「アポトーシスって聞いたことありますか?原田先輩?」彼女は和美のジャズ研究会の後輩の由美だった。一風変わった事をいつも考えているつかみ所のない性格が和美も嫌いではなかった。「ううん、聞いたことないわね・・何それ音楽用語?」「そうじゃないんです。今、自殺する細胞と言う本を読んでいるんです、結構、哲学的な話なんですが、ガンって一般的には人間にとっては恐れられているじゃないですか、でも細胞って言うレベルで考えるとそれは永遠の命を得ると言うことになるそうなんです。それに対してアポトーシスというのは細胞の自殺を意味するんです。すなわち細胞は分裂して増殖することは大切なことなんですがバランスをとるために細胞に自殺すると言うプログラムが仕組んであるんです。それがアポトーシスと言うんです。細胞レベルでは面白い事に自殺することによって人間と言う個体のバランスを保ち、細胞が永遠の命を持とうとすると個体である人間を殺してしまうんです。」由美は自分の言葉に興奮し一気にまくしたてた。「面白い話ね・・・つまりガンは人間の永遠の夢、不死を実現しようとしているんだ?へぇ なるほどね」和美はその瞬間、はっとした。あの夢の中で、そういやに現実的なあの夢の中で彼女の分身が言った言葉を思い出したのだ。