万葉集は言わずと知れた日本最古の歌集。

本書では、全20巻(4500首以上)から296首が厳選されております。
そして、歌の解説が読みやすくて、分かりやすくて、美しい。

生きてる時代は違うけど、時を越えて僕の胸に迫るものがありました。
自然の歌や、恋の歌、挽歌、旅の歌など色んな歌に出会えて良いです。

僕が特に気に入った歌をご紹介します。
詠み人や歌の背景は本書で解説されていますが、ここでは省略です。面倒くさいので(笑)
 

しきしまの大和の国は言霊の佐(たす)くる国ぞま幸(さき)くありこそ

この日本の国は言霊が助けてくれる国であるよ、どうぞ幸せをもたらしてくださいますように、という祈りの歌です。言霊によって人々は人生の幸せをいただいている。日本の国は言霊に満ちている。そんな喜びと願いを伝えています。

祈り、目に見えぬものへの敬意が感じられて素晴らしい。

恋しけば形見にせむと 我が屋戸に植ゑし藤波 今咲きにけり

「恋しくなったら、形見として思い出してほしいとわが家の庭にあなたが植えた藤の花房、今その花が咲きましたよ」


藤の花が咲いた喜びと、愛する人が傍にいない切なさとが相まって良い歌。
 

父母が頭掻き撫で幸くあれて 言ひし言葉ぜ 忘れかねつる

「父母が、私の頭を掻きなでながら、無事に元気で行ってこいよ、と言ってくれたその言葉をどうしても忘れることができない」

親が子を思い、子もまた親を思う。1200年も前の日本人も同じなんだなって、感慨深い気持ちになります。

心には千たび思へど人に言はず 吾が恋ふ妹を見むよしもがも

「心のなかでは数えきれないほど何度も思っているけれど、人には告げることなく、恋する大切なあなたに何とか逢えないものだろうか」

切ない恋の歌です。誰しも共感できるでしょうな。

験なきものを思はずは 一杯(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらし

「役にも立たないことは思わないようにして、一杯の濁り酒を飲むべきでしょうよ」

酒飲みの歌、貴方も一ついかがじゃ?

言はむすべせむすべ知らず 極まりて貴きものは 酒にしあるらし

「どう言えばいいのか、どうすればいいのかも分からないほどに、極め付きで貴いものは、酒というものであるらしい」

酒を讃える歌、酒は日本の素晴らしさ。

新しき年の初めの初春の今日降る雪のいや重け吉事(よごと)

「新たな年の初め、その初春の今日という日に、降り積もる雪のように、ますます佳いことが積もり重なりますように」

万葉集の最後は、編纂者である大伴家持のこの歌で締めくくられています。家持が雪を眺める情景が目に浮かびます。最後の歌に相応しき趣の深さ。

昔、学校では少しばかり万葉集を習いました。素朴で好きでした。小細工しない歌なので。

大人になって改めて読むと、もっと面白かった。

子供のころには分からなかった良さが、大人になって分かるってよくあることだと思います。

 

尊く贅沢な時間でありました。

人はなぜ歌を詠んだのであろうか。

 

あまたの人の生きた証がありました。

感動させていただいた。


気が向いたら読んでみてはいかがでしょうか。

 

 


著者 :小柳左門
発行 :令和元年八月三十日第一刷
発行所:致知出版社