白金の花嫁:27 (怪盗X:Long:柳瀬流輝) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

いよいよ終わりが…。

 

before

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「菓子箱にしちゃデカ過ぎるんじゃねぇのか。」

 

流輝さんは私が手にするバックを見ながら苦笑いをした。

 

「ハァ…あぁ~緊張する!!」

 

私はそれどころじゃない。心臓が飛び出しそう

 

「クック…うちに来るのは初めてじゃねーだろ。何を今更。」

 

流輝さんは鼻で笑うけれどそういうことじゃなくて

 

柳瀬邸に招かれた しかも婚約者として!…あ~…

 

「まぁ分からなくもないがな。」

 

「流輝さんも緊張した?」

 

「フン。そりゃぁな。」

 

初夏の陽射しが街を照らす雲一つ無い晴天の日

 

私たちは結婚の許しを得る為、お互いの家を訪ねる。

 

まずうちの実家に流輝さんを招待した。両親には彼の事は常々話をしていた。

 

曾おじいちゃんのことも…彼がブラックフォックスだとは言えないけれど 彼の曾祖父は曾おじいちゃんと繋がりがあった事は話し済みだ。

 

『必ず幸せにします。』

 

頭を下げてくれた流輝さんに 隣でウルウルとしてしまったっけ。

 

そして夕暮れ時となり 次は私が柳瀬邸に出向いたわけだけど

 

「大丈夫だ 伊吹も菊乃も居る。親父にだって会ったことはあるだろ。今更緊張なんて必要ねーよ。」

 

玄関前で背を叩かれ ピシッと背筋を伸ばす事何度目。

 

相変わらず豪華なお庭に立派なお屋敷

 

流輝さんの少し後ろを歩きながら深呼吸を何度もした。

 

「行くぞ。」

 

「…はい!」

 

ガチャ

 

婚約者として…お嫁さんとして認めてもらえるように。

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

 

「で?結婚式はいつ?新婚旅行はどこに行くの?」

 

結婚を許す許さないどころか

 

「あ、お兄ちゃんのことだから海外挙式とか?」

 

食卓につき 早々に伊吹に前提での話をされれば

 

「え、えぇ…と?」

 

***は頬を染めチラッと俺に視線を向けた。

 

「クック…」

 

その辿々しさに笑ってしまう。だから心配ないと言ったのに。…それより

 

家族で囲む食卓

 

「菊乃 お酒を。」

 

「お父さん、程々にね。」

 

「…。」

 

俺こそ 緊張していたかもしれない。なぜなら親父とこうして向かい合い食事をするのは

 

「どうぞダンナ様。」

 

それこそ何年ぶりか…。

 

・・・・

 

偉大なる親父の元で何不自由ない生活が送れて幸せだろうと言われても 俺は頷けないだろう。

 

 迷う事ないレールの上は安泰ではあったが自由はない。将来を共にする女でさえも選べない

 

反発はするが反抗はしない…馬鹿馬鹿しく虚しくなるだけだからだ。

 

自身に関心を持たれることもない。いつもどこか孤独が付き纏っていた。

 

だが  親父が体調を崩し引退してからというもの 親父の印象もこの家の空気感も変わり

 

仕事柄 なにかしらの柵が剥がれ気が緩んだか

 

常に行動を共にしようと幼い伊吹が傍から離れなかったからか

 

妙なほど 安らぐ空間に馴染めなく 逆に足が遠のくほどだった。

 

最近の親父の最大の関心事は俺の結婚…相手である***らしい。

 

『凄く感じの良い子だとよくおっしゃっています。奥様に雰囲気が似ているとも…』

 

『フン。どうだか。』

 

***と出会う前 俺に薦めたい女がいると菊乃から聞いた時の話だ。俺は親父の変化を真っ向から否定した。

 

『親父が絡むだけでその女が胡散臭くなる。』

 

突き放していた。だがあまりにも伊吹が会うことを薦める事で叶った***との出会い

 

俺がコイツと結婚を決めたのは親父とはまた別の話…。

 

…にしても

 

「…。」

 

親父が酒に頬を染め 饒舌に***を持て囃す。博物館で何度も顔を合わせ交流は深まっている仲だ。だけれど

 

「***さん、どうぞ。」

 

「ありがとうございます!」

 

食事後にコーヒーを飲む頃には***の緊張はすっかり消え去るほど和やかに…。

 

「…。」

 

***の存在が俺の屈折した考えを取り払おうとしていた。

 

それとも今まで俺だけが認めようとしていなかった

家族の変化を目の当たりにしただけか…?

 

「ねぇ***さん、夏休みになったらまた絵画教室を始めてくれる?」

 

キラキラした目で伊吹が***に強請る。妹の愛らしさには俺はいつまでも目尻が下がる

 

「もちろん。なかなか再開出来ずにごめんね。そのお詫びと言ってはなんだけど…」

 

***が足元に置いていたトートバッグを膝の上に置く

 

「え、マカロンの他にもなにかあるの?」

 

コイツが持参した手土産の焼き菓子は既にコーヒーの横に添えられている

 

何を取り出す気だと横顔を見つめれば

 

「二人を描いたの。」

 

「え?」

 

「お父さまと伊吹ちゃん。」

 

え…

 

ガサ…

 

ザラ紙に包まれた額は大して大きくはない 自ら持てば顔を隠す程度の物

 

ただそれに入っているガラス越し描かれているモノには

 

「わー…!!」

 

伊吹が腰を上げ傍に来るほど

 

「おお…」

 

…親父が目を丸くするほど

 

俺が

 

「…フッ…」

 

思わず笑ってしまうほど…見事な色鉛筆画だった。

 

・・・・

 

***は伊吹に絵画を教える為今まで何度となくこの家を訪ねている。

 

中庭で車椅子の親父と伊吹が寄り添い 庭を彩る花々に笑みを溢す

 

その場面が印象に残り 温かい様子に心引かれたと 少しずつ描いていたという。

 

「凄い…綺麗!!」

 

伊吹は頬を紅潮させ額を親父の傍に行く。二人のその笑顔は描かれたそれのままで

 

「喜んでくれて良かった…」

 

ホッとした顔の***と目を合わせれば きっと俺までも。

 

「…大した女だよお前は。」

 

 

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