国家主義、軍国主義、ファシズム、  どれもいい意味では使われません。

「それは軍国主義だ」

「お前は国家主義だ」

「安〇首相はファシストだ」

ネットでも危険なもののように説明しているものがたくさんあります。

倉山満氏の『軍国主義が日本を救う(徳間書店)』を読んで、すっきり。

整理しましたが、かなり端折っています。

 

1 国家主義

国家主義とは、「国家が最上の存在である」という主義です。

なぜ「国家が最上」なのか。

歴史を振り返ります。

 

ヨーロッパでは、ローマ教皇がいて、その下にカトリックの神職が各地にいて、対抗するプロテスタント教会があって、また神聖ローマ皇帝がいて、国王がいて、貴族がいてとバラバラ状態でした。

それを国ごとに王様がまとめようとして、「主権」という概念が生まれました。絶対主義の王様が出てきます。

 

1618年、「三十年戦争」というカトリックとプロテスタントの争いがありました。

「自分たちと意見が合わない者は皆殺しにしろ」

争いの中心地ドイツ地方では土地の三分のニが焦土と化し、領民に多くの犠牲者が出るすざましい戦争でした。

1648年に、「三十年戦争」の講和条約で「ウエストファリア体制」が確立しました。

国家が宗教勢力から独立し、神聖ローマ皇帝だろうが、いかなる協会だろうが、外国からの干渉は受け付けない。

そして、全ての人間が法の支配を受け、裁判を受け入れることになりました。

今まで、国家の上にいて、宗教的に命令を下す特権階級を国家という器に封じ込めることに成功しました。

こうして、ヨーロッパで国家主義は生まれました。

主権国家の始まりです。

 

国家主義成立の背景には、このような血みどろの歴史がありました。

「違う考えの人でも殺さなくていい」

ヨーロッパでこの価値観が確立したのは、まだ数百年前のことです。

危険な原理主義に対し、穏健な国家主義。

 

2 軍国主義

国家主義が成立する過程で、軍国主義は付いてきます。

なぜなら、「国家が最上の存在である」には、外国の干渉を排除し国内の反乱を鎮めるために、どうしても軍事力が必要だからです。

フランスは、軍隊を強化し、教会の権威を打ち砕き、門閥貴族の反乱を抑え、外国との戦争に勝ち抜いて、主権国家・絶対王権を確立しました。

軍国主義というのは、「国策の最優先事項が軍事になること」です。

 

3 ファシズム

 ファシズムとは「一国一党体制」のことです。

「国家の上に指導する党がある体制」のことです。

一つの党が国家を乗っ取る形です。

 

定義がはっきりしました。どこの国がファシズムか分かります。

かつてナチスドイツ、ソ連がそうでした。

今は、支那(China)や北朝鮮です。

イランも国家主義ではありません。選挙で選ばれた大統領より宗教指導者の方が偉い。国会が作る法律、裁判所の判決よりもコーランが優先されます。

 

国家の上に教会があるか、党があるかの違いです。

どちらも異論を許さない。

宗教原理主義とファシズムは相性がいい。

共産主義は、最終的に国家をなくすという考えです。

 

4 戦前の日本

戦前の日本は、ファシズムだったのでしょうか。

大政翼賛会によって全ての政党は解体しました。

ファシズムをやろうとしましたが、「一国ゼロ政党」になってしまいました。

ファシズムにならなかったのは、帝国憲法があったからです。

憲法と議会が機能し、憲法習律が残っていました。衆議院が不信任した内閣は、一回は解散できるけれども、その総選挙で負けたらやめなければならない、という習律です。

実際に、戦時阿部内閣が議会による不信任を受けて総辞職し、東条内閣も戦時体制でありながらも議会の造反でレイムダックになりました。

半年ごとに内閣は入れ替わり、国策はバラバラ。陸軍と海軍の仲は険悪。

指導する党など、どこにもありません。

 

一体、「ファシズム」「国家主義」「軍国主義」の定義は、どこで逆になったのか、誤魔化しがあったのか。