タルコフスキー監督の不朽の名作「惑星ソラリス」
が好きで、これまで何度も繰り返し観ています。
先年ハリウッドでリメイクされた「ソラリス」 を
先日初めて観て、これはこれで興味深いものだと
感心しました。
タルコフスキー版にあまりに思い入れが強いので、
これまであえて無視しておりましたが・・・。
どちらかというと原作に忠実なのはタルコフスキー版でしょうか。
しかも独自の哲学的解釈を加えているので常に新しい発見がある。
一方でジェームズ・キャメロン&スティーブン・ソダーバーグ版は
タルコフスキーがあえて描かなかった細かいところを
より詳細に映像化しており、あわせて観ることでこれまた発見があります。
いま一度原作を読みたくなりました。
スタニスワフ・レム著(沼野充義訳)「ソラリス」(国書刊行会)
ソラリスが発見されたのは、私が生れるほとんど100年も前のことだ。この惑星は赤色と青色の2つの太陽のまわりを回っている。40年以上の間、一隻の宇宙船もこの惑星に近づかなかった。・・・(中略)・・・ソラリスの軌道は、太陽系の惑星の軌道と同じように、一定なのではないか、というのである。
(P27-28)
しばらくの間、人気があった(新聞が毎日熱心に書きたてて広めた)のは、ソラリス全体を覆って漂う海は巨大な脳で、人類の文明よりも数百万年も発展した段階にある、という見方だった。つまり、この海は「宇宙のヨーガ行者」とでも呼ぶべき賢者、全知の化身であって、もうとうの昔にあらゆる活動の空しさを悟り、それゆえ人間に対しても完全な沈黙を保っているというのである。
(P38-39)
5日目、つまり着陸の瞬間から数えて21日目に、カルッチとフェヒネルという二人の研究者が(前者は放射線学者、後者は物理学者だった)、小型の二人乗りアエロモビールで海上の探検飛行を行った。・・・(中略)・・・しかし、二人は6時間経ってももどって来なかった。
(P64)
それは足裏の側から見た、むき出しの足の指だったのだ。指の卵型のふくらみは互いから少し離れていた。そして、死体を覆う布のしわくちゃになった端の下に体を平らにして寝ていたのは、黒人の女だった。・・・(中略)・・・すると、その時、信じがたいことが起こった。零下20度の寒気にさらされていた体が生気を取り戻し、身動きをしたのだ。まるで眠っている犬が足をつかまれたときのように、彼女は足を引いた。
(P77)
これはまったく別のハリーだった。昔のハリーならば、しつこくつきまとうことはなかった。絶対に。
(P95)
なんていうことだ、ハリーがペルヴィスを知っているわけがない。私から彼の話を聞いたなどということもありえない。それにはまったく疑問の余地はなかった。
(P100)
この辺りまでは前段。「小アポクリファ」と題する章からいよいよ
ソラリスの秘密に・・・。
彼(スナウト)はあいかわらず皮が剥け落ちてくる額に手を触れた。そこには、形成されたばかりの表皮の薔薇色の斑点が現れている。私は呆然とそれを見つめた。どうしていままで、スナウトとサルトリウスの日焼けなるものに疑念を抱かなかったのだろう?私はずっとそれは太陽のせいだと思い込んでいたのだが、そもそもソラリスで日光浴をする者など、いるわけがない・・・
(P109-110)
「正常な人間とはなんだろう?ひどいこと、下劣なことを一度もしたことがない人間だろうか?その通り。しかし、下劣なことを一度も考えたことがないなんて人間がいるだろうか?いや、ひょっとしたら考えたことさえなくても、10年か30年か前にその人間のうちにひそむ何かが勝手に考え、湧き出てきたことくらい、あるんじゃないかな。人間本人のほうはそれから身を守り、忘れてしまい、自分がそれを実行に移さないとわかっているので、それをもう恐れることもない―そんなことが。さて、今度はこんなことを想像してみてほしい。あるとき突然、他の人たちの真っただ中で、昼日中にそれが実体化して肉を備えた姿となって現れ、きみにまとわりつき、それを叩き潰そうとしてもどうにも叩き潰せない―そうなったら、どうだろう?それはどんあんものだ?」
私は沈黙していた。
「ステーションさ」と、彼(スナウト)は低い声で言った。「それがつまりソラリスの宇宙ステーションなんだ」
(P117-118)
ソラリスというのは、人間のもついわゆる「原罪」というものを
実体化する生命体だということでしょう。
そして、過去の後悔や「罪なるもの」と向き合わせることで、
「良心」を呼び覚ます。
「ソラリス」こそが「良心そのもの」なのでしょう。
ということは、「ソラリス」とは自身の内奥にある
「本当の自分自身」といっていいのかも。
つまり、"ZERO"ということです。
なるほど、昔から「ソラリス」に惹かれる理由が
再確認できました。
長くなるので、考察の続きはまた別の日に・・・。
が好きで、これまで何度も繰り返し観ています。
先年ハリウッドでリメイクされた「ソラリス」 を
先日初めて観て、これはこれで興味深いものだと
感心しました。
タルコフスキー版にあまりに思い入れが強いので、
これまであえて無視しておりましたが・・・。
どちらかというと原作に忠実なのはタルコフスキー版でしょうか。
しかも独自の哲学的解釈を加えているので常に新しい発見がある。
一方でジェームズ・キャメロン&スティーブン・ソダーバーグ版は
タルコフスキーがあえて描かなかった細かいところを
より詳細に映像化しており、あわせて観ることでこれまた発見があります。
いま一度原作を読みたくなりました。
スタニスワフ・レム著(沼野充義訳)「ソラリス」(国書刊行会)
ソラリスが発見されたのは、私が生れるほとんど100年も前のことだ。この惑星は赤色と青色の2つの太陽のまわりを回っている。40年以上の間、一隻の宇宙船もこの惑星に近づかなかった。・・・(中略)・・・ソラリスの軌道は、太陽系の惑星の軌道と同じように、一定なのではないか、というのである。
(P27-28)
しばらくの間、人気があった(新聞が毎日熱心に書きたてて広めた)のは、ソラリス全体を覆って漂う海は巨大な脳で、人類の文明よりも数百万年も発展した段階にある、という見方だった。つまり、この海は「宇宙のヨーガ行者」とでも呼ぶべき賢者、全知の化身であって、もうとうの昔にあらゆる活動の空しさを悟り、それゆえ人間に対しても完全な沈黙を保っているというのである。
(P38-39)
5日目、つまり着陸の瞬間から数えて21日目に、カルッチとフェヒネルという二人の研究者が(前者は放射線学者、後者は物理学者だった)、小型の二人乗りアエロモビールで海上の探検飛行を行った。・・・(中略)・・・しかし、二人は6時間経ってももどって来なかった。
(P64)
それは足裏の側から見た、むき出しの足の指だったのだ。指の卵型のふくらみは互いから少し離れていた。そして、死体を覆う布のしわくちゃになった端の下に体を平らにして寝ていたのは、黒人の女だった。・・・(中略)・・・すると、その時、信じがたいことが起こった。零下20度の寒気にさらされていた体が生気を取り戻し、身動きをしたのだ。まるで眠っている犬が足をつかまれたときのように、彼女は足を引いた。
(P77)
これはまったく別のハリーだった。昔のハリーならば、しつこくつきまとうことはなかった。絶対に。
(P95)
なんていうことだ、ハリーがペルヴィスを知っているわけがない。私から彼の話を聞いたなどということもありえない。それにはまったく疑問の余地はなかった。
(P100)
この辺りまでは前段。「小アポクリファ」と題する章からいよいよ
ソラリスの秘密に・・・。
彼(スナウト)はあいかわらず皮が剥け落ちてくる額に手を触れた。そこには、形成されたばかりの表皮の薔薇色の斑点が現れている。私は呆然とそれを見つめた。どうしていままで、スナウトとサルトリウスの日焼けなるものに疑念を抱かなかったのだろう?私はずっとそれは太陽のせいだと思い込んでいたのだが、そもそもソラリスで日光浴をする者など、いるわけがない・・・
(P109-110)
「正常な人間とはなんだろう?ひどいこと、下劣なことを一度もしたことがない人間だろうか?その通り。しかし、下劣なことを一度も考えたことがないなんて人間がいるだろうか?いや、ひょっとしたら考えたことさえなくても、10年か30年か前にその人間のうちにひそむ何かが勝手に考え、湧き出てきたことくらい、あるんじゃないかな。人間本人のほうはそれから身を守り、忘れてしまい、自分がそれを実行に移さないとわかっているので、それをもう恐れることもない―そんなことが。さて、今度はこんなことを想像してみてほしい。あるとき突然、他の人たちの真っただ中で、昼日中にそれが実体化して肉を備えた姿となって現れ、きみにまとわりつき、それを叩き潰そうとしてもどうにも叩き潰せない―そうなったら、どうだろう?それはどんあんものだ?」
私は沈黙していた。
「ステーションさ」と、彼(スナウト)は低い声で言った。「それがつまりソラリスの宇宙ステーションなんだ」
(P117-118)
ソラリスというのは、人間のもついわゆる「原罪」というものを
実体化する生命体だということでしょう。
そして、過去の後悔や「罪なるもの」と向き合わせることで、
「良心」を呼び覚ます。
「ソラリス」こそが「良心そのもの」なのでしょう。
ということは、「ソラリス」とは自身の内奥にある
「本当の自分自身」といっていいのかも。
つまり、"ZERO"ということです。
なるほど、昔から「ソラリス」に惹かれる理由が
再確認できました。
長くなるので、考察の続きはまた別の日に・・・。
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