カーンッ!!!

 

 

 

 

 

貼られた弦のような緊迫感、そのぴりぴりとした独特な空気にまだ肌が慣れない。アマチュア10戦目、会場内に運命のゴングが鳴り響いた。

 

 

 

 

からだじゅうからドバドバと止めどなしにアドレナリンがでてくる。

 

 

 

高揚感という言葉では表しきれない…

 

もう"頭の針が完全に振り切って"しまっている。

 

 

 

 

 

 

この拳が一発でも当たれば、奇跡でもまぐれでもなんでもいいから当たってくれれば…

 

 

"夢への扉"がひらかれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

扉をこの手でこじ開けたかった、ずっと夢見て、憧れて、走り続けてきた。

 

 

 

神様でも仏様でも、もうなんでもいい。

 

 

 

 

 

頼むから…

 

 

 

 

 

 

 

 

お願いだから…

 

 

 

 

 

 

 

"一発ドカン"と当たってくれっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7月8日、オレはまたリングの上に立っていた。

 

 

前回の試合から1ヶ月後のことでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キックボクシングの『プロになるルート』はいくつかある。

 

 

 

 

①所属ジムの会長がプロと認めたら

 

 

②各団体が行うプロテストを受けて合格したら

 

 

 

そしてもう一つ…

 

③アマチュア大会Aリーグトーナメントに優勝したら

 

 

 

 

 

 

 

オレはいま、Aリーグトーナメント決勝、そう"夢の扉のど真ん中"に立っている。

 

 

あと1勝、あと1回でも勝てば…

 

 

夢にまでみた、"憧れのプロ格闘家"になれる。

 

 

 

 

 

 

少しだけキックボクシングとの出会いについて話させてください。ちょっとだけでいいから。

 

 

 

 

今から3年前、事業に失敗して100万円の借金を背負い、オレは人生のどん底に落ちていました。

 

いきつくところがなくなり、泣く泣く実家に帰ると、追い討ちをかけるように…

 

60歳になるお母さんが知らない男の人とお風呂に入っているという

 

『まま、素っ裸事件』が勃発しました( ̄□ ̄;)!!

 

 

 

もう何をしていいのか、まじでわけがわからなくなってしまったとき…

 

出会ったのがキックボクシングでした。

 

 

 

借金を返すために風呂なしボロアパートに住みながら日雇いで朝から晩まで働いて、

 

クソみたいな日常から目を背けるように酒を飲んだくれる毎日。

 

 

まじで頭がおかしくなりそうだった。その時…

 

たまたま日雇い労働の現場近くのコンビニに貼ってあったキックボクシングの張り紙。

 

それが"運命の始まり"でした。

 

 

 

それからオレはなにかにすがるのような思いで6年ぶりにジムに通い始めました。

 

実は、20歳のとき少しだけやっていたんです。

 

 

 

 

そしてプロの試合を見にいったとき、"スイッチ"が入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーンッッ!

 

 

試合が始まった瞬間から、

 

 

もう、言葉にならないくらいの、脳天から雷がバチバチに落ちたような衝撃っ!

 

 

 

 

「すげぇっ」て…

 

 

これがプロかって。

 

 

 

 

 

 

熱くこみ上げる感情と、そして自然と涙が頰をこぼれ落ちる感動。

 

 

 

 

 

 

生まれて初めて見る戦士たちの姿は…

 

 

命がけで戦うファイターたちの勇姿は…

 

 

どん底に落ちたオレの、ぐちゃぐちゃに絡み合った心の糸を…

 

 

これでもかと、"ブッタ切って"くれました。

 

 

 

 

 

オレは単純なのかもしれないけど、そのときプロになるって決意しました。

 

こんなバカなオレでも、メンタル崩壊しまくりの

 

存在価値のない鼻くそ以下なオレでも、変われることができるかもしれない。

 

"誰かに感動やパワーを与えられる"んじゃないのかなって。

 

 

 

 

 

 

 

そのときはもう26歳で。

 

 

今さら何やってんの?プロ目指すの?ウケるわ

 

 

なんてバカにされたり笑われたけど、オレは本気だった。

 

 

 

 

 

 

そして今にいたる。今回の試合にいたる。

 

 

 

 

前置きは長くなってしまったけど、キックボクシングとの出会いはそんな感じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその2年半後の、7月8日。

 

ラッキーなのかなんなのか…( ̄□ ̄;)!!笑

 

参加人数が少なかったことと不戦勝ということが重なり…

 

いきなり"決勝戦"から始まった今回の試合。

 

 

 

 

 

まじで腕なんて一本くらいくれてやるよっ!そんな気持ちで挑みました。

 

 

 

そりゃそうだもん、だってこの相手を倒せば…

 

Aリーグで優勝することができれば…

 

"3年間夢見たものが、現実になる"んだから。

 

 

 

 

オレを口だけっていった奴、夢見がちの勘違い野郎って思ってる奴等を、まじで見返してやりたかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合前、コンディションはいい感じだった。





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーンッ!!!

 

 

 

始まった。

 

 

 

 

 

 

 

まずは様子を見るために蹴りから攻めるべきだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、焦りすぎてしまっているのか、感情がまえに出すぎてしまっているのか…

 

 

 

大振りになってしまう、思いっきりスカる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあともパンチが当たらない。

 

 

それもそのはず。

 

 

 

 

パンチを当てるにはフェイント、

 

そしてキックから崩していかないと当たるはずがないのに、単発でパンチを打ってしまう。

 

 

オレはもう、完全に…

 

 

空回りしている。

 

 

 

 

 

 

(ぜってぇ、やってやる…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相手は動きからして、空手出身ということがわかっていた。

 

これぞ空手の精神で培った居合?というものなのか、

 

勢いあまった、オレの空回りしたような攻撃をしっかりと冷静に対処する相手。

 

そして徐々にオレの攻撃の打ち始め、打ち終わりを狙われる。

 

 

 

 

 

戦ってまじで肌で感じたこと。

 

それは、相手は"攻撃のタイミング"が完璧だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勢いで攻め込もうとしても…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食らったことのないような"顔面前蹴り"を吹っ飛ばしてくる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ま、まじかよ)

 

 

(なっなんなんだよ、これ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見たこともないスピードとパワーで、"凄まじい攻撃"が飛んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

パンチをもらうことはなかったが、

 

 

そのあとも顔面前蹴りを5発、そして首相撲からの膝蹴りを打ち込まれる…

 

 

技術の差、経験値、桁違いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、でも…

 

 

 

 

 

 

いくらやられたって、

 

 

どんなにボコられたって、

 

 

まじでこんなところでまじで諦められねぇんだって…

 

 

オレはあいつらを見返してやるためにも、自分のためにも、夢のためにも、こんなとこでくたばれねぇんだって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なめてんじゃねーぞ、まじで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もういくしかない、やるしかねぇっっっっっって!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まじで一発でもいいから当ててやる、このままじゃ絶対に負ける、

 

一発強い攻撃を、思いっきり、これでもかと振り抜いたパンチを当てにいくしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当たれ、当たれ、当てれ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頼むから当たってくれ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたっっっっって…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くレェェえええええええっっ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必死だった、どうにかして夢を掴みたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…

 

 

 

 

 

 

でも…

 

 

 

 

 

 

 

また、勝てなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんつーか、ほんとに何もできなかった。

 

練習してきたことや考えていたことが何もできていない。

 

 

 

 

まじでオレほんとに何も成長してないんじゃないのかな…

 

 

 

 

距離感やタイミング、冷静にならなきゃいけないってわかってるけど、

 

もう試合が始まると頭が真っ白になって訳がわからなくなってしまう。

 

そして、素人同様なぐちゃぐちゃな試合をしてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

もうなんつーか、きれいごとなんてどうでもいい。

 

オレがただ下手くそなだけ、練習不足なだけ、弱いだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかってるよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今のオレ、こんなダサいオレは、まじで大っ嫌いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンチが打ち合えない。

 

 

 

 

 

 

怖いのかな、オレ…

 

 

 

 

近い距離になると、パンチの打ち合いになると、前に突っ込んでもうぐっちゃぐちゃな試合になってしまう。

 

 

 

 

 

パンチを打つとき、足のスタンスが広くなってしまう。

 

そのため次の動作につなげられない。

 

 

 

 

前に突っ込みすぎて、横の移動ができてない。

 

もっと遠い距離から蹴ってキックから崩していかないと。

 

 

 

 

 

 

後から知ったことだけど、相手は極真空手の全日本チャンピオンだった。

 

でもさ、言い訳なんてしない。

 

 

オレが目指しているところ、憧れは、プロになるってことは、

 

こーゆー素晴らしい選手たちとちゃんと戦えるようにならなきゃいけないから。

 

戦っていただいて、本当にありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレはすごく恵まれていて、

 

元チャンピオンや現役チャンピオン。

 

 

本当にめちゃくちゃすごい人たちに教わっていて、

 

そしてセコンドにも入ってもらえてアドバイスももらえている。

 

感謝しかないです。本当に、毎日ありがとうございます。

 

 

 

 

そして応援をしてくれたり、声をかけてくれたりサポートしてくれている大切な人たちがたくさんいる。

 

 

 

 

 

オレは贅沢者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

実はオレは今回すごく反省していることがある。

 

それは一瞬でも、『自分ではない他の何かのせい』にしようとしてしまったこと。

 

弱い自分から目を背けるために、責任転換をしようとしてしまったんだ。

 

 

 

 

 

相手が強かったから、思い通りの練習ができなかったから。

 

こんなのただの言い訳に過ぎない。

 

 

 

うまくいかなかった結果を人のせいにして、

 

まるで子どものように他の何かに、誰かに擦りつけようとした。

 

こんなクソガキは話にならない。こんな奴は格闘家としても、いち大人としてもやっていけないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

オレはただの夢物語や憧れだけじゃなくて、

 

キックボクシングというツールから『人生における大切なことを学びたい』と真剣に思っている。

 

 

 

 

 

今目の前にある現状、現実は、"すべて自分という人間が作り出したエネルギーの結果"

 

 

 

交友関係はもちろん、仕事、人間関係、きている洋服から食べるものまで、

 

もうこれは"全部自分のエネルギーが作り出したもの、選択してきた積み重ね"が目の前にあるだけ。

 

 

 

 

 

世の中のすべてのことは『因果関係』で成り立っている。

 

 

 

だからキックボクシングも、人生も…

 

正しい原因を作れば、正しい結果が出る。

 

 

 

 

 

目指す方向、目標に向かって正しい考えと判断、うまくいかないならうまくいくように、

 

軌道修正して行動を起こし続ければ…

 

『正しい結果』は必ずでる。

 

 

 

 

 

 

 

1試合1試合重ねるたびに、たくさんのドラマがある。

 

ただの勝ち負けじゃなくて、自分のメンタルや考え方を改めて考え直す大切な機会をくれる。

 

大切な人、感謝しなきゃいけない人は誰なのか教えてくれる。

 

弱い自分を変えてくれるチャンスをくれる、新しい自分への道を切り開いてくれる。

 

大げさじゃないです、毎日学べることが本当にたくさんです。ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも負けっぱなしじゃいられないから…

 

 

 

 

 

 

人生負けっぱなしじゃいられないから…

 

 

 

 

 

次は勝ちます、頑張ります!

 

 

 

オレは、オレの人生を…

 

 

この手で造る!!!!!!

 

 

 

 

 

ぜってぇプロになる

 

 

 

 

 

 

あぁぁあぁぁあぁぁあ、まじで、頑張んぞ、オレ!!!!!!!

 

 

 

憧れる未来へおもいっきりダイブしようぜ、合言葉は超ウルトラスーパーミラクル、ハッピー"GOOO"だあああ!!!!!笑

 

 

 

 

オレの青春と夢の日々は、続くのでした…