マグダラ | THOUSAND WINDS

マグダラ

逃げよう。
この地を離れなければ。
追っ手から逃れる為に。
私が彼と関わっていた為に。
私にだけ与えられた言葉、
このまま闇の中に葬られても構わないから。
あとの事はもう知らない。
確かに墓は空っぽだった。
絶対見間違いじゃない。
安息日をいい事に、
誰かがあの人の亡骸を
持ち出してしまった。
私にはそれが誰なのか分かってる。
だから口封じ、
逃げなきゃ。
どうせ逃げおおせて、
この話人に伝えても、
誰もまともに取り合ってはくれない。
あの人と寝食を共にしたなんて言ったら、
何て言われる事か。
実際何もなかったのだし、
私はあの中では、
あの人の一番弟子だったのだから。
だからこそあの人は、
私にしか告げなかった、
あの奥義の言葉を、
誰に告げたらいいか。
そうか
私が文字を学べばいいんだ。
私が書いてやる。
彼ら残された連中が、何を言い広めるか知ったこっちゃない。
匿名で、わたしの名を隠し、
いつまでかかったって構わないから、
私の手でこれを記そう、
あなたの愛された弟子として。