ある人魚男の話(プロローグ) | THOUSAND WINDS

ある人魚男の話(プロローグ)

「Sprash!」
ここは近くの砂浜、月明りの夜。
水野拓郎は悩んでいた。
学校で友人に誘われて、
なかば無理矢理
水泳部に入らされて、
まだ実際に泳いだ事がない。
カナヅチなどではない、はず。
むしろ誰よりも上手に泳げるはず。
父が水悽人で母がマーメイドのハーフ。
妹は父似だったおかげで、エラの名残りはあるけど、
日常生活に支障はない。
彼は不幸な事に、母似になってしまった。
幼い頃まで、水の中で暮らしていた。まるでポニョみたい。
物心ついてからようやく、人の形に化けられるようになったものの、
一定量の水を浴びると、元の姿に戻ってしまう。
人魚姫とかならまだ見映えも良かったんだが、
オスの人魚じゃあ・・・
どうして妹と逆じゃなかったんだと、親を恨んでもしょうがない。
水野タクローは人見を避けて、
ここで育った海辺にて、
本性に帰ってくつろぎ中。
「ガサッ」物音がした。
タクローにとっては思いがけなかったのかも知れない。
一番見られてはならない相手、
片想いのクラス委員の女の子、
牧野さんに見られるなんて!
仕方ない、彼は歌を歌う事にした。
古のセイレーンの魔法、
どうか全部忘れてと
祈りながら。
続く?