生保レディから営業を受けていて、時には無理矢理保険の必要性を訴えてくるが、本当に必要な保険って何だろうか。

日本は保険大国であり、生命保険における世界の保険料は世界の2割を占め、米国とほぼ同じ。また、国民1人当たりの保険料負担額を示す「保険密度」を見ると、日本は世界平均の約7.8倍、米国の1.3倍であるという。これはかつて日本の保険会社が「ザ・セイホ」と呼ばれたように、生保レディによる営業が色濃く出た結果であろう。

保険の種類はまず死亡保険か生存保険かに分けられる。死亡保険は純粋な生命保険である。生存保険は働けるか働けないかに分類される。働けない場合に支払われる保険は「就労不能保険」や「介護保険」、「所得補償保険」と言われるものである。働ける前提では、怪我や病気の際の医療費に備える医療保険(がん保険を含む)や、最近よく聞かれる特約では先進医療保障がある。

さて、ここで考えるべきはある事象が起きた時に、実際にどれだけのお金が必要であるかということである。以降は既婚子どもありの、一家の家計を支える父という前提で考える。

まず、何らかの要因で不意に死んでしまった場合、残された家族は父が稼ぐはず生活費が必要になる。もし、35歳の時に亡くなってしまい、そこから65歳までの収入を賄おうとした場合、年収が400万円として30年で1億2,000万円が必要になる。これは一般的にはとても貯蓄で賄われる額ではなく、保険が有効になるものである。

また、同様に一生働けなくなり、更に介護が必要になった時はもっとかかってしまうことになる。その場合、40歳以降であれば国から介護保険もあるが、公的保険と同様に、サービスに対して補助が効くというものである。

一方働ける場合の医療保険については、社会保険料を支払っていれば、サラリーマンは3割負担である。また、高額な医療費になった場合も同月におよそ8万円以上は実際の費用×1%でいいという至れり尽くせりの制度となってる。この前提でいくと、入院に必要なのは、差額ベッド代などを含め1日5,000円程度まで、最近は入院期間も短くなっているため、2ヶ月入院したとして30万円となる。

手術の場合も、保険適用範囲内であれば、例えがんの手術であろうと10万円程度である。がんと言っても特殊な治療が必要なわけではなく、保険適用内であれば高額療養費制度により相当負担が軽減される。仮に3回手術が必要だったとして30万円としておく。

がんについてもっと言えば、陽子線治療など保険適用外の先進医療がある。これは300万円程度といわれ、やや高額である。ただし、先進医療を受けたからといって必ずしも治癒するというわけではなく、逆に本当に効果が認められるとなった場合、いずれ厚生労働省が認可するだろう。

以上から、それぞれのリスクに必要な最大額と保険の必要性についてまとめてみる。(既婚子どもありの父、年齢35歳の場合)

死亡・・・1億2,000万円→若い程必要
就労不能・介護・・・1億2,000万円以上→若い人、自営業者には特に必要
入院・・・30万円→貯蓄があれば不要
手術・・・30万円→貯蓄があれば不要
高額医療・・・300万円→無理に受けなければいい

以上から、死亡、就労不能・介護保険は必要、その他は貯蓄があれば不要ということになる。医療費は公的保険の範囲内であれば大してかからないので、社会保険料はしっかり払っていれば問題ない。また、がんについては医療費よりもそれ自体が不幸な事態となってしまうので、保険会社に保険料を支払うくらいなら浮いたお金で定期的に健康診断を受けた方が発見が早く治癒の可能性も高い。もちろん医療費もかからない。

また、自分の生死・健康とは関係なく金がかかってしまうのは対人・対物に被害を与えてしまった時である。損害保険の世界であるが、自動車保険にはもれなく入るべきである。

保険はテールリスクに備えるものである。ほぼ全ての人にとっては必要ないが、万が一当たってしまった時に保険に入っていればどん底を回避することができる。逆にそれ以外のリスクは普段からコントロール可能な状態にしておくことが重要である。