明日への介護~現場から~ 10 | 福祉を通してほほえみ溢れる社会を創る

福祉を通してほほえみ溢れる社会を創る

誰もが自分らしく生きていける世の中になったらいいな。
福祉を通してそんな世の中の実現に向けて歩んでいきます。
まずは目の前にいる大切な人たちから・・・

第10回 「笑顔を忘れない人生」


勤務していたグループホームに、ご夫婦で入所していらっしゃる方がいました。

ご主人は視力障害があり、一人では室内の移動もままならない。

奥さんは認知症があり時折、ご主人のことを忘れてしまう。

ご主人は奥さんを頼りにしていますが、それを奥さんは、時にわずらわしく感じてもいらっしゃる・・・。

ただ、ご夫婦は半世紀を共に生きてきたからか、常にいたわり合い、相手の姿が見えないと不安になっていました。

二人一緒が当たり前。

互いにそんな存在なのが伝わってくる、いい夫婦像を見せてくれました。

買い物や散歩に行くにも、食事や寝るのも、そして、たまに怒った後でもご主人は、みんなに笑顔を振りまいていました。

奥さんもグループホームの料理のときや洗濯物を畳むとき、笑顔で手伝ってくれていました。

仕事の都合で私が施設を離れて2年後、久しぶりに訪問する機会ができ、施設に向かいました。

入所者は年を重ねています。

認知症もあり「私のことを忘れているかも」と懸念しながらの訪問でしたが、心配無用でした。

みんな、昔と同じように温かく私を迎え入れてくれたのです。

でも、あのご主人の姿が見えません。

奥さんに尋ねると、思い出したように涙を浮かべ「手を合わせてもらえますか」と部屋に案内されました。

そのときの奥さんは「主人を覚えていてくれた」と笑顔。

遺影のご主人も笑っていました。

忘れられないこと、忘れてしまわないことの大切さ。

そしていつも笑顔を忘れない人生の素晴しさを教わりました。