白金の花嫁:21 (怪盗X:Long:柳瀬流輝) | ANOTHER DAYS

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「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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『深入りするなって言うのに聞きやしねー。芸術バカにも程があるっつーか…』

 

動画は閉店後の黒狐で撮られていた。お客さんの姿も賑わう声もない。

 

テーブルにはビール瓶とグラスに小鉢がいくつか…それを前に


『痛い目に合わなきゃ分かんねーのかアイツは。』


ため息をつく流輝さんの顔がほんのりと赤いのが分かる。目もどこかうつろで


お酒にそこまで強くない彼なのに…相当飲んでいるのが伝わった。

 

「…。」


気まずいまま別れたあの夜 流輝さんこんな風だったんだ…。


その姿を見ることは正直キツかった。だって明らかに私への不満を口にするだろう


「あの…」


二人は私達の現状を知っているのに 動画を見せようとわざわざ?


…しんどいだけなのに。


「良いから見てなよ。」


反省しなさいってことかな…。


乗り気になれないまま 画面に目を戻した。

 

『柳瀬が愚痴り始めたし。○○と喧嘩でもしたのかよ。』

 

『喧嘩ね…ケンカ…』

 

流輝さんが隣に座る蛭川さんに曖昧に答えながら ネクタイを緩める。そしてハァと大きく息を吐いて

 

『飲み過ぎた…拓斗、膝枕!』

 

『は?…おい!なに勝手に人にもたれ掛かってんだよ!』

 

『お前の髪いつもサラサラだな…いいこ いいこ。』

 

『ナデナデすんなし、酔っ払い!キモい!』

 

「フフ…」

 

蛭川さんとのやり取りには笑ってしまったけれど。

 

「ここからだよ。」

 

「え…」

 

『このまま流輝をベロベロにさせれば○○との馴れ初めとか話しそうじゃねぇ?』

 

『きゃはっ!聞いてみたい!いいかも!』

 

健至さんと更科さんが声だけの登場をすれば

 

『柳瀬大先生!!飲んで飲んで!』

 

流輝さんのグラスにビールが注がれ…流輝さんは勧められるがまま飲み 次第に楽しそうに笑い始めて。

 

『リキくん、***ちゃんの最初の印象ってどうだったの?』

 

「わ…」

 

タブレットを持つ二人はニヤニヤしている。気まずいながらも私は画面の彼の言葉を待つ…

 

『アイツの最初の印象…』

 

流輝さんは視線を斜め上に向け一瞬考える素振りをした。パッと視線がこちらに戻れば

 

『色気なしのカタブツ。』

 

「う…」

 

『自意識過剰で口答えが過ぎる生意気な女。』

 

「…うう…」

 

『変に真面目で頭が固い。めんどくせー女って印象。』

 

「散々…」

 

迷うことなく答えて。そうだよねと言葉の刃がグサグサと胸に刺さる。


間違えはないけれど 想像していたとおりだけど


あぁ…しんどい…。

 

思わずガクンと首を垂れた。でも

 

『アイツにはウソがない。自分に正直だ。それが…その純粋さが最初は怖くてな。』


「え?」

 

思いもよらない言葉にハッと顔を上げる。彼は少しだけ笑いながら言った。


ひん曲がった考えしかできない俺にまっすぐに気持ちをぶつけてきて…ウソがない分 心地良くはあるんだけどな。偽りの自分を見破られそうで怖かったな。』


そんな風に感じていたの…

 

知ることのなかった彼の心の中


出会った頃の流輝さんのさまざまな表情が脳裏に浮かぶ


そういえば…よくジッと私を見てたよね…。

 

『俺のように計算や打算ではなく 誰に対しても偏見のない優しさを与える。結果 人見知りしまくる伊吹にも あの気難しい親父にまでも受け入れられて…』

 

頬杖を付きながら笑みを浮かべている彼に

 

『一見か弱くて健気に見えるが 大した女だと思った。』

 

そんなふうに思っていてくれたのって。


「…っ…」


急に鼻の奥がツーンと痛くなった。 誤魔化そうと鼻をすすった


さっきまでの空虚な心が彼の言葉ひとつで満たされていく。


『ねぇ***ちゃんのこと、どのタイミングで好きになったの?』

 

『あぁ?…気づいたら好きになってたなんて、そんな凡人みたいな事を俺が言うわけねーだろ!』

 

『言ったし。』


『バカ…』


笑い声と冷やかしに盛り上がる画面の向こう


流輝さん…。


私は笑いながらも こみ上げる何かを堪えるので必死だった。


『と言ってもアイツには不満が大有りだ。』


『え、なになに?』


なに…?

 

『もっと俺を頼って良いのにアイツは一人で頑張り過ぎる。』


ビールの入ったグラスをユラユラと揺らしながら小さくため息をつく

 

『今回もわけの分からねー探偵から情報を得ようと一人で行動してる。俺以外の男に興味を持つこと自体頭に来てるのに…。この俺だぞ?なんだって受け入れるよ もう勘弁しろってくらい甘えれば良いのにホントアイツは…。 』

 

ああ…

 

『心配でしょうがねー…』

 

切なげな表情に胸が痛くて。

 

彼は私が思っていた以上に私を想ってくれていた。それを感じ 胸がいっぱいになる。

 

『流輝が女に振り回されるなんてな。』

 

健至さんの言葉に流輝さんがクスッと笑う。そして言ってくれた言葉は

 

『大切な存在だ。かけがえないよ。』

 

「…流輝さん…」

 

堪えていた感情を抑えきれなかった。優しく微笑む彼に涙が落ちた。それでも瞬きすることさえ惜しくて


『早く『白金の花嫁』を手にしたい。アイツを一生傍に置いておけるからな。』


「…ハァ…」


彼の微笑みをただ瞳に映していた。




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