4 逆さまの世界
落ち続けてこのままでは地球の真ん中についてしまうのではないかと思い始めた時、下の方の世界が逆さまになっていることに気付いた。机が脚を彩里水の方に向けて浮かんでおり、そこには脚を彩里水の方に向けた椅子が2脚きちんと机に収まりながら浮いている。
本棚に入った本はほとんどが逆さ向きに揃えられ、彩里水から見て彩里水側に、つまり天井から本たちが垂れ下がるようにきっちりキレイに並んでいる。
そのほかのものも全て、天と地が逆さまになっている光景が眼下に広がっていた。
落ち続けている彩里水が足から逆さまの空間に入ろうとしたその瞬間、世界が全て逆さまになった。いや実際は彩里水は落ちながらグルリと180度上下に回転した。
グルリと反転したときにポケットから何かが落ちそうになるのが視界に入った。
――あ!さっきの地図!
ポケットから落ちそうになる地図を掴もうと咄嗟に手を伸ばしたが、地図はスルリと彩里水の手から滑り落ちる。正確には、彩里水が地図を置いて頭から落ちていく。慌てて彩里水は両足のつま先で地図をキャッチ。
間一髪両足でキャッチできた地図を、体勢をグイと折り曲げて手を伸ばし、しっかり掴み直す。今度はきちんと地図を小さく折り曲げてズボンの奥へとしまい込む。
正直何か使い道があるわけでもない地図だったが、なんとなく彩里水はその地図を失くすまいと一生懸命になってしまう。
彩里水は身体の上下が逆さまになったまま、今度は頭を下にして下へ下へと落ちていく。
さっきまで全てが逆さまだった世界では、今度は彩里水は重力のまま上へ上へと上っているように感じられた。
さらに重力のままに落ち(登り)続け、この珍しい事態にも退屈を感じ始めていた。落ちても落ちても底が見えないで、このままずーっと落ち続ける生活だったらどうしよう、このままでは地球の反対側についてしまうのではないかと彩里水が思い始めた時、彩里水は上方に(つまり重力的には下方に)とうとう天井があることに気付いた。
しかし、気付くと同時に大変なことに彩里水は気がついた。このままの速さで行くと頭から天井に激突してしまう。
――ど、どうしよう!なんかないかな?クッションとか・・・。
彩里水は辺りを見回したが何か柔らかそうなものは見つけられない。そう思っているうちにもドンドン天井が近づいてくる。
せっかく天井が見えてきたのに、このままでは激突して死んでしまうかもしれない。
彩里水が焦っていると、ずっと持ち続けていたランプが突然点滅し始めた。
ランプを見ると、点滅するランプにはこう書かれていた。
「私をなげて。」
――な、なげて?どこに?なげるとどうなるの?
彩里水が焦って混乱している間にも、天井はもう目前に迫ってきていた。迷っている暇など無い。
――ええい、もうわかんない!なんでもいいや!
と当てずっぽうに天井にランプを投げつけると、ランプはパリンと音を立てて天井で粉々になった。
――やばい!やっぱり当てずっぽうにやったから、ただわれただけじゃん!どうしよう!
つづく