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H26.7.11、第22回日本乳癌学会総会で以下の報告をしました。
【はじめに】
 Bevacizumabの薬理効果は従来、「がんの腫瘍血管を破壊し、がん細胞に対する兵糧攻め」と解釈されてきましたが、最近の研究では、Bevacizumabの真の治療効果とは、血管新生の抑制だけでなく、血管リモデリングとともに組織酸素化を改善させることにあると報告されています。腫瘍血管は正常の血管と異なり、構造が脆弱で漏出しやすく、効率的に栄養や酸素を運搬できないために、組織の低栄養や低酸素を引き起こします。「腫瘍血管のリモデリング」とはこうした脆弱な血管構造を再構築し、正常化させることを指します。正常化した血管は、末梢組織まで効率的に栄養素や酸素を運搬できるため、ここに殺細胞性の抗がん剤を追加することで、薬剤の到達が良くなり、治療効果が高まるわけです。反面、がん細胞にとっては都合のよい環境を作ってあげることになりますが、実際には、慢性的な低酸素状態が続くほうが、がん遺伝子の不安定を引き起こし、増殖能や転移能を高めてしまうことが報告されているのです。
我々は近赤外光イメージングを用いて組織ヘモグロビン濃度(Hb)を測定し、腫瘍血管や組織酸素化を画像化・定量化する手法により、腫瘍の血液動態が代謝や細胞増殖と密接に関連することを報告してきました。
(Cancer science 2014:http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cas.12432/full )。
今回、近赤外光イメージングを用いて、Bevacizumabによる超早期の血液動態の変化を観察し、治療効果との相関を検討しました。

<図1.血管新生阻害薬の薬理効果をStO2で画像化する。>
血管新生阻害薬とStO2









【方法】 
 Stage3/4の局所進行乳がん患者7名にBevacizumab+Paclitaxelの標準療法を施行しました。初回導入時に単剤Bevacizumabを投与し、拡散光スペクトロスコピー(TRS20:Hamamatsu)を用いて治療前(Day-1)、Day1,Day3,Day6,Day8,Day13に担癌乳房と対側正常乳房の組織Hbをマッピングし、腫瘍血液量(tHb)と組織酸素化(StO2)を計測し、画像化しました。2サイクル後のFDG-PETで治療効果判定し、同時にFMISO-PET、MRIによる腫瘍の細胞内低酸素と形態学的変化を追跡しました。
【結果】
 早期反応群(R, n = 4)は非反応群(NR, n = 3)と比較して、腫瘍縮小が著明で、FMISOによる細胞内低酸素のレベルが低い傾向がありました。両群においてBevacizumab投与直後から腫瘍tHbの減少が見られました。NR群ではStO2は著しく低値で、治療開始後も大きく改善されない一方、R群の中にはStO2の著明な改善が見られる症例を観察しました。図2は奏功例です。奏功した症例では治療後1-3日目に腫瘍のtHbの減少が見られる一方、StO2が空間的に一部上昇する部位が見られ、改善傾向にあることが分かります。

<図2. Bevacizumab単剤使用後に奏功した症例の腫瘍tHb(上段)とStO2(下段)の経時的変化>
血管新生阻害薬とStO2 2






【結論】
 近赤外光イメージングを用いた腫瘍血管・低酸素のモニターリングに世界で初めて成功しました。これらはBevacizumabによる腫瘍血管リモデリングの指標になる可能性があります。
この結果はPLoS One に掲載しましたので、ぜひ参照にしてください。
(PLoS One 2014: http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0098715