あたたかい | THOUSAND WINDS

あたたかい

「手を握ってて、しばらくそこにいて」


わたしはここの病院で「使われている」介護用ロボット。
かなり人間ぽく作られていると思っている。少し自慢。
でもわたしって全然駄目、よく失敗する。
おじいさんをお風呂に入れようとして転倒させるわ、
寝たきりの人起こしてあげる時力み過ぎて首の筋違えさせたり、
おむつのしかえにもたついてたら、呆けてたおじいさん
外でおもらししちゃったしで、
全くいいとこがない。
わたしの他にももっと有能なロボットが導入されていて、
彼らはわたしなんかよりはるかにロボっぽいけど、
絶対失敗なんかしない。
こないだ休憩時間に、介護士になる為の資格の本読んでいたら、君は資格なんかいらない、だってロボットなんだからと言われた。
それってわたしは人間じゃないって言われてるような気がした。
今わたしの受け持ってる所はホスピス、担当の人がいなくて
急きょ重病のおばあさんの個室に来てる。
そしたら突然、ギューって手を握って来られて、さかんに
「怖い、怖いよお」を連呼なさってる。
それでわたしは「何もこわいことなんかないですよ。
わたしがここにいてあげますから」と答えた。
するとおばあちゃんは言った。
「おねえちゃん、暖かい手してるね」
しばらく手を握られて、知らぬ間にスリープモードに移行してしまい、
気がついて自発的にレジュームかけたら、
おばあさんの手、何だか冷たくなってた。



「あなたここに来てから、初めて人の役にたったね」
担当だった医師の先生からほめられた。あましうれしくない。
あれからひまを見つけては介護士の資格の本を読んでる。
例え資格が取れなくても、
人間じゃなくても、
私は人のお役に立ちたい。
今願うのはただそれだけ。
ご冥福、お祈り申し上げます。