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 森信三先生は西田幾多郎博士のもとで西洋哲学を学ばれましたが、そこにいつしかしっくりこないものを感じられていました。

次第に大学の中の思想から離れ在野の思想家へとまなざしをむけていきました。伊藤証信、沢木興道、宮崎童安、高田集蔵、岡田播陽などです。

 森先生が思索遍歴を続けていた、昭和3年、教え子の山本正雄氏より、二宮尊徳の遺跡めぐりの土産として「報徳記」及び「二宮翁夜話」を贈られました。

 その「二宮翁夜話」の開巻冒頭に

 「それわが教えは書籍を尊まず、ゆえに天地をもって経文となす。予が歌に

 ”音もなく香もなく常に天地は書かざる経をくりかえしつつ”

 とよめり。かかる尊き天地の経文を外にして、書籍の上に道を求むる学者の論説は取らざるなり」

 との尊徳翁の語録によって、森先生は眼前の霧が一気に消え去り、学問上の開眼をえられました。

 これが、「真理は現実の唯中にあり」という、先生の生涯を貫く学問観です。