日向目線です。過去捏造あり。
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髪を切るハサミの音、独特の整髪剤の匂い、そして極めつけは赤・青・白のクルクル回るポール。俺が物心ついた時から両親は床屋を営んでいた。床屋という事を俺は認めていないが、店先のポールが事実を物語っている。そういう親の背中を見て育ったせいか、俺も時間がある時は掃除とか手伝っていた。店にあったマネキンを見よう見まねで切ったりしたこともあった。だから、美容師ほどとまではいかないが他人の髪を切ることができる。カントク…いや、リコの髪はほとんど俺が切っている。普通の女子高生ならおしゃれな美容室に行きそうだが、俺の実家でいつも済ませている。まぁ、あまり髪形が変わらないのもあるかもしれない。
中学卒業を機にバスケから離れようとして、思い切って今まで短かった髪を伸ばし金髪にした。1回目のブリーチをする時は薬剤が染みて痛かったのを覚えている。高校に入れば熱中できるものが見つからなくて、ゲーセンに通うくらいしか時間のつぶし方が無かった。そんな時出会ったのがあいつ、木吉鉄平だ。毎日毎日、大男に付きまとわれ「一緒にバスケをしないか」としつこく誘ってきた。入部を賭けて久しぶりにやった1on1は体が動かなくて、あの頃毎日のように練習していた3Pは入らなくなっていた。結局、俺はバスケを嫌いになんてなれなかった。家に帰ってから即行髪を黒に戻した。あっけなく染まっていく髪を見て、俺がやっていた行動は反抗期の子どもが取る態度と同じだと思った。段ボールに押し込んでいたバッシュは少し埃を被っていて、申し訳なくなったのと同時にまたバスケができる事が嬉しかった。
そんな事があって誠凛高校男子バスケットボール部が出来上がったのだ。
各部に一部屋部室が設けられた。俺の実家が床屋だと知ってからは、皆の髪を切る事が時々あった。「少し前髪が伸びた」、「襟足が邪魔」、「軽く梳いてほしい」とか長い髪は動くのに煩わしい。これくらいなら容易にできる。一番厄介なのが木吉だ。
「ここの髪はちょっとハネさせてくれ。あ、でもこっちは少し梳いてもらえると嬉しいな」などと、細かく注文…いや、こだわりが強い。切り終わった後の完成度に満足しているのを見れば、あいつのリクエスト通りに切れるのは俺だけだと自負している。
目を覚ますと現代国語の授業中だった。ずいぶん懐かしい夢を見た。俺たちは1つ学年が上がり木吉は膝の治療をするために単身アメリカに渡った。まぁ俺と木吉は恋人関係にあるわけで、今は遠距離恋愛の真っ最中なのだ。
あれから変わったと言えば、アメリカからきた奴とストバスで勝負をした。俺も試合のメンバーとして招集されたが出場の機会はなかった。キセキの世代でも危ういシーンが多かった試合だったから、出たとしても力になれないことは分かってる。でも、悔しかった。
授業が終わり、部活の時間がきた。ウィンターカップで優勝した影響もあってか新入部員も入ってきたが、木吉のいない穴は大きい。あいつがいる安心感には俺も何度も支えられてきた。というか、好きな奴に会えなくて寂しいのかもしれない。ふと、そんなことを考えていれば携帯のバイブが鳴った。ディスプレイに映った名前は“木吉鉄平”だった。届いたメールを開けば木吉の自撮り写真が貼付されていて、今までに見たことがないくらい短髪になっていた。1人笑い転げてる中、電話がかかってきた。
「なんだよ、珍しいなこんな時間に。」
「いやー、髪切ったんだけどさー。あ、写メ見た?」
「見たよ、笑ったわー。」
涙声で話す木吉とは正反対に、笑いながら話してしまった。
「そんなに笑わなくたっていいだろー。髪切る時にスタッフさんに英語で説明したんだけど上手く伝わんなくて…」
「当たり前だ、ダアホー。お前の訳分かんない注文通りに切れるの俺だけだって改めて思ったわー…。」
ついつい、本音が漏れてしまう。それだけ俺も寂しい、あいつに会いたくて仕方ない。
「お前の髪切れんの俺だけなんだから、早く帰ってこいよ。ダアホ。」
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ジャンプNEXTの黒バス最終回を見て驚きました…。
日向のご実家が床屋ということで、今回の話を思いつきました。
早く日向と木吉が会ってくれればいいなー、と思う毎日です。
日向、誕生日おめでとう!!!!