さっきの顛末って何だよ | THOUSAND WINDS

さっきの顛末って何だよ

「Splash !」
おかしい、こんなはずがない。
水野タクローは頭を抱えて思った。
ここは確かに放課後の水泳部、
そして学校の50mプールの中なんだが、
「こらぁそこ、さぼるんぢゃない!50mバタフライ、あと5ターンね。
それ終わったら背泳ぎで10ターン、はよやらんか~」
牧野エリカさんがいる、どうやら彼女ここの部のマネージャに本日就任したらしい。
タクローはプールの中を泳いでいた。
ただ人とは違う姿のままで。
昨晩の突然のカミングアウト、彼が人魚族であることがばれたと思ったら、
かえって好意を持たれたらしい。
「そんな事気にしてたのか~、水野、お前らしかないぜ」
「別に尾ひれついてたっていいじゃん、一緒に泳ごうや」
そんなものなのか?人間ですらないかも知れない奴に、
そんな気さくに応じていいのか。
体の構造ゆえに水着の類いも着れず、ある意味全裸なままで、
このカルキ臭いプールを我が物顔で泳いで、いや、泳がされていた。
あの片思いしてた牧野さんの無茶なお願いによって。
「カチッ、ぉおっ、いきなり世界新記録じゃん、やるなそこの魚の人」
まるで見世物のようなんだが、彼としては手を抜くわけにもいかない。
プールを上がっても足が無いから、つまり尾ひれになってるから、
逃げ場もないって感じで半ばやけくそで泳いでいた。
でもこうして隠し立てせずに存分に泳げるのもいいかなと思った。
牧野さんの従兄弟がこう言った「超常現象」にこりまくってるらしく、
ただ今DVDカメラで実況中継されてるところ。
昨晩の出来事を後悔しているかも知れない。
こうなったら、全ての泳法で、人類未踏の非公認新記録を樹立してやろうじゃないかと、
人魚の少年は尾ひれを水面にばたつかせて息巻いた。
「Splash!」

水の中でも人の形を保てるようになるのは、
ずっと後のお話。
いじょ