ブログネタ:怖い話、教えて!! 参加中

良いですよ。

(有る人種にとっては)とっておきの身の毛もよだつ、怖い話をしてさしあげようじゃありませんか(笑)

ネタとして求めている"怖い"とは違うかも知れませんが(笑)



これは、私が中学生だった頃の話。

だからもうかれこれ……10年以上前の話となります。

舞台は、某国際コンクール。

そのコンクールは、一回の舞台に付き、数曲の曲を弾きます。

そして、これは……1曲目のショパンのエチュードが終わり。

2曲目・ソナタ(勿論、3楽章とも全部演奏)に入った後の身の毛もよだつ怖い話です。

此を言うと、何の曲か分かっちゃう人もいるかと思うんですが。(でも敢えてどの曲かは言わない。笑)

この曲は巡回する旋律を持ち合わせておりまして。

モチーフが明快なわりに、混乱する曲なんです。

で、この時代の私と言えば、まぁ、色々とありまして思い詰めていた

ピアノを弾く"理由"に疑問を持っていた。

そんな、青臭くて、如何ともしがたい時代です。

それを踏まえてお聞き下さい。


あのコンクールで、お恥ずかしながら私は優勝候補と言われてました。

あのとき、私には楽しむ余裕がほとんど無かった。

勿論練習では上手くいっていたし、リハーサルでも上手くいってたし、ピアノとの相性も良かった。

ピアノの癖も勿論ですが、舞台の癖もつかんでいたし、音の広がり方もちゃんと認識していた。

なのに、私には楽しむ余裕が無かったんです。

のし掛かるのはプレッシャー。

……私の名前がコールされただけでざわめく、観客席。

あのとき初めて、私は舞台に出るのを一瞬躊躇しそうになった。

楽しませる為だけの音楽でなない、コンクール。<コンサートとコンクールでは実は弾き方が微妙に違います。

そんなのは元々分かっていたことだし。


深紅と黒のドレス。

出た瞬間に沸き上がる拍手。

心臓はばくばく。こんなに落ち着かない心臓は初めてでしたね(笑)

観客席を見渡せば……恐ろしい勢いで目を輝かせる人たちが……。

舞台の真下(席ではない)に陣取ってるってどういうこと?汗。<通常コンサートはそんな前で見ることは……あんまり。音の広がりとかを考えたら、前はあんまりお勧めしない席です。私は……ですけど。<あと、私の場合ですけど、ピアノのコンサートの場合、私は左手のほうに座ります。手が見やすい位置。

全部席が埋まってるならまだしも。

いえ、このとき実はあることを人づてに知ったからそんな真下に人が居るということを意識したんですけど。

これは昔からだったんだそうです。

……私が意識してなかっただけ。っつぅか止めろよ!<コンクール&コンサート関係者orz


まぁそんなのを見ながら、舞台で一礼。

ピアノへ向かって、椅子の位置を調整して、持っていたハンカチで鍵盤を拭いて。

この時点でいつもなら、鼓動も呼吸も落ち着いているはずなのに。

このときは深呼吸しようが、落ち着かない。

このときに初めて、「あ、私緊張してんのか!」と

……でも、そんな落ち着くまで待つわけにも。

だから、一度息をずぅっと吐いて、そしてピアノに手をかけて、すっと息を吸った瞬間に、演奏を開始。

最初の和音と単音を高々に響かせる。

奏で始めた瞬間に、一瞬青ざめました。血の気が一瞬すぅっと引いたのがわかりましたね(笑)

というのも、何故か、いつもよりテンポが速い

微妙なテンポですよ。でも、この微妙なテンポが結構……厳しいんですよ、ピアノって。

でも、まぁうちの家のピアノは重く調律してありますから(こういう時のために)幸いにも何時も通りの演奏で。

結果としては良かったんです。

そのピアノの特性にもあった弾き方出来たので。

このころに、ぽんぽん弾む音に、少し心が落ち着いてきて。

たった2分弱の曲なのですが、冒頭のメロディに戻る直前の少しritする部分で。

漸くかなり冷静になってきました。

音の反射を聞き取って、今までの弾き方が拙くなかったのを改めて確かめて。

ふっと一息。

最後のオクターブの連続も勿論ミス無し。凄く軽快に、豊かに弾けて、本当思わず笑みがこぼれるくらい。

でもねぇ、後から思えば。

既にショパンのエチュードの時からてんぱってはいたってことなんですよね。


ということで、2曲目、ソナタ。

実はこの曲はかなり異国情緒の有る曲なものでして、私は本当に気に入ってたんです。

でも……何ででしょうねぇ。

何故かこの時、あの瞬間何を思って弾いたのか、あんまり記憶に残ってないんです。笑。

記録には残っていたので、後で見ましたが、1楽章は無事に終了した形でしたね。

ただ、何でですかねぇ。

後からの感想ですけど、私にしては少し固かったです。

え、いや、それは……私らしくないだろ、みたいな。

無難に纏めたというか。

でも、ちょっとずつaccelerando(アッチェレランド)する部分のテンポアップが少しいつもより速かったな……。
で、問題の第2楽章に直ぐに移る。

そして、その何十秒後かに事件は起こりました。

実はこの曲、冒頭部と殆ど同じテーマがコーダ部分に出てくるんですけど。

私……いきなり冒頭部からコーダに飛んだ……と"思いこんだ"んです。

どうも後から聞くとそこまで重傷になってなかったんだから、そのまま弾けば良かったのだと思ったのですけれど。

でも、その時、やった!やっちまった!!と思った瞬間。

頭の中が真っ白。

「やばい、弾き続けなければ、弾き続けなければ

そればかりが頭を回りました。

ここからが"怖い話"。

人間、極限状態では何をやるか分かったもんじゃないですよ。

2楽章を最初から、弾き続けなければ最初から、冒頭から……。」そればかりを思った私は。

メロディラインをつなげながら、何故か1楽章の冒頭部に戻る

という……恐ろしいことをしてしまったんです。

客席でどよめきがはしりました。

此処の部分はまるでスローモーションの様に明確に覚えている。

客席によっかかった音であろうギシっという音、「ああっ」という吐息や、恐らく審査員があわてふためいて楽譜をめくっている音、「あー」というかすかな音。

ピアノの音が響いている、それを聞いているのに。

そういう音も明確に耳が拾うんです。

あれ?ちょっとまって……私、何をやってる??

はっと本当の意味で冷静に戻って。

…………やった……やってしまった、と。

一楽章の冒頭部を弾いている私。

でも。ショック療法じみたコトだったのか。

そこで自覚が戻って、何処か遠くに行っていた"自我"が戻ってきた気がしましたね。

だって、自分が何処を弾いているか、頭の中の楽譜が戻ってきた。

1楽章の冒頭部の。

これで青ざめるなと言う方が間違ってるだろ(笑)

まぁ、その時点でハッキリ「これで、選外だ」と認識しました。

でもねぇ、選外だということは分かっていたけれど。
それでも、もう弾き続けるしかない、ととっさに思った。それが私の玄人根性でもあるので(笑)
何故かとか考えてる場合じゃなかったです。この曲を聞かせよう、それだけを思いましたねぇ……。
そこで逃げたら終わりだと思った。
逃げ帰るのは簡単ですよ。

椅子から立って、舞台から去ればいい。
でもねぇ、其れは私の美学には反する(笑)
駄目で元々、もう賞はいい、ならば、最大限に良い演奏をしてやろう
結局、3楽章までまるっと弾き通しました。

ということで。

このコンクールは果たして選外で幕をとじましたとさ。

おしまい。



でもあのとき、本当に思いました。

舞台って……本当に怖いんだ、と。

楽譜を忘れる恐怖。緊張する恐怖。

これが舞台の"魔"に食われると言うことなのか。

そんなことを、あとで考えました。

……あのときに私は、実は初めて自覚したのかもしれない。

それまでが無頓着過ぎだったのかもしれない、ですね?笑。


この話は、他の人にとっては全然怖い話じゃないかも知れない。

でも私にとっては本当に……こういう話こそ怖い話。汗。

という自己満足的な怖い話でした。





で終わらないのが、本当の意味で、この話の怖いところ

その後、その日のニュースで私の演奏が放映され……。

実は、微妙に騒ぎになりましたorz

……はぁ。

選外の人間の演奏流すなよなぁ……。汗。

事実上のNo.1だろうがなんだろうが。

私は選外なのだよ、選外。それ以外の何物でもないのだよ。