昭和を語る上で

欠かせないことを失念していた

昭和の時代には

「携帯」がなかった、ということを


室内でなければ聴くことができなかった音楽が

ウォークマンの登場で

誰でも手軽に外に持ち出すことが

できるようになった

次は、電話の番だった


高校を卒業したのが昭和57年

その年、後に妻になる女性と出会った

専門学校をやめて、大学に入った58年

彼女との付き合いが始まった

彼女は専門学校でそのまま進級し

私は池袋の大学に通うことになった

練馬に住んでいた彼女は

池袋で西武線に乗り換える

そこで、二人が待ち合わせたのが

西武池袋線の改札口

伝言板の前だ


伝言板には、誰でもチョークで

メッセージを書くことができた

特定の相手以外にはわからない

謎のメッセージが伝言板には書かれていた

外出先で、唯一

連絡が可能となる、誠に

不確かな手段だった


携帯がなかったときは

事前に入念な約束をしておく必要後あったが

突発的なことは、いつでも起こるので

相手を信じて

待つしかないときもあった

私も、彼女を

雪の降るなか、何時間も

待たせてしまったこともあった



携帯がなかった時の方が

私たちは、人を信じることができたのでは

ないだろうか?