人や社会は論理以外で動いていることも非常に多いと感じている。特に影響が大きいのが、人間の心理だ。論理的におかしくても、人間の心理の傾向によって説明できることもたくさんある。
論理についてはMBAで学んで多少自信がついたところであり、心理についての知識を身につけることで現象に対する理解はさらに深まると感じている。そこで、心理学の入り口として放送大学のテキスト「心理臨床の基礎」を読んでみて、気になった内容をまとめておくことにする。
■フロイトの精神性的発展段階理論
心理学といえば、まず出てくるのがフロイトである。彼は神経症の原因を幼児期の性的欲動によって説明できると考えた。幼児期における性的欲動(リビドー)が満たされないことにより、そこへの固着が生じて後の心理的特性を決めるというものである。
個人的な感想を言えば、一つの考え方としてはあると思うが、これで全てを説明するには無理があると思う。あるいは、説明の対象が広すぎてよく理解できていないということかもしれない。
■ユングの個性化理論
ユングはフロイトの考え方を基礎としつつも、青年期以降の変化により焦点を当てた。人生の初めから終わりまでを個性化(自己実現)に向けての継続的な変容の過程であると見たのである。特に、35~40歳までを「人生の正午」と呼び、人生の重要な転換点としている。人生の前半は子孫を生み、養い育てる「自然目的」のために捧げるのに対し、後半は自己実現のための「文化目的」に移行するという。
ここでいう「人生の正午」が、日本で言う厄年に当たるのは非常に興味深い。
■人の根源的願望
そもそも、人は遺伝子に根源的願望が組み込まれているという考え方もある。列挙すると以下のようなものである。
1. 狭義の自然選択の原理
<行動>生殖を完遂するまで生きのびるのに有利な行動
<願望>「医食住」願望
2. 性選択の原理
<行動>生殖に有利な相手と配偶・生殖するのに有利な行動
<願望>「配偶」願望
3. 血縁選択の原理
<行動>血縁者をとおして次世代に自分の遺伝子を複写するのに有利な行動
<願望>「家族・血縁の絆」願望
4. 群れ内選択の原理
<行動>群れて医くるのに有利な行動
<願望>「集団帰属の絆」願望
5. 「生きがいのある物語」選択の原理
<行動>辛く苦しくとも、生きがいを見出していく抜く行動
<願望>「生きがいのある物語」願望
これらは非常に納得性が高い。人の行動がどれに紐付いているか観察すると、案外単純なんだと思ってしまうこともある。
■学習理論・認知理論
「パブロフの犬」に代表されるように、人は学習によって条件付けされる。感情もホルモン分泌によるものだとすると、不快な出来事は不快な感情に条件付けされる可能性が高い。
また、ポジティブあるいはネガティブのものと結び付くことであることに対する認知も同様に変化する。「影響力の武器」では、これが好感度の高い役者がCMに使われやすい理由だとしていた。
■意識と無意識
フロイトにしろユングにしろ、人の精神には意識と無意識があるとしている。そして、意識が外部から刺激を受けることで、無意識内の「コンプレックス」(心的複合体)が活動することで感情が生まれるとした。ちなみに、一般的に言われるコンプレックスは「劣等感コンプレックス」のことを指す。
コンプレックスが人によって異なるため、同じ刺激を受けても生まれる感情が異なってくる。これが他人とのすれ違いが起きる原因になっていると考える。人間関係においてこのことは認識しておく必要があるだろう。
■ABC(DE)理論
認知行動療法に、ABCアプローチというものがある。A(Activating events)は感情や行動の原因となる実際の出来事を指す。C(Consequence)は起こる感情や行動のことである。人はCの原因はAにあると考えてしまいがちだが、実は本当に影響しているのはB(Belief)である。要は「思い込み」や「価値観」である。AがBに合わない場合、不快な感情としてCが生まれるのである。
上記の状態から解放されるには、Bが何なのかを明らかにすることが重要である。これを論駁(Disputing)と言い、繰り返すことでやがてEffective philosophyにたどり着くということである。
社会生活を送る上で重要なのは、自分にも相手にもこのようなメカニズムがあることを理解し、問題が生じそうになったらまず自分の状態を冷静に観察し、その上で相手の心理を理解することだ。これを引き延ばした先にカウンセリングがあるのだろう。
自分の心の平穏のため、ビジネスをうまく運ぶため、そして目の前の人間を幸せにするために活用していきたい。
論理についてはMBAで学んで多少自信がついたところであり、心理についての知識を身につけることで現象に対する理解はさらに深まると感じている。そこで、心理学の入り口として放送大学のテキスト「心理臨床の基礎」を読んでみて、気になった内容をまとめておくことにする。
■フロイトの精神性的発展段階理論
心理学といえば、まず出てくるのがフロイトである。彼は神経症の原因を幼児期の性的欲動によって説明できると考えた。幼児期における性的欲動(リビドー)が満たされないことにより、そこへの固着が生じて後の心理的特性を決めるというものである。
個人的な感想を言えば、一つの考え方としてはあると思うが、これで全てを説明するには無理があると思う。あるいは、説明の対象が広すぎてよく理解できていないということかもしれない。
■ユングの個性化理論
ユングはフロイトの考え方を基礎としつつも、青年期以降の変化により焦点を当てた。人生の初めから終わりまでを個性化(自己実現)に向けての継続的な変容の過程であると見たのである。特に、35~40歳までを「人生の正午」と呼び、人生の重要な転換点としている。人生の前半は子孫を生み、養い育てる「自然目的」のために捧げるのに対し、後半は自己実現のための「文化目的」に移行するという。
ここでいう「人生の正午」が、日本で言う厄年に当たるのは非常に興味深い。
■人の根源的願望
そもそも、人は遺伝子に根源的願望が組み込まれているという考え方もある。列挙すると以下のようなものである。
1. 狭義の自然選択の原理
<行動>生殖を完遂するまで生きのびるのに有利な行動
<願望>「医食住」願望
2. 性選択の原理
<行動>生殖に有利な相手と配偶・生殖するのに有利な行動
<願望>「配偶」願望
3. 血縁選択の原理
<行動>血縁者をとおして次世代に自分の遺伝子を複写するのに有利な行動
<願望>「家族・血縁の絆」願望
4. 群れ内選択の原理
<行動>群れて医くるのに有利な行動
<願望>「集団帰属の絆」願望
5. 「生きがいのある物語」選択の原理
<行動>辛く苦しくとも、生きがいを見出していく抜く行動
<願望>「生きがいのある物語」願望
これらは非常に納得性が高い。人の行動がどれに紐付いているか観察すると、案外単純なんだと思ってしまうこともある。
■学習理論・認知理論
「パブロフの犬」に代表されるように、人は学習によって条件付けされる。感情もホルモン分泌によるものだとすると、不快な出来事は不快な感情に条件付けされる可能性が高い。
また、ポジティブあるいはネガティブのものと結び付くことであることに対する認知も同様に変化する。「影響力の武器」では、これが好感度の高い役者がCMに使われやすい理由だとしていた。
■意識と無意識
フロイトにしろユングにしろ、人の精神には意識と無意識があるとしている。そして、意識が外部から刺激を受けることで、無意識内の「コンプレックス」(心的複合体)が活動することで感情が生まれるとした。ちなみに、一般的に言われるコンプレックスは「劣等感コンプレックス」のことを指す。
コンプレックスが人によって異なるため、同じ刺激を受けても生まれる感情が異なってくる。これが他人とのすれ違いが起きる原因になっていると考える。人間関係においてこのことは認識しておく必要があるだろう。
■ABC(DE)理論
認知行動療法に、ABCアプローチというものがある。A(Activating events)は感情や行動の原因となる実際の出来事を指す。C(Consequence)は起こる感情や行動のことである。人はCの原因はAにあると考えてしまいがちだが、実は本当に影響しているのはB(Belief)である。要は「思い込み」や「価値観」である。AがBに合わない場合、不快な感情としてCが生まれるのである。
上記の状態から解放されるには、Bが何なのかを明らかにすることが重要である。これを論駁(Disputing)と言い、繰り返すことでやがてEffective philosophyにたどり着くということである。
社会生活を送る上で重要なのは、自分にも相手にもこのようなメカニズムがあることを理解し、問題が生じそうになったらまず自分の状態を冷静に観察し、その上で相手の心理を理解することだ。これを引き延ばした先にカウンセリングがあるのだろう。
自分の心の平穏のため、ビジネスをうまく運ぶため、そして目の前の人間を幸せにするために活用していきたい。