フェルッチョ・ブゾーニ(1866-1924)
『ファウスト博士』
  Doktor Faust
台本:独語/作曲者
初演:1925年5月21日(ドレスデン国立歌劇場)

ブゾーニ生誕150年を祝して、3種目となる「ファウスト博士」の鑑賞。
台本については、基本的にジムロック編の人形劇に準じて台本を構成、そしてマーロウの著作集や、そのマーロウの種本ともいうべき、ヨハン・シュピースによる「実伝 ヨハン・ファウスト博士」(1587年、フランクフルト刊)のファクシミリ版も、所有していたそうです。ブゾーニが最初に台本に着手したのは1910年、とのこと。


大好きな場面の一つを。
ファウスト「(身を震わせながらメフィストフェレスに署名した紙切れを渡し)さあこれを。わが期限の消え失せたのち -やがて判るだろう- ひょっとすると汝は敗れる。私は汝の主ではないのか?(気を失ってくずおれる)」

ちょっと逸れますが、1908年9月9日、ヴェローナからの妻宛ての書簡より。
「親愛なるゲルダ、とてつもない着想が今朝僕の胸に湧いた。僕はこのイタリアに国民的オペラ<Nationaloper>を捧げたい。ヴァーグナーがドイツに捧げたような、そしてイタリアにはまだないような。僕にはそれができると思うし、それは僕のライフワークになるだろう。…モーツァルトはイタリアの古典派にもなれたはずだ。でもこの地のひとびとは彼についてほとんど知らない。」(フェッルッチョ・ブゾーニ オペラの未来64Pより)


以下、気付いたカットは14箇所(頁数はナガノ盤の対訳より)。
※CD1=序幕2まで、CD2=幕間から交響的間奏曲まで、CD3=主幕2景から
※エスツェットは代用表記のssに、ウムラウト記号は省いています。

【詩人の語り】をカット。


【序幕2】より
23P/トラック№9
ファウスト(7行目)Ist die Flinte nicht elwa Menschenwerk ? (銃などたかが人の作るもの)~
    (12行目)Und du, und du, Zweitletzter, nenn' dich, bezeichne dich, Funfter !(そして汝、最後から2番目の者よ、名を名乗れ。~第5の者よ!)、までをカット。

24P/トラック№9
ファウスト(7行目)Ein einzelner blieb.(残るはあと一人。)~
     (12行目) Ich kehre mich ab von Euch.(汝らとはもうかかわるまい。)、までをカット。

25P/トラック№9
ファウスト(4行目)Konnt' ich so viel erhoffen ?(それほどのことが望めたのか?) ~
    (7行目)Was will ich mehr ?(それ以上何を望もう?)、までをカット。

26P/トラック№10
ファウスト(6行目)O, lass mich des Menschen Tun~(おお、人々の営みを知らしめよ、いまだ知らざることをも。~
メフィストフェレス(10行目)Weiter, nur weiter, falls ihr elwa nicht zu Ende war't. (もっと望め、もっと、望みはもうそれだけか!)、までをカット。

27P/トラック№11
メフィストフェレス(15行目)Hore, Faust : Ich gebe dir Reichtum und Macht, (聞くが良い、ファウスト)~
28Pファウスト(7行目)Ich weiss , ich weiss ! Ende !(判っている、判っているのだ!やめてくれ!)、までをカット。
※ただし、ファウスト(28P4行目)Ende!(止めてくれ!)、これは歌わせている。


【主幕1景】より
37P/トラック№4
冒頭の管弦楽曲=2’37(ナガノ盤=7’25)

48P/トラック№9
メフィストフェレス(14行目)Der Staat Venedig schluckt sie bold selbander, (まもなくヴェネツィア共和国が~)から、
       (16行目)Kleinigkeit schicklich zu fordern.(こんなつまらぬ件を片付けるのはたやすいこと。)、までをカット。


【主幕2景】より
50P/トラック№1
第4の学生(13行目)Beim nachsten Gang prugl' ~(今度はお前を散々ぶちのめしてやる)から、
51P第1の学生(11行目)War es doch eine reine platonische Handlung !(あれは全くプラトン的行為!)、までをカット。

52P/トラック№1
合唱(6行目)Gaudeamus : Juvenes sumus.(楽しむべし:われら未だ若ければ。)、をカット。

59P/トラック№6
ファウスト(5行目)Er spricht nicht wahr.(嘘だ。)から、
ファウスト(9行目)Mich durschschauert Vollkommenheitsgewalt ! (姿を見るのが恐ろしい!)、までをカット。

60P/トラック№6
メフィストフェレス(7行目)hoffe noch davon zu horen.(あとで首尾を聞かせて欲しいものだ。)をカット。


【終景】より
66P/夜警の声(1行目)Ihr Manner und Frauen,(殿方とご婦人がたに申し上げます。)から、
学生たち(19行目)allertiefste Reverenz.(深甚なる敬意を捧げよう。)、までをカット。


【エピローグ】(詩人の語り)をカット。


録音の感想を。
題名役はディースカウ。ディースカウと言えば真っ先にカルディヤックが思い浮かびます。強烈でした。そして違った意味での爆笑ファルスタッフもグー(笑)でしたが、このファウスト役も大変素晴らしいです。メフィストフェレス役のウィリアム・コクランも同様です。
ライトナーの演奏も充分素晴らしい演奏に思います。が、第2景の学生たちの大騒ぎの場面、ここだけはナガノ盤の演奏のみが速い流れで「スカッ!」とさせてくれます(笑)


『ファウスト博士』(3CD/英語対訳付き)
シンフォニア(序曲)、序幕1、序幕2、幕間劇、主幕第1景、交響的間奏曲、主幕第2景、終景
ファウスト博士…ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
ワーグナー…カール・クリスティアン・コーン
メフィストフェレス…ウィリアム・コクラン
パルマ公…アントン・デ・リッダー
パルマ公姫…ヒルデガルト・ヒレブレヒト
式部官…カール・クリスティアン・コーン
兵士(グレートヒェンの兄)…フランツ・グルントヘーバー
士官…マンフレート・シュミット
学生たち…(合唱ソリスト)
神学者…ハンス・ゾーティン
法学者…マリウス・リンツラー
自然科学者…フランツ・グルントヘーバー
ほか
バイエルン放送合唱団
バイエルン放送交響楽団
フェルディナント・ライトナー(指揮)
録音時期:1969年5月(ミュンヘン)
収録時間:48’52+49’48+57’04=155’44(ヤルナッハ版)

※鑑賞は2016年5月7日