鶏のブログ

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観た映画、読んだ本などについてのメモです。
”ネタバレ”を含みがちなので、その点ご容赦下さいませ。

【監督】濱口竜介

【原作】宮野真生子、磯野真穂

【制作国】フランス・日本・ドイツ・ベルギー合作

【上映時間】196分

【配給】ビターズ・エンド

【出演】ビルジニー・エフィラ(マリー=ルー・フォンテーヌ)

    岡本多緒(森崎真理)

    長塚京三(清宮吾朗)

    黒崎煌代(窪寺智樹)

    マリー・ビュネル(ソフィ)

【公式サイト】

日仏合作ならではの文化や価値観の違いが織り込まれながらも、人間の五感を強く刺激する濃密なドラマでした。介護を取り巻く厳しい現実は日本だけの問題ではなく、フランスでも共通する社会課題であることが描かれており、国境を越えた普遍性が感じられました。

 

上映時間は3時間を超える長尺ですが、巧みに構成されたシナリオのおかげで長さをほとんど意識させませんでした。特に日本の真理(岡本多緒)がフランスのマリー(ビルジニー・エフィラ)に向けて語る”経済学講義”は、まるでトマ・ピケティを思わせる鋭い内容で、「資本主義が少子高齢化を生む」という指摘には思わず膝を打ちました。また、先進的な介護スキームを実践しようとする理念先行型のマリーと、現場のベテラン看護師として実務重視型のソフィ(マリー・ビュネル)との対立と和解のドラマは、現実的にこんな上手く行くことは稀だろうと思いつつも、対立を和解に導くための一定の説得力を持った処方箋を示していたと思われました。

 

さらに日本とフランス、それぞれのマリが見せる繊細で豊かな感情表現も本作の大きな魅力です。言葉だけでは伝えきれない心の揺れ動きを見事に体現しており、深く心を揺さぶられました。

他の俳優陣の演技も見応え十分で、長塚京三による劇中での一人芝居は、内容的にも演技としても独立の演劇としても成り立ちうる出来栄えでした。さらに、黒崎煌代の自閉症者を演じる自然かつ説得力のある演技も、まさに天才の域に達していると感じました。

 

本作は、人と人との出会いと別れ、そして避けることのできない「死」を真正面から見つめた作品です。社会問題への鋭い視点と普遍的な人間ドラマを高い次元で融合させた、濱口竜介監督らしい傑作でした。

 

そんな訳で、本作の評価は★5.0とします。

 
総合評価:★★★★★

 

詳細評価:

物語:★★★★★
配役:★★★★★
演出:★★★★★
映像:★★★★★

【監督】黒沢清

【原作】米澤穂信「黒牢城」

【制作国】日本

【上映時間】147分

【配給】松竹

【出演】本木雅弘(荒木村重)

    菅田将暉(黒田官兵衛)

    吉高由里子(千代保)

    オダギリジョー(郡十右衛門)

【公式サイト】

俳優陣は非常に豪華で、それだけでも十分に見応えのある作品でした。野外ロケも素晴らしく、戦国時代の空気感や荒廃した有岡城の雰囲気がよく表現されていたと思います。一方で、人質となった若様が殺害される場面のセットはやや安っぽく感じられ、特に石垣の造形には少し違和感を覚えました。

 

キャストの中では、荒木村重を演じた本木雅弘の存在感がピカ一でした。猜疑心や苦悩を抱えながらも城に籠る村重の複雑な人物像を見事に表現しており、本作の中心をしっかり支えていたと思います。観る前は最も期待していた黒田官兵衛役の菅田将暉も好演していましたが、登場場面はそれほど多くなく、もう少し活躍を見たかったという印象も残りました。

 

物語としては、牢屋に閉じ込められた官兵衛が次々と持ち込まれる難事件の謎を解いていくという設定が非常に面白く、時代劇としては新鮮な趣向を凝らしており、本格ミステリーとしても楽しめました。また、村重の側室・千代保(吉高由里子)が抱く宗教的な動機や信仰にまつわるエピソードには、修道院を舞台に宗教と知の対立を描いた「薔薇の名前」を連想させるものがあり、作品に独特の深みを与えていました。

 

全体として、細かな美術面には気になる部分もありましたが、豪華な俳優陣と独創的なミステリー設定、そして本木雅弘の熱演が強く印象に残る作品でした。

 

そんな訳で、本作の評価は★3.8とします。
 
総合評価:★★★★

 

詳細評価:

物語:★★★
配役:★★★★★
演出:★★★★
映像:★★★★
音楽:★★★

 

 

【監督・脚本】天野千尋

【制作国】日本

【上映時間】116分

【配給】アスミック・エース

【出演】有村架純(和歌子)

    黒木華(清恵)

    南沙良(麻由)

【公式サイト】

南沙良、早瀬憩、吉岡睦雄など、好きな俳優が数多く出演していたため鑑賞しました。ただ、予告編などを観る限りではストーリーに一抹の不安を感じており、残念ながらその不安は的中してしまいました。

 

物語は、生活苦や借金返済に追われる、職業も経歴も年齢も異なる3人の女性が、金塊密輸の闇バイトに手を染めるというものです。前半はなかなか面白く、国際的な犯罪においては足かせにしかならないと思われた子ども連れや怪我、妊娠といった要素が、結果的に密輸成功の鍵となる展開には一定のカタルシスを感じました。

 

しかし、一度の密輸で得られる報酬が少なかったために2度目へ挑戦し、さらに自分たちだけで密輸を行おうとし始めたあたりから、徐々に雲行きが怪しくなっていきます。特に気になったのは、ご都合主義の極致ともいえる展開と、省略の多さでした。

 

自力で密輸を行うには金塊購入のための資金が必要になりますが、和歌子(有村架純)が夫(塩野瑛久)のかつての勤務先に借金の申し込みへ行った際、たまたま社長(齋藤工)の不倫現場を目撃し、それをネタに資金を得る展開や、清恵(黒木華)が勤務する研究所の所長(佐野史郎)の不正蓄財口座から預金を盗み出す展開は、さすがに都合が良すぎるように感じました。そもそも、なぜ清恵がネットバンキングのIDやパスワードを知っていたのかという説明もありません。

 

また、金塊を日本へ持ち込み、税関を通過した後にどのように密輸組織へ引き渡し、報酬を受け取ったのかといった点や、子どものパスポートをいつ取得したのかといった細部についても、物語の本筋とは直接関係ないとはいえ、もう少し丁寧に描いてほしかったと思いました。

 

このようにストーリーには最後まで入り込めませんでしたが、俳優陣の演技には見どころがありました。密輸組織の一員として闇バイトの面々を取り仕切る役で登場した吉岡睦雄は、今回も実に存在感抜群でした。無機質でロボットのようでありながら、相手に強烈な恐怖を与える演技はさすがの一言です。

一方、最近注目している南沙良は、「万事快調 オール・グリーンズ」に続いて主人公の女性3人組の一角を担っていましたが、今回は有村架純と黒木華の存在感に押され気味だった印象で、少々物足りなさを感じました。そのほかでは、齋藤工と佐野史郎が安定感のある演技を見せていました。

 

また、近年は予算の制約もあってか海外ロケを行う邦画が少なくなったように感じていましたが、本作はシンガポールでしっかりと撮影が行われており、その点は高く評価したいところです。

 

最後に一つ印象的だったことがあります。最終的に摘発される和歌子たち。それを確かめた後、エンドロールで「特別協力 東京税関」の文字が映し出された時、なるほど本作は豪華な俳優陣を起用した官憲の宣伝映画だったのか、と妙に納得してしまい、少々複雑な気分になりながら、私は劇場を後にしました。

 

そんな訳で、本作の評価は★2.2とします。

 

総合評価:★★

 

詳細評価:

物語:★
配役:★★★★
演出:★
映像:★★★
音楽:★★