2020年中国と開戦した日本は中国軍航空母艦による首都東京空襲により壊滅する。核兵器が使用され、東京は廃墟と化した。この戦いで、同盟国アメリカは参戦しなかった。日本は見捨てられたのだ。遥達防衛省技術開発本部の面々は核爆弾の直撃時に昭和元年にタイムスリップした。皆、中国、アメリカへの復讐に燃えていた。皆、家族を東京空襲で亡くしたのだ無理も無い話だった。
防衛省技術開発本部がタイムスリップしたのは帝国海軍海軍施設内だった。遥達と帝国海軍軍人が接触すると、たちまち海軍上層部は大騒ぎになった。開発本部長「鳴海 晃」と海軍の連合艦隊司令長官「加藤 寛治」、軍令部長「鈴木 貫太郎」とが会談を持ち、技術開発本部と海軍が協力する事となった。
技術開発本部は海軍内でJSDFと呼ばれる事となった。
又、遥と隼人は海軍に配属される事になった。
タイムスリップから3年、日本には変化が出始めていた。大規模な景気刺激策により好景気に湧いた。旧史の製糸業に加えて化学繊維業界が業績を延ばしている。日本のGDPは年10%位の成長ぶりだった。
開発本部のプロジェクトのひとつが45口径89式12.7cm高角砲だ。89式12.7cm高角砲は旧史では昭和7年2月6日に正式採用された高角砲だった。
この砲は後世に何故この砲を駆逐艦の主砲としなかったのか？という論議が出る程の砲だった。
何故なら、帝国海軍の駆逐艦の主砲は3年式12.7cm砲で、事実上対空射撃不能だった。それに比較してアメリカ軍は12.7cm両用砲を採用し、機動部隊の対空能力を大幅に向上させている。
日本軍も空母自身の対空射撃能力は高かったのだが、艦隊での対空能力は低いと言わざるをえなかった。もし、いや、新史では現実なのだが、この89式高角砲を駆逐艦の備砲にすれば、対空能力は格段向上する。
高角砲では対艦射撃はどうするのか？という質問があるかと思うが、高角砲は対艦射撃も可能だ。旧史でも10cm高角砲しか装備しない秋月級駆逐艦が対艦戦闘で戦果を挙げている。つまり、日本軍の駆逐艦の装砲はこの89式高角砲にすべきだった。JSDFの提案は以外と簡単に通った。大艦巨砲派の海軍軍人も進歩する航空機に驚異を持っていた。駆逐艦の主砲がどちらでも構わないし、対空射撃が出来るのなら、確かに理に叶っている。
89式12.7cm高角砲の開発は昭和4年から始まった。この開発には昭和4年からJSDFの高村篤人が参加した。
尚、この砲は旧史の砲に比べて随分修正されていた。
弾丸重力の軽減、これは半自動砲の弱点を克服するものだ。旧史の砲の弾丸はアメリカ軍の両用砲の弾丸に比べて若干重かった。理由は薬莢の重量が重かったのだ。その為、薬莢の重量を軽くし、弾丸重量を30kg迄軽量化した。給弾は人力で行うため、発射速度の向上及び発射速度の持続に貢献した。
又、砲身は40口径では無く、45口径とし、初速を大幅に向上させた。当然弾道性能も良く、射程も伸びた。
更に、旋回、俯角用電動機を20kwと旧史の倍にして追従速度性能を向上させた。他に、旧史では自動調整信管の開発に苦労し、砲は完成していたが、実用化するのに数年を要した。しかし、信管は電子式近接信管を採用した。そうVT信管だ。マジックヒューズが既にこの時代に完成していた。この時代にはすでにトランジスタラジオが誕生していた。もちろん、軍用に限りだか、電子装置の発展は凄まじい。民間には真空管式ラジオがかなり安価で市場に出回っていた。ラジオ放送ではJ-popが流れていた。
「高村さん大丈夫ですか？」
「ああ、寝てしまっていたか。」
「身体には気をつけてくださいね。今、高村さんが倒れたら開発が止まってしまうから。」
「おいおい、開発の方が大事なのかよ。」
「そんな!私はただ。」
「ごめん、ごめん。そんな意味じゃ無いんだ。ただ、ちょっと、すねてみたかったんだ。」
「もう、子供みたい。」
高村と話しているのは高村の率いる海軍憤進兵器開発課の同僚の杉浦綾香だ。彼女も平成の人間だ。もちろんJSDFの人間だ。
「ところで聞いた？遥が超有名になっているみたいよ。」
「ああ、俺も聞いた。パリコレデビューしたんだって。」
「それどころかすっかり、ヨーロッパ中の人気者だそうよ。」
「そうなのか？そこ迄有名人になったのか？せっかくだからサインをもらっておけば良かったかな。」
「もう、ミーハーですね。」
「だが、これは知っているか？遥は隼人の事が好きみたいだぞ。」
「それ、みんな知ってる、知らないのは本人同士だけみたいよ。」
「そうなのか？馬鹿だな～。あんなにお似合いなのに。隼人は朴念仁だからな。」
「本当～」
相づちを打ちながら綾香はは心の中で「あなたもよ」と突っ込んだ。そう、綾香は篤人が好きだった。だが、隼人同様、篤人も朴念仁だった。
本当、自衛隊の男の人って強くて男らしいと思ってたけど、女性には本当奥手な人ばかりよ。皆、女性への免疫が無さ過ぎる。せっかく、かっこいい人多いのに残念。
ここにも遥と同様に恋に悩む女性がいた。この二人の恋も実るのかどうか。。。
次々とプロジェクトを達成して行く彼らにも難問はある様だ。