診療中に指を負傷してから嵐は治療に恐怖感を持つ様になり診療をせず座っているだけだった。院長の保はそれを見守りつつ、突如現れた覆面をした白衣姿の白人と何やら話をしていた。


覆面の白人はぼうっと座っている嵐の手元にミラーとピンセットを投げた。


「こんな事で恐れていては行けないアラシ。君は歯科診療を愛しているはずだ。」


白人にそう言われると嵐は返した。


「俺はよ。もう嫌になっちゃったんだよ。診療がな。」


そう言いながら自前の剥離子を握っていると、10歳ぐらいの子供が近寄ってきた。


rへー ヒューフレディーじゃんかよ。いいの持ってね。お兄ちゃん。」


「お前詳しいな。子供だろ?」


嵐が尋ねると巻き毛のその男の子は言った。


「歯科が好きに年齢の何もないよ。このユニットみてよ。こらは特別治療をするためのシーメンスなんだぜ。日本はモリタ、ヨシダ、オサダとかあるけどね。お兄ちゃん名前は?おいら衛藤電斗っていうんだ。お父さんがおいら歯医者にさせたいけらでんとってつけたんだ。」


「そうかい。俺は田嵐ってんだ。」

嵐がめんどくさそうに答えると


「こら!電斗!何油売ってんの!」

智子が電斗の頭を小突いた。


「いけね、姉ちゃんだ。」


「あんたの弟かい?」

嵐が尋ねると智子は頷いた。


「このお兄ちゃん、歯科治療が好きなんだぜ。おいらにはわかるんだ。」


電斗がそういうと


「嫌いだよ!大っ嫌いだ!アルコールのにおい、ラバーのにおい、気持ち悪くてなるぜ。血なんか無理無理!」


と吐き捨てて嵐はその場を離れた。


嵐が医局で座っていると再び白人が嵐に叫んだ。


「アラシ、そんな事で諦めるな。ここに何があっても諦めない不死鳥の男がいる。」


そういい白人は覆面を取った。顔には火傷の後。それをみた嵐は


「あ、、あなたはDr.ブラック!」


歯科を知る者なら知らない者はいない窩洞分類を作ったG.IVブラックの末裔で、診療室が不幸にも火事に見舞われ、全身火傷を負いながらも患者スタッフを脱出させ自らは最後に脱出し生死の境を彷徨った。

しなしブラックは奇跡的に復活を成し遂げ世界歯科大会に登壇している。

その様な権威がなぜ町の歯科医院にいるのか?


「へん!」


そう言いながら嵐は消毒コーナーへ行った。

昼休みで誰もいなかった。


「嫌いなものか!ホルマリンのにおい、アルコールのにおい、一生嗅いでいたいぜ!コンプレッサーの音、痺れるぜ。」


その場にたまたま居合わせたベテランDA羽取に

「_おばさんよお。俺は大好きなんだ。歯科診療がよ。俺、俺も診療してえよ!」


「わかったわよ。わかったわよ。そうそうそういや2階に増設したばかりのチェアーがあったっけ。」


羽取がそういうと嵐は2階に上がっていった。2階診療室の一番奥にカバーのかかったユニットが設置されていた。


嵐がカバーを持ち上げて剥がすとそこには真っ赤なチェアーが置かれていた。  つづく