えば当然ですが、従来の古川琴音のイメージを完全に一変させたあの演技は、間違いなくMVPものでした。

 

そんな訳で、本作の評価は★4とします。

 
総合評価:★★★★

詳細評価:

物語:★★★★
配役:★★★★★
演出:★★★★
映像:★★★★
音楽:★★★★

【監督】呉美保

【原作】五十嵐大「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」

【制作国】日本

【上映時間】105分

【配給】ギャガ

【出演】吉沢亮(五十嵐大)

    忍足亜希子(五十嵐明子)

    ユースケ・サンタマリア(河合幸彦)

    でんでん(鈴木康雄)

【公式サイト】

2022年の米国アカデミー賞作品賞を受賞した「コーダ あいのうた」に続く”コーダもの”(そんなジャンルがあるのか知らんけど)でした。 コーダ=CODAは、Child of Deaf Adultsの頭文字を取った言葉で、直訳すれば”聾唖者の親を持つ子供”という意味であり、本作でもこの言葉そのものもが出て来てました。「コーダ あいのうた」も本作も、聾啞の親と耳が聞こえる子供の親子関係にスポットを当てた良作でしたが、創作の物語でどちらかと言えばコメディ要素が強かった「コーダ あいのうた」に比べると、本作は原作者にして主人公でもあった五十嵐大(吉沢亮)のエッセイを元に映画化されていることや、舞台が日本であることもあって、非常に身近なお話に感じられました。
 
そして主役の大が生まれたところから始まり、大人になるまでを描くことで、特に母親である明子(忍足亜希子)に対する大の感情や二人の関係性の変遷が、非常に分かりやすく表現されていて、コーダの偽らざる想いが十二分に伝わってきました。

さらに大が故郷の宮城から東京に出て来て働き始めた以降の展開も面白く、第三者との関係性の中で両親、特に一度は反発した母親に対する想いが再び優しい方向に向いた時、こちらも自分の母親を思い出して涙腺が緩んでしまいました🥲

俳優陣は、主人公・大を演じた吉沢亮が、表情だけでなく後ろ姿を含めて実に繊細な感情表現をしていて素晴らしかったです。また、母親役の忍足亜希子はじめ、「コーダ あいのうた」同様に聾の役は聾の俳優が務めており、本作の見所とも言うべきものでした。
大が勤めることになった雑誌編集長のユースケ・サンタマリアも、怪しげでいながら魅力的な雰囲気で良かったです。

一点予想と違ったのが、東日本大震災の話が出てこなかったこと。原作者の五十嵐大は1983年生まれとのこと。主人公の大の生年は作中明示されていなかったものの、子供時代にファミコンでスーパーマリオに夢中になっていることからも、年代にブレはないのでしょう。従って、宮城県の海辺の街を舞台にした作品だったので、確実に震災の話が盛り込まれるだろうと思っていたのですが、実際はそうではありませんでした。
震災の話を入れるとそちらがメインになってしまいがちなので、それを避けたかったのか、全く当初から念頭にすらなかったのかは分かりませんが、そういう物語になっていたらどうだったのだろうと夢想しながら劇場を後にしました。
 
そんな訳で、本作の評価は★4とします。

総合評価:★★★★

詳細評価:

物語:★★★★
配役:★★★★★
演出:★★★★
映像:★★★
音楽:★★★★★