ひとまず終演 | THOUSAND WINDS

ひとまず終演

「Splash!」
タクローは海の中で思った。つかまったらどうしようか。
どうせ珍獣かUMAか扱いされ、動物園か水族館で飼育されるんだろう、
生物学者にあちこち体を調べられるとか、何か嫌だ。
「ほれ、こっちこっち、あんたの事よ、はよこの船乗ったんさい」
何か小さな漁船が浮かんでる、その中に首謀者たる牧野さんが乗ってる。
「とんだ災難になっちゃったわねえ。
またあんたの体ふかせてね、
クンクン、ああ、潮の魚のいい臭い、かぶりつきたくなるわ」
「おいこらかむな、それとそんなに雑に拭くな、うろこがはがれるだろ」
「あとね、あんた人間に戻ってから、これはきなさいって、
それであんた救われるから」
何だこれわ、作り物の尾びれ・・・

「こちらは土曜特番、レポーターの福井です。
先程入りました情報によりますと、
オスの人魚の身柄を確保したとの事でしたが、
あれは地元の中学生のいたずらと判明しました。
あのネス湖の事件と同じですね。
ちくしょう期待させやがって、おっと。
では土曜特番スクープ『海辺にオスのマーメイド現わる!』
を終わらせて頂きます。
スタジオさん、どうぞ」
ああ良かったと、胸をなでおろすタクローだった。
あれから人に戻って、作り物の尾ひれ装着して、わざとつかまってから、
おもむろにそれ脱いで、
身の潔白を明かしたのだった。
牧野いわく、
「ああよかったねえと、ちっ、おっと、
わたし以外にもあんた撮った人いて、通報したみたい。
大事にならんでよかったじゃない。
みんなわたしのおかげね、感謝しなさい」
「てめえが海、落とさなきゃ、こんな事にゃならんかったんだぞ!」
油断大敵、それから彼はしばらく人魚に戻るのは、
学校のプールの中だけと決めた。
アマチュアのカメラマンに取り囲まれながら・・・