西洋クラシック音楽が日本に入ってきたのは

 

明治維新以降のことですが、

 

その黎明期を築いた音楽家に

 

山田耕筰がいます。

 

「からたちの花」や「赤とんぼ」で有名な

 

作曲家ですが、

 

故あって

 

彼の自伝をはじめてじっくりと読んでみました。

 

この人は、

 

幼少から実に興味深い生き方をされていますが、

 

人格形成の時期に

 

家族や学校がいかに大きな影響を与えるのかを

 

あらためて思いました。

 

 

 

 

中で、彼がミッション系の中学に通っていたときの

 

エピソードが紹介されています。

 

少々長いですが、そのまま引用します。
 

 


日曜日は安息日として精神修養のみにあて、そのかわり月曜は、体育の日として、全校一日中、校庭でスポォツをやるという風だった。楽しい理想的な学校だった。
私はよほどのいたずらっ子であったらしく、相当、先生や先輩をてこずらしたらしい。冬になると、御影の酒造家の子弟たちが、毎日のように酒粕をもって来た。それを教室のストォブで焼いて、砂糖をつけてたべるのがうれしく、その日も焼き役にまわされ、誰にも見つからぬつもりで、ひそかに焼いては、級内に配給をつづけていた。が、運わるくも、一番意地の悪い宣教師に見つかってしまった。私はさっそく院長室へ呼ばれ、吉岡院長から、ひどく叱られた。もとよりキリスト教主義の学校で、しかも教室でそうしたことをするのを許されようはずはない。
いたずらだっただけに、またひどく純な所もあったらしく、慈父のような院長の眼を見ていると、無性にすまないという気におされ「今後一切酒の香りのするものは口にいたしません」と、並みだとともに固く誓って先生の許しを得た。
それから、およそ十日もたったある日。一日の仕事を終えて、寄宿舎の食堂に集り、院長を中心にしてテェブルをかこみ、当番の感謝の祈りが終ると、一同夕餉の箸をとり、いつものように院長の「さあ、いただきましょう」という声とともに、食事は開始された。私は食堂に入った瞬間から「よし、今日は院長をとっちめてやろう」と決意していたので、断乎として箸をとらなかった。
いたずら坊主の事とて、その晩も、院長の隣に据えられていた。院長は訝しそうに、覗きこまれ、
「君、身体でも悪いのか?」
と、やさしくきかれた。ここぞとばかりに私は、
「いいえ、身体はなんともありません。ですが、先生への誓いを破れませんので・・・」
と、やや切口上に言った。すると先生は、いきなり立ち上られ、一同に箸をおかせて、
「これは全く私が悪かった。どうか諸君赦してもらいたい。院長として、山田君に酒粕を口にする事を禁じておきながら、今こうして、諸君と一しょに箸をつけてしまった。さあお紋さん(賄のおばさん)この粕汁を全部捨てて下さい。そして今日は、罰として、私がみんなに御馳走しましょう」
と言われたのだ。
いうまでもなく、到底そのまま座についていられるものではない。院長の言葉の中程で、もう何も言えなくなり、院長の膝下に跪いて、私の不遜さを泣いて侘びた。
しかも院長は、私を責めるどころか、
「正しいことをやり抜くには、勇気がいりますねえ。今日は君に侘びなければならないのだ。さあ、もう泣かないで」
と、私を抱き起して下さるのだった。そして、新しい肉汁のできるまで、院長は一同とともに楽しくいろいろな有益な話をされた。
その時以来私は、どれほど自分が正しくとも、人に復讐してはならぬこと、裁きは人間同士がするものではなく、神の手によって、正しく行われることを悟った。そして正しさを守るためには、勇気のいることも合せて学ぶ事ができたのである。

山田耕筰「自伝 若き日の狂詩曲」(中央公論新社)P72-74
 

 

 

今やもうこんな先生はいないでしょうね。

 

「勇気」や「謙虚さ」や、あるいは「道理」や、

 

人として大切なことを

 

こういう大人から直接的に体感をもって学べたことが

 

山田耕筰という人間を、そして

 

有名な数多の音楽作品を創り出す

 

要因になったことを知るにつけ、

 

若い頃にどんな人と出逢うかということの重要性を

 

あらためて思うわけです。

 

 

 

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ちなみに、今日は淵野辺におりますが、

 

曲がりなりにも大学で教える立場にあることを考えると、

 

僕自身も少なからず学生たちの人生に

 

影響を与えることになるのだと痛感する次第。

 

人として恥ずかしくない生き方、

 

一番は「我に入らない生き方」を

 

強く目指したいと思うわけです。

 

 

 

 

 

歴史や人から学ぶこと多々。

 

今日も長丁場ですが、がんばります。

 

ありがとうございます。

 

 

 

 

 

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