大学を終え、就職するまでに8年かかった

大学は、本来「教わる」ところではないので

自分から研究することが求められる

そのために、高校までのような

強制されたスケジュールはほとんどなく

ゆったりと、余裕がもたせてある

「やらなければならない」ことを少なくして

「やりたい」ことをとことん

追及することができるようになっている

それは、とても恵まれた時間である

しかし、ほとんどの人は

その恵まれた時間を、研究にあてたりはせず

アルバイトをしたり、遊んだりして

使いきってしまう

私も、ほとんどそのような状況だった

ただ、将来、教師になるためには

悪い経験ではなかった


最後の一年は、教育実習の2週間だけのために

聴講生登録をしたので

実質上は、塾の準専任講師が本業だった

授業だけでなく、営業も行っていたし

他の講師の指導もやっていた


そんな生活の中で、練馬区の中学校に教育実習に行き

その後、東京都と立教中学校の教員採用試験を受けた


教育実習で指導を受けたベテランの女性教員は

実習終了後、大学に

「こんな生意気な学生は二度と御免だ」と

苦情を申し立てたそうだ

私は、謙虚に、丁寧に

2週間を過ごしていたつもりだったので

大学から注意を受けたとき、ショックが隠せなかった

立教中学校を受験したのは

公立の教員に失望したからでもあった

(その数年後、自分が初めて教育実習生を担当して

その時の女性教員が、なぜ生意気な、と言ったのか

とてもよくわかった

私はとても生意気だったと後から気付いた)


東京都の採用試験は、確か夏の暑い日に

早稲田大学で受験をした

専門の英語の試験が

思いの外、難しく分量も多かったので

制限時間いっぱいまでかかった

時間が来て、ふーと大きなため息をつき

解答用紙が回収されるのを待つ間

回りを見たら、半分くらいしか

解答できていない様子だった

面接では、何か英語で話せと言われたから

何か話せなんて言われても困る、と英語で答えたあと

自己紹介のようなことをさせられた


秋に立教中学校の試験があったが

受験している応募者のほとんどが

自分が立教中学校の出身者だということがわかった

私は、明らかに場違いな存在に見えた


立教は不採用となり、東京都は合格となった

しかし、実際にどこに赴任するかは

3月の半ばまでわからなかった


採用試験の合格発表がある前に

とにかく来春からは就職するつもりだったので

専門学校以来長い間付き合っていた女性と

結婚することにした

式を3月中に挙げてしまうことにした

9月の敬老の日に相手の両親に

ゆるしをもらうため挨拶に行き

付き合い始めた記念日に入籍し

その数日後、結婚式場が空いている

仏滅の週末に挙式を行う予約をした

その後合格通知をもらい、

東京都の教員になることまで確約をもらい

結婚式のあと、新婚旅行中に

足立区教育委員会から連絡をもらい

面接に行くため、旅行を中止して東京に戻った


足立区の外れ、花畑団地の端にある中学校に

赴任先が決まった

          (つづく)