魔女ポプリ(4) | THOUSAND WINDS

魔女ポプリ(4)

いやあ何だな、久しぶりにごちそうってもんを食べた気がするな。
何せあたしってこの村の救世主らしいからな。
まだ何にもやってないけどね。
一体村の人あたしに何やって欲しいんだろうなあ。
どうせ魔法一つ使えないけどね。
そう言えばお師匠に聞きたかったことがあったんだが、
この右手の甲にね、何だか知らんけど
魔方陣みたいなのが墨か何かで描いてあるんだ。
あたしがすやすや眠ってる隙にね。
お師匠これ一体何なの?って聞こうと思ったら、
突然いなくなっちゃうし。
でも朝ごはんの支度はしてあったけどね。
本来なら弟子ってば、お師匠いなくなったんなら、
どこへ行ったんだあって、探しに行くのが普通なんじゃないの。
あんなお師匠、どうなったっていいけどね。
一度も魔法使わせてくれなかったじゃないの。
ほんとはあたしだって、魔法の一つや二つ、使えるんだから。
自信はあったんだからね。
なにせあのちぢんでたドラゴン、よみがえらせたんだから。
有無を言わさず魔力を吸い取られたんだけどね。
「あの~、魔導士どの、そろそろ構いませぬか。
村の者も先に話をしとかないことにはと申しておる故。
ささやかなおもてなしではありましたが、ご満足なされましたか。
どうか私らの頼みを聞いてくださいまし」
この人、村の長老さんだな、きっと。一番年取ってるし。
他の人らは大体普通の若い衆みたいで、女の人もいるな。
大体20名くらい、えらい小さい村だな。
もしかしてほとんどがあれにやられたのかな。
まさかと思うけど、
何か分からないあれを、
退治してくれって言ってるのかしらね。
「そう、その通りでございますじゃ。
よお我らの願い事を察していただけましたな。
さすがは魔導士、お見それしました」
そうなの?ついいつものくせで
ひとりごと言っちゃっただけなんだけどね。
「あれの正体をまだご存知ないと思われるので、一応ご説明しときます。
かれこれ一週間前でした。最初の犠牲者が出たのは。
やはり村の共同畑に向かう農道で、かなり暗い夜道のことです。
あれの亭主がむざんな姿で殺されてました」
スキンヘッドなおっさんが、さっき居た奥さんの方を指さして言うのね。
そうか、それで彼女ここに居合わせてるのかしらね。
「目撃者は数少なく、そのほとんどがあれにやられたようです。
既にこれで5人目にあたります。ここんとこ毎日のように
誰かが犠牲になり、いっそのこと村を捨てて出て行こうかなどと
申すものまで出る始末」
結構切羽詰ってるな、この人ら。やっぱしあたしじゃ無理だわ。
何とか強引にお断りしようかな。
ごちそう頂いた後で申し訳ないんだけどね。
「それはどうも人狼のようだったと、唯一の目撃者が申しております。
背が高くて、体中が黒い毛でおおわれた、
かろうじて人の面影を残した凶悪なモンスター。
しかも今夜は満月、おかげで外はうす明るいのですが、
もしも人狼が事実ならば、今夜どんな被害が我らにふりかかることか。
人狼は満月の夜、もっとも凶暴になると言われています。
そして、その間はほとんど不死の体になると。
もはやこの村の者では太刀打ち出来るものはおりませぬ。
どうか、今晩外を見回りに出て頂いて、
運良く遭遇された時には、速攻で退治して頂ければと」
運悪くだろ?そんなもんにあったが最期、食い殺されるだけじゃん。
いつもみたいに小言言おうとしたら、
突然どこから現れたか知らない大男二人が近づいてきて、
あたしの両手を根元からひしっとでかい手でつかんで、
問答無用でそのままずるずるって、このうす暗い表にほり出そうとしてる。
「それじゃあ頼みましたよ。
村人一同しっかり家に施錠して、影ながら応援しとりますので。
くれぐれも、お逃げなさらぬように。
この者たちよりも、
もっと物騒な輩を自警団として組織しております故」
だったらその物騒な輩さんら一杯使って、
一気に片付けたらいいでしょ。
ああ何て不幸なのあたし。
今宵はオオカミ男のいけにえにされるのかな。
こんな時にドラヤキがいてくれたら、あれ違うな
ドラ夫だったかな。もうどうでもいいや。
誰か、助けて・・・