ゴキ太郎さんの話 | THOUSAND WINDS

ゴキ太郎さんの話

私は安ぶじんなアパートに暮らしているものです。
私と、同居人のゴキ太郎さん。
体長1mに達する突然変異のゴキブリ、だと思う。
さすがにゴキブリもここまで大きいと、誰も汚がったり嫌がったりしない、出来ない。
何か神がかりなものを感じるから。
それにこのゴキ太郎さん、結構頭いい。
トイレのしつけも覚えたし、ちゃんと一人で留守番もする。
たまに押し売りを撃退してくれるけど。
日曜日の朝、久しぶりにゴキ太郎さん連れてお散歩。
アパートの管理人さんからも好評、ここペットお断りなはずだが。
「ワンワンワン!」
たまに犬連れの人に出くわすと、決まって犬どもがこの異形の連れに絡んで来る。
未曾有の恐怖に怯えたか、ただ獲物と見なしてるのか。
可愛そうに、ゴキ太郎さん、触覚が震えてるよ。
ああ、もう我慢の限界かなと思ったら、
ゴキ太郎さん、
すくっと後ろ足で立ち、背中にしまっていた透明な虹色の羽を広げて、
颯爽と空へ飛び去ってしまいました。
ゴキブリが汚いって一体誰が言い出したんだ。
それからしばらく私の同居人のゴキ太郎さん、家に帰って来なくなりました。
好物のアボガドまで用意していたのに。
ある夜外から帰宅して見ると、
体長90cm程度の薄い茶羽の
彼女連れて帰って来てました。
まさか君と同じ種族が「まだ」地上にいたなんてね。
人が生まれるずっと前に
恐竜が現れるよりも前から
君たちはいたんだね。
ふと気がつけば、
何か増えてるし、
産めよ増やせよ地に満ちよ、
うちの部屋に満ちてどうする。
「ガサゴソガサゴソ」
親があのサイズだし、お子さんたちも尋常じゃない。
でもみんな聞き分けはいいし、よその部屋の連中からも好かれてる。
まあいいや、ここがゴキブリ人と人間の交流の場にでもなりゃいいかなと。
「ガサゴソガサゴソ」
ああっ、うっせ~!