キャシー「ねぇ、カレン。ここはどうするの?」
カレン「あ、ここはあんまりきつく編まないように、こうやって…はい」
キャシー「わぁ、さすがね。私にも出来るかしら?」
カレン「キャシーなら出来ますよ。慣れれば簡単ですから」
今日はキャシーの希望で、テディベアのウェディングドレスとタキシードを作っていた。
キース王子に見せるんだと言って張り切るキャシーは、見ていてほほ笑ましい。
(妹がいたら、こんな感じなんだろうな)
カレン「上手ですよ、キャシー。これならすぐに出来上がりそうです」
キャシー「ふふ。楽しみね。」
レースで作ったヴェールを見ながら、キャシーがいたずらっぽく微笑んだ。
キャシー「そういえばカレンは結婚しないの?」
カレン「な、なんですか?急に…」
キャシー「だって彼氏はいるんでしょ?結婚に憧れたりしないの?」
カレン「私は…まだ考えられないですね」
キャシーの言葉にドキッとしながらも、曖昧な返事をする。
と、そこへドアをノックする音が聞こえた。
リューク「失礼します。紅茶をお持ちしました」
カレン「リューク…さん」
リューク「楽しそうですね。笑い声が外まで聞こえてきましたよ。」
キャシー「ふふ。女の子同士でつい盛り上がってしまったのよ。ね、カレン」
カレン「は、はい」
リューク「そうでしたか」
優雅な仕草で紅茶を淹れながら、彼は上品にほほ笑んだ。
私は動揺を隠すようにして、カップに口をつけた。
(それにしても…まさか結婚の話題の時に来るなんて)
リューク「ところでお二人は、何の話をしていたんですか?」
キャシー「あら、気になるの?じつはね、結婚の話をしていたのよ。カレンにも聞いていたのだけど、リュークは結婚しないの?」
カレン「っ、げほっ…!」
キャシー「カレン、大丈夫?」
カレン「す、すみません」
実は私の彼氏は、キース王子付き執事のリューク。
キース王子やキャシーには秘密のため、彼氏の話が出るたびに誤魔化していた。
(それなのに、何でこのタイミングで現れるかな…)
キャシー「それで、リュークはまだ結婚しないの?」
リューク「自分はまだ執事としては見習いですし…一人前になるまでは考えられませんから」
キャシー「そんなこと言ってると、好きな人が別の男の人と結婚しちゃうかもしれないわよ?」
大人びた顔で言うキャシーに、リュークは神妙な面持ちで答えた。
リューク「…でも、それが相手の幸せなら仕方ないですね」
カレン「…!」
(リュークは…私と絶対に結婚したい、って思ってくれてるわけじゃないんだ)
私だってまだデザイナーとして未熟だし、今すぐに結婚を考えていた訳じゃない。
だけどリュークの言葉は、小さな棘のようにチクリと心に突き刺さった。
キャシーの部屋を出て裏庭に来ると、白い薔薇のアーチを潜り抜ける。
カレン「きれい…花嫁さんみたい」
??「…ありがとうございます」
(えっ…!?)
いきなり声が聞こえてきて、キョロキョロと辺りを見回した。
どうやら薔薇の手入れをしていたらしく、ハシゴの上から青年が朗らかに笑った。
ロビン「新人の植木職人でロビンと言います」
カレン「あ、私は…」
ロビン「知ってます。カレンさん…ですよね」
カレン「え…っ」
ロビン「城に初めて来た時に見かけてから、きれいだなって思っていたんです」
カレン「そんな…」
ストレートな褒め言葉に照れていると、ロビンくんは一輪の薔薇を私に差し出した。
ロビン「お近づきの印にどうぞ」
カレン「ありがとう…きれいね」
真っ白に輝く薔薇は、見ているだけで心を癒してくれる。
と、こちらに向かってリュークが歩いてくるのが見えた。
