竹島、尖閣諸島、そして北方領土と、最近は相手国の挑発により領土問題がクローズアップされている。これらの問題は根が深く、簡単に解決できる問題ではないと思うが、ここでは歴史的経緯やナショナリズムは一旦置いておいて、日本にとってはどのような対応が望ましいか考えてみる。

領土問題を一緒にして考えてはいけない

3つの領土問題は同じような脈絡で語られることが多いが、三者三様異なる事情がある。従って、それぞれについて取るべき方策は変わってくる。

竹島と北方領土は韓国とロシアが実効支配している。竹島は実効支配自体が目的であるため、軍の配備と観光があるだけだが、北方領土では普通のロシア人が普通の生活を送っている。一方、尖閣諸島は日本が実効支配している。ただし、人が住んでいるわけではない。

歴史的経緯とナショナリズムを抜きにして考えると、注目すべきは「経済的価値」であろう。この点について特に三つの間で大きな違いがある。

竹島の経済的価値は、はっきり言って漁業権のみであり、その金額は1974年の島根県漁連の算出では年間漁獲高は76億円、2010年の韓国の算出では年間11兆5,842億ウォン(約8600億円)である。(出所:Wikipedia)異常に差が開いているが、日本における水揚げ高が約3兆3,000億円(2008年漁業センサス)を考えると、韓国の数字が大きすぎるということが分かるから、データが古いこともあり日本の数字が正しいとは言えないものの、多くても100億円くらいのものだろう。そう考えたときに、竹島の経済的価値は国家全体から考えれば大したものではないことが分かり、日韓双方が固執しているのはやはり「別の理由」によるものだということがわかる。

一方の尖閣諸島は事情が大きく異なる。尖閣諸島の地下には大量の天然資源が眠っていると言われており、台湾や中国が領有権を主張し始めたのもそのことが明るみに出てからである。よって、この問題はまさに経済的価値が中心なのである。

北方領土の経済的価値は、かなり大きな島ということもあり一概には言えないが、地下資源などの話は今のところ出ておらず、あの辺境の島が経済的に発展するとは少し考えにくい。ただし、ロシアにとっては海峡を押さえるという軍事的価値があるという説もある。

ではそれぞれどのような対応を取ればいいか

それぞれの領土問題についての私の結論は以下の通りである。

竹島については経済的価値が大きくないのだから、経済上の大きな問題として捉える必要はない。むしろ、韓国との関係がこじれることが厄介であり、無下にわたしてしまうことはあり得ないのだから、冷静に日本の主張を国際司法裁判所に訴え続けるというのが大人の対応であろう。この意味では、現在の日本政府の対応は正しい。

尖閣諸島は日本が実効支配しており、他国に譲る理由は全くない。海底資源という経済的価値も想定されていることから、今回のように断固として排除していくことが必要である。ただし、民間人を国内法に則って裁いて、中国との関係が悪化するのなら、火に油を注ぐようなことはしないことが得策だろう。本当に警戒すべきは、中国が国としてこっそり海底資源を抜き取りに来た時だ。そのときはアメリカに訴えることも辞さない立場をとる必要がある。

北方領土は大きな経済的価値は見込みにくく、現にロシア人が生活を送っていることを考えると、現実的な問題として返還は難しいのではないのだろうか。いずれにせよ、対ロシアという観点では中国・韓国とは様相が異なることもあり、外交カードとして日本の立場を主張し続けることが重要だろう。

結果として日本政府の対応は正しい

以上のように考えてみると、民主党はともかく、日本政府が取っている対応はおおよそ正しいということができる。私は仕事柄官僚と関わることがあるが、彼らは国民が思っている以上にあらゆる可能性を吟味し、最善の対策を取ることには余念がない。当面は彼らを信用し、ことの成り行きを見守ることが「大人として」の対応ではないだろうか。