エドワード王子の執事であるルイスさんと私は、秘密の恋人同士。
ふたりでこっそりとでティータイムを楽しむのが、私たちにできる唯一のデートだった。
私は今日も彼と過ごせる時間に、心を浮き立たせていたのだけれど…。
カレン「お見合い…ですか?」
ルイス「はい。エドワード様のすすめで…」
ルイスさんの思わぬ告白に、弾んでいた心が一気にしぼんでしまった。
ルイス「もちろんお断りするつもりですが、お見合い自体はエドワード様の体裁もあるので…」
カレン「…そうですか」
(エドワード様直々のすすめなら、ルイスさんも断れないだろうし…)
カレン「私のことは気にしないで…お見合い、行ってきて下さい。ルイスさんにも立場があるって、わかってますから」
ルイス「…すまない」
心苦しそうに言うルイスさんに、何も声がかけられない。
と、そこへ薔薇の薫りとともに、視界の端で銀の髪が揺れた。
エドワード王子「カレンさんに見て貰いたいものがあったのだけど…。もしかしてお邪魔だったかな?」
ルイス「いえ。私は衣装のことで質問があっただけですので…。失礼します」
エドワード王子に一礼すると、アトリエを去るルイスさん。
彼の姿が見えなくなると、エドワード王子が思案顔で息をついた。
エドワード王子「実はね…ルイスに、見合いをすすめたんですよ」
カレン「そうなんですか…どうして急に?」
内心ドキッとしながらも、平静を装う。
エドワード王子は憂いを帯びた表情を見せると、ルイスさんの座っていた椅子を眺めた。
エドワード王子「…最近ルイスは、子供連れや家族連れを羨ましそうに見ていることが多くてね。だからてっきり僕は、結婚したい相手がいるのかと思ったのだけど…。ルイスは相手が「いませんと言っていたんだ」
そこでエドワード王子は、ルイスさんの結婚相手を探したのだと語った。
(相手がいません、か…秘密の関係だから、仕方ないけど…)
分かっているとはいえ、心がチクンと痛みを覚えた。
カレン「…ところでエドワード様、私に見せたいものとは何でしょうか…?」
エドワード王子「ああ、そうでしたね。どの方がルイスにふさわしいか、カレンさんの意見を伺いたくて」
カレン「私が…ですか?」
エドワード王子「ええ。女性の目線というのは重要でしょう?」
エドワード王子の手には、数人のお見合い写真があった。
(よりによって、ルイスさんのお見合い相手を選ばないといけないなんて…)
けれど断ることもできず、差し出された写真を手に取った。
写真に映る女性は清楚でかわいらしく、ルイスさんに似合いそうな人ばかりだ。
(なんか…自信なくなってきちゃったな)
申し分のない相手とお見合いをするルイスさんに、それでも好きでいて貰える自信がない。
エドワード王子「ぶしつけな質問ですが…貴女は、結婚相手の候補者はいるのですか?」
カレン「私…ですか?」
エドワード王子「気分を害してしまったら申し訳ない。けれど、もし相手がいなければ」
エドワード王子の言葉をさえぎるように、私は静かに首を振った。
カレン「私は…結婚できるかはわかりませんが、好きな人がいます」
エドワード王子「…その方以外とは、結婚は考えられない?」
カレン「はい。結婚したいのは…その人しかいません」
エドワード王子「…そうですか」
(どうしてエドワード様が、残念そうなんだろう…?)
なぜか表情を曇らせるエドワード王子。
だけどルイスさんのお見合い話で心が乱れていた私は、それ以上何も考えられなかった。