かえりの電車で


相変わらずの満員電車


新百合ヶ丘でどっとひとが降りた後 すかさず反対側のドアの奥に入り込むのが最近よくやる手なのだけど


今日いったらドアを背に立ったまま寝てる女の子がいて すっごいフラフラしてて 結局その人と30cm間隔くらいあけて向かい合った状態で俺は立ってたんだけど


玉川学園前あたりで、その女の子の手に持ってた傘が熟睡してて手の力が抜けたのか、パッと手放したとたんに


綺麗な放物線を描いて俺の股間にクリティカルヒットした。いやネタじゃなくて。


俺はずっと上のくだらん中吊りを読んでたから何がおきたのかしばらくわからなかった。でもすぐになにかが俺の急所をついたことは把握できた。痛かった。


そして傘は生まれてから初めて安息の地をみつけたかとでもいうように その位置に留まり 俺の両手は自分の傘とつり革と満員電車で塞がれ 動けない。この不思議な時間は30秒あまり続き


女の子は照れながらその傘と俺とを引き離し 去っていった。