モニッシュ・パブライの本に出てきたので読んでみた。すると、著者のガイ・スピアがまさに自分自身であるような気がしてきたのでここに記しておく。

 

ガイは、ハーバード大MBAの超エリートだ。しかし、卒業後決して評判の芳しくない投資銀行に入ってしまうことで人生が暗転する。そこでは、会社の利益ばかりが優先される投資銀行のもっともえげつない面がおおっぴらに行われていた。これがガイの経歴に傷をつけ、その後のキャリアを大きく変える。

 

退職して放浪していたガイは、「一瞬で自分を変える法」の著者、アンソニー・ロビンズのセミナーに出会う。このセミナーに感銘を受け、また同時に尊敬するようになっていたウォーレン・バフェットを目指しファンドを立ち上げる。バフェットそのものになろうとしたのだ。やがてファンドが好成績を出し、さらにパブライと出会ってバフェットとのランチを65万ドルで買うことになる。

 

彼がバフェットに会って感じたのは、バフェットの人間力の高さだ。バフェットは、自分の地位や評判に関係なく、彼らを家族のように迎えてくれた。それができるのは、外部の声に惑わされず「内なるスコアカード」で自分を評価しているからだった。

 

ガイはそれを受けて、さらに自分の考えを変えていった。ファンドの成績が良いと、ブルームバーグを何台も導入したり、豪華なオフィスを構えたい誘惑に駆られる。しかし、長期投資にとってそれは雑音や余計なコストでしかない。元来、一つのことに集中できない発達障害を持っていた彼にとっては邪魔だった。

 

バフェットとのランチの後、彼はチューリッヒに移住することを決意する。バフェットがオマハに居を構えるように。そこでは、自分の仕事に集中するために余計なパソコンは置かず、必要以上の人と会わないし、ウォール街のような心を惑わす情報も入ってこない。それで目先の利益を逃すことになっても、長期投資家としては問題のないことなのである。

 

彼の話は自分にとって共感するところが多すぎるとも言える。バフェットそのものを目指そうとするほど、関心は自分の中に向くようになる。大切なのは、周囲の声に惑わされず、自分を信じることだ。そのために大切なのは、なにより心の平穏を保つことなのである。

 

自分も同じように金融サービスを行っている。この世界は、ともすれば目先の利益に拘泥して自分を見失ってしまうことが少なくないが、一方でサービスという観点で顧客が本当に求めているのは「安心」だったりする。人は「これをやっておけば大丈夫」とのお墨付きが欲しいのだ。

 

バリュー投資は、その安心を得るための投資手法に他ならない。確かに、バリバリの成長株にパフォーマンスでは劣るかもしれないが、割高故にやがて暴落する可能性を考えると、多少上がらなくても下がらないほうが精神安定上望ましい。精神を安定させ、投資を続けることさえできれば、年数%の利益であっても複利の力で資産は大きく伸びるのだ。

 

対顧客ということを考えても、自分は決してぶれてはいけない。もちろん、細かな手法に変遷はあるかもしれないが、目先の利益だけのために動いてはいけない。そして、それを実行するための環境を作り上げることが、自分の人生の目的なのかもしれない。

 

勘違いエリートが真のバリュー投資家になるまでの物語 

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