悲しきヒットマン(1989年東映) | 映画バカ一代~観らずに死ねるか~

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80年代の邦画は角川映画が勢いがあった時代で

なかでも東映は実録ヤクザ路線が終わって、

五社英雄の『鬼龍院花子の生涯』など文芸シリーズがヒットしていた。

そんな中1986年の『極道の妻たち』は大ヒット。シリーズも1998年まで

10作(劇場版)作られるロングヒットとなった。

極妻シリーズは女性にも受けが良かったらしく、

今作でもその影響か家族との触れ合いのシーンも

多く取り入れられている。

 

 

 

あらすじ

高木昇(三浦友和)はチンピラと喧嘩になり、その根性を気に入られて

松岡組系新井組の若頭補佐山川(成田三樹夫)の舎弟となる。

山川が組の金を使い込み逃亡したが,昇の窮地を山川と同じ補佐の吉田(名高達郎)が救う。

吉田はやがて組を立ち上げ、昇を若頭として取り立ててる。

昇は吉田に恩を感じて仕事に精を出し、吉田組は大きくなっていくが、

吉田は博打で身を持ち崩し破門。昇たちは秀政組組長木下(誠直也)に拾われる。

そのころ松岡組が分裂し、分裂した正和会が松岡組組長を射殺したことから

血で血を洗う抗争に発展していく。昇たちも抗争の渦中に巻き込まれていく…

 

重要な点

一倉治雄監督はTVで『あぶない刑事』等の演出をしていてスタイリッシュな映像が

上手い。アクションもお手の物でテンポがよく、わかりやすい映像を創り上げている。

原作は山口組の顧問弁護士だった山之内幸夫の『悲しきヒットマン』で

暴力団の実情をよく知るだけにリアルな組員の生き様が浮き彫りにされている。

ストーリー・脚本は、良く練られていて、80年代後半のバブル期ということもあり

主人公も前向きに極道の道を突き進んでいく様は、

70年代の実録もの(仁義なき戦いなど)と比べて、

上昇志向が強く感じられるのも興味深い。

 

良かった点

主演の三浦友和はアイドル二枚目路線から80年代にアクション俳優として

イメージチェンジしており、特に1982年から『西部警察Part2』での

ヘリコプターに吊り下げらるなど、身体を張ったアクション、舘ひろしと組んでのちに『あぶない刑事』で完成する

バディスタイル(会話劇)を確立するなど大いに貢献し、

ややマンネリ気味だった西部警察シリーズに活を入れたのは当時、鮮明に記憶している。

この作品でも前半は組織の中で昇がのし上がっていく様をスタイリッシュかつ男気たっぷりに演じ、、

一転してクライマックスでは、追い込まれながらもヒットマンとして配下とともにボスの命を狙う

壮絶な生き様を見せている。まるで『仁義なき戦い広島死闘編』の山中(北大路欣也)を

彷彿とさせる。また家族思いの面もあり、ギラギラしていた70年代のヤクザ像

とは違った新しい主人公を構築している点は興味深い。

 

悪かった点

脇役もいい役者が揃っており、特に成田三樹夫、名高達郎はよかった。

個人的には『特捜最前線』で有名な誠直也が組長役で出ていて嬉しかった。

萬田久子が気風あるいい女を演じていて素晴らしかった。