狼少女は嘘だったわけだが | THOUSAND WINDS

狼少女は嘘だったわけだが

何かの本で読んだ。結局誰かのでっち上げた創作話に過ぎなかったと言う。
でももしもそんな、狼に育てられた子供、男でも女でもどっちだっていい、無事に大きく育ったとしたら。
人間の言葉は知らなかったはずだ。
つまり狼の群れと一緒に暮らし、動物を狩って、それを生のままでほふった。
狼に言葉みたいなのがあるか分からないが、少なくとも人間の言葉程複雑じゃない。ボキャブラリも欠けている、例えば「死」とか。
仮に彼女としておこう、獲物を殺して動かなくなったのに、
腹からかぶりついている内は、他者の死など意識もしないに違いない。
それが仲間の狼が天敵の動物に殺られたり、怪我で亡くなったり
人間どもにより銃で撃たれたりした時に、
言葉を持たない少女は何かを感じたはずだ。
それは悲しみ、それに加えて恐怖、そして怒り。
言葉としての死の概念を持たない狼少女でも、
きっとこの死と言う理不尽なものの存在に気付くに違いない。
しかもそれがあくまでも自分の身内の場合に限られるのは、
それがもしかしたら自分にもあてはまるのではないか、
今見たような事が自分にも起こるんじゃないかと、
言葉なしに感じるに違いない。
きっとその死に対する感じ方が、
原始時代の狩猟民族にもつきまとったに違いない。
つまり人は死を目前にすることで神を考え出す。
決して滅びない永遠のものを思い描く。
それがきっと宗教の始まり。
人の宗教の大半はこの死の定義から生まれた。
死と言う厄介な代物をどう解決するか。
そんな事は無駄な努力なんだが
たまたま偶然ではあれ、
画期的な方法を思い付いた天才がいたと言うお話