バフェットがグレアムと並んで称賛するフィリップ・フィッシャーの本。
グレアムが徹底したバリュー投資を推奨するのに対し、フィッシャーは成長株投資を提唱している。その理由は、バリュー株はせいぜい2倍くらいのリターンしか見込めないのに対し、成長株は時に数十倍ものリターンを生み出すからだ。
成長株を買うときは、高いPERは気にすべきではないという。うまく経営されている企業は、内部留保を再投資に回すことで、勝手に価値が増えていくというのが理由だ。これはごもっともで、金融理論にも適っている。
「いい会社」を見つけるために、この本では15のポイントが挙げられている。しかし、その内容は散らかっている印象を受ける。より有用なのは、「経営者の能力」と「周辺情報利用法」についてだ。
経営者の能力が高ければ、内部留保を生かして会社を成長させることができる。有能な経営者ならば、むやみに配当を上げることなく内部留保でより多くの利益を上げることができる。配当性向を一定にしているならば、自然と配当も上がってくる。
周辺情報利用法とは、企業の取引先や出入り業者、ライバル企業にインタビューして、その会社の強みや弱みを明らかにすることだ。企業に直接聞くよりも役にたつ情報が得られるというのは、感覚的にも理解できる。企業の経営者に直接聞く場合は、「あなたの会社がやっていることで、他の会社がまだやっていないことは何ですか?」と聞くこと、要は競争優位を明確にすることである。
企業分析で行ってるのは、結局MBAでやった3C分析に他ならない。読むほどに、自分がやっていないことは間違っていないと確認できる。
条件を満たす良い企業を見つけるのは容易ではないが、もし見つけたら一気に買うのではなく、時間をかけて買うべきである。資金には余裕を持ち、安くなった時点で買い増しを続けるのである。良い株はそうたくさんないので、フィッシャーは保有銘柄を数種類に限ることを提唱している。
フィッシャーのやり方は、自分で良い企業を見つけられることを前提としている。特に、彼がモトローラに執着したことからも分かるように、製造業の製品開発を重視していた。そのような得意分野があれば良いが、実際は市場から見過ごされているものを見つけるのはそう簡単ではないだろう。彼自身も晩年はうまくいかなかったらしい。
そうなると、より確実なのは、「分かる範囲で」良い銘柄を安く買うことである。確かに、単なるバリュー株では期待利回りは2倍が限度かもしれないが、成長力がありかつ割安な銘柄であれば、リスクを抑えつつリターンの可能性を無限大に伸ばすことができる。ここまでできて初めてバフェットと肩を並べることができるのだろう。
バリュー株と成長株では、結局見るところは同じである。企業の価値を重視し、過去ではなく未来を見ること。そして、多数派と同じことをしていては、決して儲からない。価値を理解しつつ、群衆の心理を読むことが必要だ。
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