聞こえない音楽 | THOUSAND WINDS

聞こえない音楽

ひょっとしたら少し差別的表現かも知れないと思いつつ
神童に捧ぐ

生まれつき耳の聞こえない子供がいた
生まれてからこの方音楽を聞いた事がなかった
自分の喉から出て来る声も届かなかった
母親の子守唄も知らず、大きくなった
ある日音楽の先生と出会った
大きなピアノと言うものに
初めて手でふれて
先生がピアノで曲を弾いてくれた
彼は自分の手でその音楽を聞いた
それからと言うもの
先生がピアノを弾き
それを彼が手で振動を
感じる日が続いた
ある日の事
とっておきの曲と先生が手話で語り
その子の為に作曲された曲が披露された
彼は懸命に手のひらで
体全体をピアノに押し付けて
聞こえない音楽を捕らえようとした
すると奇跡が起きた
彼の耳を通じてではなくて
直接心を通して
音か初めて感じられた
思わず彼はこれまであげた事のない
彼の声を
大声で奏でた
そのメロディは偶然録音機に拾われ
楽譜に起こされた
耳の聞こえなかった子供の
作曲した音楽
それはまたたく間に人気を博した
ミリオンセラーとなったその曲を
再び彼は体中で聞いている
次の作品が生まれるのも
近い