【電車の中】白【暇だったから】 | 落ち行く下弦の月。

【電車の中】白【暇だったから】



目が覚めた。
周りを取り囲む白い壁。
…ここはどこなんだろう…。
視界の中に男の人が映る。
「…ユキ…」
ユキ…それは何?
「ユキ…お前…目が覚めた…のか…?」
「?」
「よかった…本当に…よかった…」
泣き崩れる男の人。
それより…
(この人は…誰…?)
人の名前らしき言葉を発した男の人はそれから嬉しそうに、本当に嬉しそうに今までにあったことを語り始めた。
その男の人の祖父、祖母が死んだこと、2年程前から今までにあった苦難等…。
…男の話しを聞いていてわかったことがある。
どうらや僕は【ユキ】という少女らしい………。

それから数日はまさに矢のように過ぎていった。
体の異変を調べるための検査をしたり、親戚という存在が退院祝いだ等と言って押し寄せてきたり…。
ちなみに僕の方は混乱しっぱなしだったが…記憶を失う前はとても無口だったのだろう。
少し微笑んで頷いたり話しの内容に応じた反応を繰り返すだけで済んだ。
…その人たちの反応から【ユキ】という少女について色々な事を知ることができた。
(無口、大人しい、本が好き…)
本名椎名雪、通称ユキ
生まれは1994年の12月23日。
学校では成績良好、印象はとても大人しい本好きのボクっ子少女。
2年前に原因不明の病気にかかり、昏睡状態に。
その後は目覚めることもなく…
(奇跡的に目覚めたが、記憶を失っていたわけ…か)
だがまあこれだけの情報があれば、日常生活に不便することはなさそうだ。

検査に次ぐ検査の中、僕の病室にクラスメート…とかいう存在たちがやってきた。
皆ガヤガヤしていて、僕的にはうるさかったが…
僕の目に一人の男の子が留まった。
角にいて、一見関心がなさそうに見えるが、僕が何かクラスメートに対して行動をおこす度に見せる表情には、妙な既視感を…
既視感…?
瞬間浮かんだ名前。
「………シュン…」
小さく呟いたその名前に、彼は敏感に反応した。
「………ユキ…」
同じくらい小さく呟き返してくる。
呟いた瞬間に彼が見せたあの嬉しそうな顔…。
(…あ…)
頭の中に次々浮かんでくる
学校に登校した記憶…
昼ご飯を食べた記憶…
図書館で本を読んだ記憶…
その映像の中にはいつも【彼】がいた。
「……ぅ…ぁ…」
頭の中に流れる大量の画像と映像…
穏やかな日差しの中、一緒にお昼寝した記憶…
夏休みに涼しいからという理由で通い詰めた図書館…
冬休みには暖かいからとかいってまた通い詰めたっけ…
(そうか…そうだったのか…)
ユキは全て思い出した。
(僕は…)
最後に流れれた映像…
その中では…
麗らかな日差しの中…
僕のことを見て…
頬を染めながら…
(僕は……)
君は告白してきていた…
(君のことが…)
そして僕はそれに…
『僕も…』
(好きだよ…シュン…)

気がつけば、クラスメートたちは全員帰っていた。
…シュン以外を除いて。
二人だけの病室。
ああ…胸がドキドキしてきた…
これは君がいるからなんだね。
「…おはよう、ユキ…」
ああそうだね…
「ただいま、シュン」


後日僕は記憶を失っていたことを、関係者(まあ全員にだが…)に話したが…全員気がつかなかったという。
言っても信じてくれない人もいたが…普段僕が嘘と無縁だからだろうか…信じてくれる人たちの方が多かった。
…もちろんシュンは最初から信じてくれたさ。
そして今は…おっと、彼の御到着のようだ。
「ユキ、ゴメン!遅れちゃった…」
「遅いよ、シュン。もう少しで帰ろうかと思案していたところなんだから…」
「ごめん!」
…ふむ、まあこのまま虐めてもいいのだが…
「…行こうか」
「ああ!」
こうして僕に、
日常が戻ってきた。
真っ白な、いつもの日々。
今日という日々を大切にしながら…
また、僕らは前に進む。
明日という、何色か分からない日を目指し…
また…僕らは………。


...Fin


電車の中が暇だったから思いつきで書いたこれ(笑)
…携帯はきついね
(´・ω・`)