巨匠山本薩夫監督によるポリティカルアクションの大作。
原作は小林久三の社会派ミステリー。
渡瀬恒彦が主演だが、クーデターの首謀者であり、
ストーリーテラー的なポジションは山本圭が務めており、
ヒロインの吉永小百合がほとんど出ずっぱりでほぼ主役。
現在の日本では自衛隊のクーデターなどは考えられないが
70年代には可能性としてありあえたかもしれない。
しかしながらこの映画は展開上尻つぼみ感が拭えない。
影響を受けたであろう鉄道パニック映画『カサンドラクロス』(1976年)
と違ってラストは壮絶な展開となってしまう。
あらすじ
三流雑誌記者の石森(山本圭)は福岡での取材の帰りにブルートレイン
さくらに乗り込むが、昔の婚約者杏子(吉永小百合)の姿を見つける。
5年前に石森の前からに突然姿を消した杏子に石森は何故姿を消したのか
尋ねるが話そうとしない杏子。そしてさくらには杏子の夫藤森(渡瀬恒彦)の
自衛隊の部隊が乗り込み、さくらをジャックする。
じつはその時自衛隊の不穏分子によるクーデターが勃発しており、
さくらは乗客を人質として東京へ向かっていたのだった。
首相官邸および政府では秘密裡にクーデターの部隊への説得、鎮圧を行い、
さくらの部隊以外は鎮圧されていた。藤森はあくまでも
東京への突入を目指すが。
重要な点
意外にあっさりクーデターが鎮圧されてしまう。
しかし閣議に出てくる役者が素晴らしい名優ばかり。
総理役の滝沢修、小沢栄太郎、久米明、渥美国泰、内藤武敏などなど
他にクーデターの黒幕役で保守党の大物で佐分利信が出てます。
実際には内閣調査室室長(高橋悦史)と陸上自衛隊幕僚監部警務部長
(三国連太郎)の二人でほとんど鎮圧してしまうのも凄い。
丹波哲郎も幕僚会議議長役でちょっとだけ出てます。
良かった点
クーデター部隊の指揮官役で山崎努が出てますが
短い出番ながら非常にカッコよかった。
渡瀬恒彦は当時ギラギラしていて狂気じみた役は天下一品。
後半孤立していく中で山本圭との論議を押し切る迫力が白眉。
悪かった点
(ネタバレ)
吉永小百合が初めて死ぬ役だったらしく、
渡瀬恒彦はカッコよく山本圭を論破したものの
吉永小百合には何だか弱腰なのが面白い。
そもそも国に殉じる覚悟がある軍人が
上司の娘を攫ってレイプするのも変。
そもそもこの映画は専門家からは軍隊が一般人と一緒に移動は
しないと指摘されて、山本監督が困ったらしい。
たしかにブルートレインに乗り込む設定がないとこの企画は台無し。
それはさておきこの当時の吉永小百合の魅力は素晴らしい。
たしかにこれだけ美しい女性が妻ならば渡瀬恒彦でなくとも
気持ちが揺らぐかもしれない。傾国の美女というべきか。
しかしカサンドラクロスと違ってラスト死にすぎで、
最後があまりにも救いがないのが残念。