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「遅いよ、いっちゃん。」
理人が一護を睨んだ。
「すっごい待ったよねぇ?ハルくん。」
どういうわけか理人はいつもオレを仲間にしようとする。
「ハハ、まぁね…。」
まぁ別にオレは一護達を待っていたわけじゃないんだけどと思いながら悴んだ手の平に息を吐いた。
結局オレ達が手を合わせることができたのは0時を20分も過ぎた頃で。
ドヤドヤと人並み外れ何軒かある露店を見終わる。
そして境内の端っこの方で小さく燃やされている焚火に手を当て 暖を取り始めた時にはもう1時を過ぎようとしていた。
「忙しいんだよ、俺は。」
一護と***はそんな時間になってやっと来た。
境内はまだまだ人が溢れていたけれど随分と行列は収まりすんなりと手を合わせたようだ。
「リュウ兄は?」
「写真屋のオヤジに連れて行かれた。」
リュウ兄は商店街じゃ結構期待の星だからオヤジたちにも可愛がられる。
愛想良く答えるからどこかに連れ去られてしまった。
「***ちゃんは?」
「売店。なんかお守り買うとか買わないとか。」
この時間になると神様よりも今は販売所のほうが人気がある。
ちょうど中間どころで並んでいる***を見つけその姿を見ながら…
「…あいつ、キレイになったな。」
オレはポツリ言ってしまう。
「うん。」
剛史も静かに頷いた。
・・・・
一年ぶりの幼なじみは記憶の中の彼女と違った。
女というものは少し見ないだけでこうも変わるものなのか…
「なんか大人っぽくなったよね…。」
嬉しそうに目を細める理人。リュウ兄も再会した瞬間に言っていたっけ。
自分をキレイに見せようと努力するからなのか
それとも知らず知らずのうちに自分をキレイに見せる術を知っていくのか。
まぁどちらにしても***はとても良い女になっていたのは間違えなかった。
「ちょっと痩せたな。」
「あぁ~、うん。そうかも。」
そう答えて彼女を見つめる一護は オレ達だけの時のこいつとはまた違う。
だってそんなに優しくてそんなに愛情溢れた視線は***にだけ向けられるモノだ。
遠くの地からでもお互いへの愛情は変わらなかった。
再会を果たした二人はどんなに嬉しいだろうと 他人事ながらオレは心が温かくなったりする。
「あれ…。ハルくん、***ちゃん髪結んでたのに、なんで今解いてんの。」
「…それをオレに聞くか?」
随分とここに来るのが遅くなった二人の事情…なんて
「あ~寒。」
理人の遠慮ない言葉に一護が聞こえないふりをしたのが答えみたいなもんで。
「それよか、いっちゃん!」
理人は思い出したかのように目を見開きその続きを発しようとしたけど
「沙希が来てるぞ。」
先に言ったのは剛史だった。
「はぁ?」
一護はあまりにも意外な言葉に眉間にしわを寄せ
「何しに。」
「知らねぇよ。というか男と来てる。」
「は?男?」
そうそう、男だ男。
男と肩を並べて参っていたって 沙希の様子を一護に話すわけで。それに対して一護は
「へぇ~…男居たんだ。」
なんだか呆れたような顔をして笑ったわけで。
・・・・
沙希は男と来ていた。
境内へ続く列をはみ出てまで男の顔を見に行こうとは思わないが
チラチラと様子を見ていると随分と仲は良さそう…ここ何日かの付き合いではないのは感じた。
「…彼氏いたんだね。」
理人の呟きにオレ達首を傾げる。
「いたっっていうか…できたんじゃないの?だってあいつ一護に惚れてたじゃん。」
剛史はそう言ったけれど一護は
「俺とは何でもないから。っつか俺ハッキリ言ったし。」
そう言ってまた売店にいる***に目を向ける。
「クリスマスの夜に。会いに来たから…その気ないって話した。」
「あ、そうなんだ。」
ハッキリとした口調で答えた一護に オレも剛史も理人もそれ以上は聞かなかった。
だって こいつのこのサッパリとした横顔 見つめる先には愛おしい***…
こいつにとって今はどうでも良い話だろうから。
「そか…じゃぁもう関係ないんだね。」
「関係ねぇよ。」
「じゃ何しにここまで来たんだろうな。」
剛史はチラッとオレに視線を向けそう呟いたが
そうだよな、わざわざ吉祥寺に…って、あ…
「隠れハート?」
・・・・
境内の天井に隠れハートがあるっていう情報を香に話をした事があるという理人の記憶
「あ~、なるほど。」
それを男と見に来たのかと…勝手に解釈し勝手に納得し あっけらかんとするオレ達…だったんだけど
「ま。どうでもいいけど。」
一護がやっぱりそう言うから もう沙希の話はやめようと暗黙の了解を取るべく二人と目を合わせたわけだが
「あ。」
剛史の視線がオレの後ろで止まる。
振り向くと販売所に行く男に笑顔で手を振りながらこちらに向かってくる沙希…
「…あ…。」
寒いから焚火にでもあたっていろとでも言われたのか
彼女はオレ達を見て目を丸くし
「…こんばんは。」
「…どうも。」
一護を見て顔を赤らめた。
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