(承前)
米軍普天間飛行場移設問題に関する提言
http://www9.ocn.ne.jp/~tuto-ko/hutenmateigen.htm
4、在日米軍と在沖海兵隊の役割
日本の安全と極東の平和維持に在日米軍が寄与していることは論をまたないが、米海兵隊の役割とあり方を考えると、沖縄に駐留する必然性はなく、普天間飛行場の代替施設を辺野古に建設しなければならないという主張も成り立たない。最近、地元紙は、沖縄が本土に復帰した直後、米国は沖縄を含む太平洋地域から海兵隊の撤退を検討していたことを報道している。
したがって、日米両政府は、在日米軍、特に在沖海兵隊の役割とあり方を再検証し、沖縄の基地負担を早急に見直すべきである。
日米安保条約第6条には、「日本国の安全に寄与し、ならびに極東における国際の平和および安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍および海軍が日本において基地を使用することを許される」と記されており、日本の安全と極東の平和および安全に寄与するために、米軍は日本での基地使用が許されている。
そして現在は、三沢空軍基地、横田基地、厚木基地、横須賀海軍基地、岩国基地、佐世保基地および嘉手納基地、普天間飛行場などに空軍、海軍、陸軍、海兵隊の四軍が駐留している。加えて第7艦隊があり、その圧倒的な軍事力は、抑止力として日本の安定、極東の平和維持に寄与していることは論をまたない。しかし、沖縄の海兵隊やオスプレイだけを取り上げて抑止力という論理には無理がある。
在沖海兵隊の役割とは何であろうか。普天間飛行場の移設に関し、海兵隊は抑止力として、沖縄に駐留させなければいけないと政府は説明してきた。しかし、海兵隊の役割は、海軍の艦船に乗って戦闘地域に近づき、一気に砂浜から陸地めがけて駆け上がる強襲揚陸作戦を主とする部隊である。近年は、テロなど小規模紛争や災害救援活動などに対処する戦略へと役割が変化してきている。
沖縄の海兵隊の定数は、1万8千人とされているが、常時沖縄に駐留する海兵隊の数は数千人程度といわれている。海兵隊は、沖縄を訓練場として使い、ハワイ、グアム、フィリピン、タイ、オーストラリアなど、アジア太平洋地域を移動しながら訓練している。有事の事態となれば、緊急招集して危機に対応するが、在沖海兵隊を、固定的に抑止機能を持つ部隊として位置付けることは実態とかけ離れている。海兵隊輸送の強襲揚陸艦は佐世保にある。したがって、抑止力のために沖縄には海兵隊が必要で、そのために辺野古に新基地を建設しなければならないという主張は、全く説得力がないと言わざるを得ない。
去る11月8日、9日の沖縄の地元紙は、在沖海兵隊の問題に関する衝撃的な事実を報道した。1972年10月、米国は沖縄を含む太平洋地域からの海兵隊の撤退を検討していたというのである。
報道によると、米国は当時、ベトナム戦争への巨額な戦費の支出で財政負担に苦しみ、基地機能の見直しを進めていた。その一環として、海兵隊の撤退も検討されたとのこと。にもかかわらず、日本政府が海兵隊の駐留維持を米側に求めたため、在沖米軍基地を大幅に縮小する機会が失われ、その後の防衛費の分担を迫られる契機にもなったという。このことは、沖縄国際大学の野添文彬講師がオーストラリア公文書から発見した資料によって明らかになった。
野添講師が発見した資料には、日本側が海兵隊の役割など実態論を踏まえず、一方的に抑止力を期待したことで、米側は駐留を維持する方向に舵を切った過程が鮮明に記録されている。そのことは後に、米軍の駐留経費の負担などを日本側に求めるテコとして米国が利用していくことにつながる。
5、不平等な日米地位協定
沖縄では米軍基地がある故に米兵らによる事件・事故が後を絶たず、県民の人権や平和な生活が常に脅かされている。たびたび問題となるのが、米軍側を優遇した日米地位協定の存在である。米国がどのような主張をしようとも、国民の人権や生活を脅かすような米軍の運用は改めるべきである。そのためにも日本は主権国家として、日米地位協定の抜本的改定を米国と交渉すべきである。
普天間飛行場の返還が検討されるきっかけになったのは、1995年に発生した米海兵隊による「少女暴行事件」だった。当時、米側が先に容疑者の米兵3人の身柄を拘束。沖縄県警が容疑者の身柄の引き渡しを要求したものの、日米地位協定を盾に拒否され、県民の怒りが爆発した。
米軍基地が集中している沖縄では、米兵らによる事件・事故が多発している。そのたびに問題となるのが日米地位協定の存在だ。日米地位協定は、米軍側に治外法権的な権利を認めており、常に県民の生活と人権が脅かされている。
このため、沖縄県をはじめ、公明党沖縄県本部や県内の各種団体が、日米地位協定の改定を何度も求めているにもかかわらず、日本政府は米軍側に裁量権がある形での「運用改善」に終始するのみで、一度も改定に踏み切ったことがない。こうした県民の命を軽視するかのような日米両政府の対応に、県民は怒り、そのマグマが今、頂点に達しているのである。
日米地位協定と共に米軍の運用を過度に認めた砂川判決は、50年以上が経過した今日なお、大きな影を落としている。
1959年の砂川判決で、最高裁判所は、一審での米軍は憲法違反という伊達判決を覆し、在日米軍は合憲、米軍の運用については司法審査になじまない「第三者行為論」とした。それにより、米軍の運用に関する裁判で司法は判断を回避するようになった。この影響は今日の爆音訴訟が如実に物語っている。爆音被害や被害補償は認めるものの、爆音発生の原因である飛行差し止めについて司法は判断しない。
沖縄では今も、米軍による人命にも及びかねない危険な訓練が日常的に行われている。主権国家として、国民の命が危険にさらされている状況を放置すべきではない。そのためにも、米軍機の危険な運用を見直し、日米地位協定の改定を求めて積極的に米側に働き掛けるべきである。
6、懸念される辺野古の永久固定化
辺野古は、かつて沖縄が米国施政権下の1966年に、米海軍により辺野古新基地建設調査報告書と設計図が作成されたこともあり、以前から米軍の基地建設が検討されていた。普天間の危険性除去に名を借りた移設計画とすることで、移設費用を含めて日本側に負担させる狙いであると言われている。政府の言う「危険性の除去」とは、住民のためではなく、事故が起これば基地の運用に支障が出る危険性を除去するためのものではないかという指摘も県民の中にはあることを記しておきたい。
森本敏元防衛相の著書の中で触れられているように、辺野古に新基地が建設されれば、今も傍若無人に沖縄の空を飛び回る24機のオスプレイが、100機に拡大され、県民の目の届かない場所で基地機能が強化されていくのではないかと懸念されている。
このまま普天間の辺野古移設が進められれば、今まで以上の運用、訓練により、基地被害は増え、やんばるの自然は徹底的に破壊されてしまうことは、これまでの米軍の運用を見れば明らかである。まさに辺野古移設は、沖縄を軍事要塞化する契機となってしまうのではないか。
7、未来への展望――軍事拠点から平和交流拠点としての沖縄へ
ここまで、在沖米軍基地の歴史的背景、過重な基地負担、そして、その解決方法について、わが公明党沖縄県本部としての、主張、提言を申し上げてきた。沖縄県民は、基地の島としての沖縄でなく、平和の島・沖縄として21世紀を生きていきたいのだ。
今や、沖縄の地理的優位性という言葉は、軍事的側面での意義ではなく、むしろ、アジアの十字路として、わが国の平和の創造に貢献できる地理的環境として評価されている。沖縄の持つ自然や歴史と文化、ホスピタリティ、また経済交流や環境対策への取り組みなどは、アジア諸国からも注目されており、わが国との信頼関係を醸成する場になり得る。沖縄をアジア太平洋地域における我が国の平和外交拠点として積極的に位置づける外交戦略の構築を求めるものである。
結びに、知事意見は「不承認」を求める
公明党沖縄県本部は、普天間飛行場は「県外移設」を追求すべきであると、あらためて訴えるものである。2030年の沖縄の目指すべき将来像を描いた沖縄21世紀ビジョンには、基地問題がなくなり、平和で豊かに暮らせる沖縄の姿が示されている。県本部として、この21世紀ビジョンの実現に仲井眞知事と共に全力を挙げて取り組んでいく決意である。
仲井眞知事におかれては、「辺野古移設案の実現は事実上不可能。県外を探した方が早い」というこれまでの主張を貫徹し、政府から求められている「知事意見」については「不承認」とするよう求める。
後世の歴史に誇れるようなご判断を期待し、公明党沖縄県本部の提言とする。